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海賊版対策は「3本柱」で――SME、対中邦楽ビジネスを語る

» 2006年06月19日 18時27分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 日本レコード協会(RIAJ)は6月19日、邦楽のアジア市場への展開に関する報告会を開催。各国における売り上げ実績や、中国で行われている権利認証制度について説明を行った。また、ソニー・ミュージックエンタテイメント(SME)とエイベックスはアジア市場のビジネス展開について、「不安と期待」をもちながらも積極的に推進していく意向を示した。

 アジア地域での新規ライセンスタイトル数は2004年が1257、2005年が1079、2006年(第1四半期)が379(地域重複含む)と2005年度に落ち込みを見せており、売り上げも中国を除くアジア各国で減少傾向を示していることが報告された。

photophoto アジア市場での新規ライセンス数(左)、特に韓国での落ち込みが目立つ売り上げ推移(右)

 その理由についてRIAJでは、アジアの音楽マーケット自体が縮小傾向にあるほか還流防止措置が講じられ、日本への逆輸入(還流)を目的とした製造が行われなくなったためと説明している。ちなみに、6月16日現在で165のタイトル(日本レコード協会 輸入差止申立てに係る対象レコードリスト)が還流防止措置の対象となっている。

 「国別に分析すると、特に韓国市場での縮小が目立つが、音楽配信の急伸や、2004年に行われた文化開放政策の反動が原因と考えられる。しかし、アジア圏での邦楽への注目度は引き続き高く、2006年度は上昇傾向を示すと考えられる」(RIAJ 専務理事 田辺攻氏)

 また、これまで邦楽CDを中国国内で正統な著作物として販売するためには、IFPI(国際レコード産業連盟)の香港地域事務所を認証機関窓口として申請を行い、中国の国家版権局で認証を得る必要があったが、2006年5月にRIJAが認証機関窓口として認められた。これによって邦楽CDの中国国内でのライセンス販売手続きが簡素化され、RIAJではより積極的なライセンス販売が行われることを期待している。

photo 新たな認証手続き。RIAJが申請窓口となることで、中国市場へのライセンス展開がこれまでよりスピーディーに行われることが期待される

 日本国内でのCD売り上げは数年来、かつての数値に及ばない状況が続いており、海賊版などの不安をかかえながらも、アジア市場を視野に入れた活動を推進するレコード会社も増えつつある。L'Arc-en-Cielや平井堅らを擁するSMEや、BoAやEXILEらを擁するエイベックスもそのひとつだ。

 SMEの田中章氏(国際グループ インターナショナルマーケティング次長)は、東アジアだけでも14億人ともいわれる大きな市場が存在し、パッケージだけではなく音楽配信ビジネスの可能性もあることから、「海賊版と未熟な法整備による著作権侵害は存在するが、音楽に対する要望があることも確か。積極的な活動を推進していきたい」という。

 中国市場では海賊版の割合が非常に高いと言われるが、SMEではL'Arc-en-Cielのアルバム「AWAKE」を中国で展開する際、アルバムの低価格化(実売価格で26元前後)や日中同時発売、正規盤の啓蒙活動といった3つの施策を中心に、来中特別版のリリースやファンイベントなどを同時に行うことで、海賊版の抑制に効果があったという。

photophoto ソニー・ミュージックエンタテイメント 国際グループ インターナショナルマーケティング次長の田中章氏(左)、対中邦楽CDビジネスには「低価格化」「日中同時発売」「正規盤啓蒙」の3本柱が有効

 エイベックスの飯島正人氏(コーポレイト企画本部国際戦略室開発課 プロジェクト・マネージャー)からは、現在行っている韓国企業とのアライアンスをより強化していくほか、北京に管理に留まらず、中国のミュージシャン、アーティストを発掘する企業を設立し、より積極的なアジア圏での展開を行っていく旨が説明された。

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