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れこめんどDVD「秘密のかけら」DVDレビュー(2/2 ページ)

» 2006年06月23日 05時37分 公開
[皆川ちか,ITmedia]
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エゴヤン的な少女趣味全開

 カレンを演じるのは、「マッチスティック・メン」で実際のところ23歳なのに、ニコケー(ニコラス・ケイジ)の14歳の娘を違和感なく演じた童顔女優、アリソン・ローマン。清純そうなイメージが強い、そしてロリ顔ゆえに男の脱がせ心をそそらなさそうな(逆か?)ローマンが、もう脱ぐ脱ぐ。ケヴィン・ベーコンとの濡れ場は、ベーコン演じるラニーがカレンにとって“憧れのおじさま”であり、しかも少女時代に一度会っていたという伏線が、ふたりのセックスをどこかいかがわしいものにさせている。まるで父と娘、もしくは叔父と姪のような。

 カレンは記者だった亡父の旧式テープレコーダーを持ち歩いており、彼女が重度のファザコンであることも、このセックスとは無関係ではない。ベーコンとローマンの組み合わせというのがまた、ビジュアル的にも「おじさん、それはよくないよ」で、男たちが成熟した女よりも少女的な女性に欲情を感じる辺りは、実にエゴヤン的だ。

 よくないことはまだまだ続く。相方ヴィンスにも接触したカレンは、食事の席で勧められるがままにドラッグを試し、ラリるに任せてまた脱ぐ。ここのカレンのモノローグが笑える。

 「昔から自分をコントロールする自信があった」

 寝室でカレンを待っていたのは、「不思議の国のアリス」のアリスのコスプレをした美女。有名なラリリ・ソング、ジェファーソン・エアプレーンの「ホワイト・ラビット」を歌ってアリスがエプロンドレスをたくし上げると……白いガーターベルトが。アリスがガーターベルトなんか着けるか!! ルイス・キャロルは天国で泣いて喜んでるだろうね。パチもんアリスは「エキゾチカ」のパチもん女子高生クリスティーナと同じ匂いがぷんぷんで、この辺、変態濃度はかなり高い。

 そして観客の予想通り、今度はヴィンス×カレン、そしてアリスの3Pに及ぶかと思いきや、カレンはアリスとレズビアン・セックスしてしまうのだ。ここのカレンのモノローグが笑える。

 「“一線を超える女”に興味があった。本当の自分と快楽に身を委ねる自分」

 あのー、単にパンツがゆるい人にしか見えないんですけど……。一方、アリスにいいようにいじくられて悶えるカレンを、冷めた顔で眺めるヴィンス。ここで、ある種の人なら何かを感じ取るはずだ。そう、だってコリンは“もう一つの国”こと「アナザー・カントリー」(略してアナカン)から来た人だもの! ここまで書けば分かりますよね。ふっふっふ。

ケヴィン・ベーコンの尻はそろそろ見飽きた?

 作中でも、それらしい記号はそこはかとなく周到に散りばめられている。「芸人コンビは“夫婦”のようなものだ」という台詞。ヴィンスとラニーがスポンサーから提供された女たちと、1つの部屋で交わってる場面。そしてやたらと出てくるラニーの尻。ケヴィン・ベーコンといえば、まっぱを厭わない俳優。「ワイルドシングス」の下品な刑事、「インビジブル」の透明痴漢人間、去年ひっそりと公開されたリチャード・マシスン原作の電波系映画「コール」でも、必然性なく脱いでいた。これまでいくつの映画で彼の尻が出てきたことか。

 さて、中盤では期待をそらした幻の3Pシーンが、終盤のある場面で再び浮上してくる。ただし今度は別の組合せで……。これはコリン・ファース ファンにとっては踏絵だね。ケヴィン・ベーコン ファンにとっては何を今さら、かもしれないけれど。

 特典のアトム・エゴヤン来日インタビュー映像では、「50年代のアメリカ・ショウビズ界のゴージャスさと、その裏のいかがわしさを描きたかった」と、もっともなことを語っているエゴヤンだけど、本音のところは、単に自分の欲望を満たしたかったんじゃないかな。それこそあの年代には許されなかったような、いかがわしくて変態的な、今までは全開で出してきた(「アララトの聖母」除く)欲望を。だってこの人、ほかのインタビューでは「これはコメディです」って答えているのだから、とても信用できませんよ。


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