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やっと実力を示した? 北米版BDソフトレビュー(2/2 ページ)

» 2006年06月30日 00時01分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 一方のFifth Element。こちらはマスターそのものの品質が、すべてを決定付けている。Fifth Elementは北米で発売されたスーパービット版こそ、画質が良いとの評価を受けたものの、国内版はどのバージョンも今ひとつだった。

 今回のマスターもフィルムのゴミや傷と思しきノイズが混入し、ハイライト、シャドウともに階調の粘りがなく、スッパリと階調情報がなくなっている。輪郭もやや甘く、DVDよりは解像感やディテールはあるものの、フルHD化に伴う期待ほどには良くなっていない印象だ。

 こうしたマスターのノイズに足を引っ張られてか、同じエンコーダを用いているUnderworld:Evolutionよりも歪みは増加している。Hitchのように、明らかに悪いというわけではないが、透明感や見通しの良さは感じられない。先ほどの採点基準で評価すると、70点といったところだろうか。

 もっとも、より小さなサイズ(たとえば50インチのフルHD PDPなど)ならば、クオリティ差はずっと小さく見えるようになる。映像製作の現場では、プロジェクター用スクリーンよりもずっと小さな業務用モニタで製作が行われることがほとんどということを考えると、原因の根本は製作サイドで側の意識差によるクオリティの違いではないだろうか?

 初期7タイトルの中で、掛け値なしに高画質と紹介できるのは、「Underworld:Evolution」と「50 First Date」で、ほかの作品は(程度の差はあるものの)何らかのマスター品質の問題を抱えているように見えた。

 この点についてSPEの担当副社長に連絡を取ってみたが、「こちらの(米国の)批評家からは、もっとポジティブなフィードバックがある。その評価はおかしい。プレーヤーあるいはディスプレイの問題ではないか」とのコメントが返ってきた。しかし、北米の評価サイトなどを見ても、上記の評価はおおむね同様である。

 SPEはBDソフト立ち上げのため、かなり多くの作品のオーサリングを行わねばならず、またMGMやライオンズゲートなど他スタジオの作品もオーサリングを担当している。さらにそのほかのスタジオに関しても、他ポスプロでオーサリングリソースが不足する場合は精力的にSPE側でオーサリングの手伝いをしている。

 そうした大量のオーサリングを並行して行う時期にあっては、すべての作品で念入りなチューニングを行えないといった同情すべき点はあるのだが、もう少し良いものを選んで出さなければ評判を落としかねない。この点はやや残念だ。

やや黒浮きがあるWinDVD BD

 前回、Hitchの画質について報告したとき、読者から「本当にWinDVD BDでの再生で、画質評価できるのか?」といったメッセージをいただいた。

 結論から言えば、現時点ではわからない。日本ではBDプレーヤーを入手できないからだ。この点に関しては、近いうちにBDプレーヤーの試作機を用いて確かめるようメーカーと話をしているところだが、検証を進めているうちにWinDVD BDにも問題があることがわかった。

 コントラスト感が低いため黒レベルのチェックを行ったところ、WinDVD BDでの再生時、黒のレベルが4%前後も浮いていることがわかった。このため、今回はディスプレイ側のブライトネスを下げて黒レベルを合わせ、全体の輝度を下げた分、コントラストを調整して白レベルも最適化して視聴した。

 それ以上のこと(MPEGデコードなど)に関しては、民生用BDプレーヤーとの比較を行わなければわからないが、少なくとも黒レベルに関しては問題がある。黒レベルの浮きは、VAIO Type Aの内蔵ディスプレイでも認識できるが、元々の液晶パネルの黒浮きがあるため、さほど目立たない。

 ソニーのVAIO担当者にこの件を連絡したところ、ソニー側でも同じ問題を認識したとの報告があった。くわえて問題修正を行うパッチを、アップデートモジュールとして配布する計画だという。

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