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れこめんどDVD「ラスト サムライ(HD DVD)」DVDレビュー(1/2 ページ)

» 2006年07月14日 10時01分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

「ラスト サムライ(HD DVD)」

発売日:2006年6月30日
価格:3980円
発売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
上映時間:154分(本編)
製作年度:2003年
画面サイズ:シネマスコープサイズ・スクイーズ1080i
音声(1):ドルビーデジタルプラス/5.1chサラウンド/英語
音声(2):ドルビーデジタルプラス/5.1chサラウンド/日本語(ボイスオーバー)

HD DVDソフト市場、果たしてワーナーが牽引役となるのか

 発進から数カ月が経過するHD DVDだが、肝心の映画ソフトについて言えば、洋画邦画合わせてもまだ10タイトルにも満たない状況だ。松竹のラインアップに入っている「アビエイター」や「アレキサンダー」の発売日も未だ明示されていないし、先日の東芝によるレコーダー発表会で、ようやくユニバーサルのラインアップが発表されたものの、発売時期は秋と言うだけで、仕様や価格も決定していない。

 かたやアメリカではHD DVDは毎月各メーカーから数タイトルずつリリースされており、Blu-ray Discもスタートした。次世代ディスクに対する日米の温度差を感じずにはいられないが、そんな中、ようやく日本のワーナー・ホーム・ビデオから「ラスト サムライ」のHD DVDが発売された。

 アメリカでのワーナー第1弾は「ラスト サムライ」「ミリオンダラー・ベイビー」「オペラ座の怪人」だったが、日本では他の2作品の権利を別会社が持っているため、1タイトルのみのリリースとなったのだろうが、一(いち)ユーザーとしてはちょっと寂しさも覚える。できれば次のラインアップでも発表されていれば、そうした気分も晴れるのだが……と思いつつ、ソフトを見てみることにした。

ケースはDVDと同じトールサイズ

 ケースのタイプは通常のDVDと同じトールサイズで、ハリウッドメジャーだからといって、アメリカタイプの縦が少し短いケースではない。DVDとの違いはアウターケースが付いていることと、メインビジュアルの周囲に他メーカーと同様に本商品がHD DVDソフトであることを示す枠が付いていることぐらいだろう。間違えることはないが、大きな違いもない。ただ、日本人キャストが並ぶこのデザインはトム・クルーズが単独で出ている北米版のビジュアルとは大きく異なり、日本のユーザーを大きく意識しているものだと、DVD発売時にメーカーから発表されていたことは記憶しておいてもいいだろう。

 パッケージを開けてみるとディスクは1枚。DVDは本編と特典が2枚に分かれていたが、収録内容はほぼ変わらない。ハイビジョン映像を収録しつつも、特典のSD映像を余裕しゃくしゃくで入れることができるHD DVDの容量に驚かされる。しかし、そのせいで初期のDVDのように本編映像の画質が劣化してしまうようなことがあっては、次世代の意味はない。不安と期待にゆれ動かされながら、トレイにディスクを載せてみた。

オープニングからハイビジョンの威力を発揮

 冒頭に登場するワーナーのロゴもハイビジョン化され、通常のDVDとは全く比較にならない高画質だ。空に浮かぶオレンジの「WB」のマークが目に飛び込んでくるように見える。また画面サイズはこの時点で映画と同じシネスコサイズになっている。北米版のワーナーソフトではビスタサイズの映画のときはビスタで出てくるので、違和感なく本編に入れるよう配慮しているのではいないだろうか?

 DVDではここでメイン・メニューにつながるのだが、このソフトではそのまま本編に入っていく。HD DVDではポップアップ・メニューという本編再生中に様々な選択ができるようになっているので、基本的にメイン・メニューが必要不可欠という訳ではない。

 本編に入って驚かされるのは、放送とはレベルの異なる鮮やかなハイビジョン映像だ。美しい日本の風景の映像に、侍の背景について語るナレーションが入ってくる。ここで渡辺謙演じる勝元は白い虎の幻想を見るのだが、そのブルートーンで仕上げられたイメージ映像の美しさも特筆ものだ。

字幕は上品な印象だが、サイズはもう少し小さい方がベター

 また字幕についてだが、DVDよりもかなりすっきりした縁取りになっており、上品な印象を受ける。ただ字幕フォントはいいとしてもサイズはもう少し小さくして欲しかった。字幕のサイズはWOWOWのOA版とDVDの中間程度と言えば、分かる人には分かるはず。この手のソフトを購入する人はほとんどが、大画面テレビ、あるいはスクリーンで見ているはずで、字幕の大きさには小さくすることを願っている人が大半だと思うのだが……。

映像に奥行きがあり、三次元的な効果も

 CH-2では舞台をサンフランシスコに移し、トム・クルーズ演じるネイサン・オールグレン大尉が登場する。彼は先住民族であるインディアンを大量虐殺した過去に悩まされており、酒浸りの日々を送っていた。日銭を稼ぐため、当時の武勇伝を語ったりしていたが、本人はそんな自分に嫌気がさしている。この場面では1876年という時代を明確に表現するため、様々な小道具が配置されているが、HD DVDではその細部まで見られるようになった。

 例えば楽団が使っている楽譜立てや、戦場を再現するブリキの人形など。DVDでは画面に移っていても気になるようなことはなかった。またこのシーンで驚いたのが、煙を使った立体効果である。葉巻や銃から発せられる煙が思いのほか、映像に奥行きを与え、DVDでは感じられないような三次元的な効果を生み出している。

 CH-3ではサンフランシスコの夕景を眺めることができる。もちろんデジタル技術による架空の映像だが、細部までしっかり見えることで、見ている側はすっかり当時の気分に浸ってしまう。この後、すぐネイサンは日本から来た要人・大村と面会を果たし、日本へ行くことになるのだが、この会談でも食器や衣裳など普段だったら雰囲気で見過ごしてしまいそうなところが気になってしまうのだから、HDの効果はすごいとしか言いようがない。

 CH-4で日本に向かう場面では船上のネイサンに日本地図が重なり、その文字がしっかりと認識できる。画面を止めて文字をしっかり読めば、適当に作られたものではないことがよく分かる。更に横浜港に到着してからの町並みもあ然としてしまうほど、よく作り込まれていることに気付くはずだ。画面の奥の奥まで世界観が構築されている。

 CH-5ではネイサンは天皇に謁見するが、登って行く石段の表現もDVDとは段違い! 思わず石段の数を数えたくなってしまう。天皇に対面するシーンではみんな靴を履いていてビックリしてしまったのだが、この辺の時代設定に突っ込みを入れていたら、この映画を楽しむことはできない。

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