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ギターと同じ素材と製法で作られたスピーカー「D-TK10」短期連載:小さな本格派スピーカーを探す(1/3 ページ)

» 2006年07月28日 01時55分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 このところオンキヨーは、立て続けに注目に値する小型スピーカーをリリースしてきた。とくに昨年9月に発売した「D-312E」は、1本9万4500円と2ウェイ小型ブックシェルフとしては高価ながら、その音質には目を見張るものがあった。

photo 高評価の小型ブックシェルフ形スピーカー「D-312E」。1本9万4500円

 オンキヨーらしい上品な中域から高域にかけての繊細な表現力と、キレの良い音の立ち上がりとパンチのある低音。アンプの駆動力は必要とするものの、パワフルなアンプと組み合わせると実に明るく力強い音が出てくる。この質の高さを考えれば、価格はむしろ安いと感じさせる秀作である。

 しかしながら、D-312Eはデスクの上に置くにはやや大きい。そこでさらに小型のスピーカー2製品を、今回の連載にピックアップした。ひとつは昨年12月に発売した「D-TK10」。高峰楽器との協業から生まれたユニークなスピーカーである。

photo アコースティックギターと同構造のキャビネットを使用する「D-TK10」。高峯楽器製作所との共同開発によって誕生したユニークなスピーカーだ。キャビネットはマホガニー材で、外形寸法は133(幅)×276(高さ)×220(奥行き)ミリ

 さらに「D-112E」もくわえて記事を進めたい。本来なら1メーカー1製品と考えてピックアップしていたが、D-112Eの実売価格を見て驚いた。ペアで実売3万円程度という低価格で入手できるのだ。これだけ低価格となれば、この製品も捨てがたい。

photo 「D-112E」。同じブックシェルフタイプ「D-302E/D-312E」の設計をベースに開発された低価格モデル。ウーファーの振動板にA-OMFモノコックコーン、ツィーターにはピストンモーションの拡大を図ったリング型振動板を搭載する。外形寸法は156(幅)×249(高さ)×221(奥行き)ミリ

どんなスピーカーか?

 D-TK10は、非常にユニークな考え方から生まれたスピーカーだ。

 ユニットやエンクロージャーの構成は手慣れた構成で、D-312Eでも採用されていた高剛性かつ軽量なA-OMFコーンを10センチウーファーに用い、リング型振動板を用いたトランジェント特性の良い2.5センチツィーターを組み合わせている。バスレフポートからの音が音楽を汚さない、独特のスリット型フロントバスレフポートも同じだ。

 しかしオンキヨーの他スピーカーが、エンクロージャーの剛性を高めることで“箱”の鳴きを押さえ込む方向で設計されているのに対し、D-TK10は箱そのものの鳴りを無理に押さえ込まない。

 エンクロージャーは世界的なギターメーカーである高峰楽器が、ギターと全く同様の行程で製作している。タカミネのギターはアコースティックギターの中でも胴の剛性が高い方だが、しかし一般的なスピーカーよりはずっと薄い箱であり、エンクロージャーそのものが“鳴る”。

 あえて箱を鳴らした上で、ギターを製作するのと同様に“力木”と呼ばれる補強材を適所に配置していくことで不快な音を減らし、心地よい響きだけを残していくという楽器と同様のアプローチでの開発を2年半かけて行ったのである。

 複雑な製造工程は量産を許さず、価格も小型スピーカーとして高めのペア16万8000円だが、マホガニーの高級感溢れる外観や金メッキされた真鍮削り出しスピーカーターミナル、ユニット周りの仕上げの上質さなど、小型ながら価格に見合う存在感のあるスピーカーだ。

 一方のD-112Eは、D-TK10と基本的に同様のスピーカーユニット構成を持ち、これをD-312Eと同様の構造を持つエンクロージャーに収めた製品だ。10センチウーファーのセンターキャップ部分が凹んでいるタイプとなり、ツィーターのイコライザ(周波数特性を整えるために取り付けられたリング振動板の内側にある突起)の形状や取り付け方法が異なる以外は、基本的なユニットの構成に違いはないようだ。

 それでいて定価ベースで4万2000円なのだから、仕上げの高級感などでD-TK10には及ばないとしても、コストパフォーマンスを考えると大変魅力的な選択肢である。

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