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現代史の闇、スピルバーグ渾身の1本――「ミュンヘン」新作DVD情報

» 2006年08月07日 11時39分 公開
[本山由樹子,ITmedia]

ミュンヘン スペシャル・エディション

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(C) 2006 DreamWorks LLC and Universal Studios. All Rights Reserved.

 賛否両論を巻き起こしたスピルバーグ監督の実話に基づく社会派サスペンス・ドラマ「ミュンヘン」が、8月18日にDVDリリースされる。

 1972年9月に開催されたミュンヘンオリンピックで、パレスチナ・ゲリラ、黒い九月(ブラック・セプテンバー)が選手寄宿舎に潜入し、イスラエル選手団2人を射殺。さらに9人を人質にとり、イスラエルの刑務所に収監されている同胞の解放を要求した。西ドイツ警察は犯人グループを狙撃するが、作戦は失敗。結局、人質は全員殺されてしまう。

 イスラエルのメイア首相は政府高官を招集し、極秘裏にテロ首謀者を殺害することを指示。イスラエルの対外情報機関、モサドのアヴナーに暗殺命令が下される。

 国家の命令でありながら、友人や家族はもちろん、絶対にほかに知られてはいけない計画。アヴナーは出産間近の愛妻を気にしながら、標的が潜伏するヨーロッパへと向かう。そこで、爆破の専門家、車両担当、文書偽造のプロ、後処理担当ら各分野の専門家からなる暗殺チーム4人と合流。パレスチナ・ゲリラの居所を突き止めるため、地下組織の人間と接触し、ヨーロッパ各地に散らばる標的たちを殺害してまわる生活が始まった。

 彼らは次々に任務を遂行していくが、過って標的の娘を殺しかけたり、爆薬の量を間違え一般市民を巻き込んだり、不手際が表面化。その失敗はCIAが邪魔したせいでは? 何者かに命を狙われているのでは? と、身も心もボロボロになり、やがてチーム内に亀裂が生じていく……。

 イスラエル政府のとった“目には目を”の報復計画は明るみに出て、非難を浴びる結果となった。スピルバーグは暗殺を命令された工作員の葛藤を通じて、悲劇の連鎖を浮き彫りにしていく。憎しみからは憎しみしか生まれない、巨匠が本作に込めた平和へのメッセージを感じとることができる。

 主人公のアヴナーを「トロイ」「ハルク」のエリック・バナが好演。頬はコケ、目の下にはクマという憔悴しきった表情で、任務の重圧と罪悪感にさいなまれ、暗殺者のみが体験する追う者から追われる者への恐怖を体現している。

 共演は6代目ジェームズ・ボンドに抜擢されたダニエル・クレイグ、映画監督としても活躍するマチュー・カソヴィッツ、「シャイン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのジェフリー・ラッシュら。

 本作は秘密裏に撮影が進められただけに、DVDの特典も興味深い。監督が作品への熱い思いを語る「監督によるイントロダクション」、撮影風景を振り返る「撮影現場での体験」、こだわりのロケ地やセットをスタッフが紹介する「時代背景」、監督とキャストが役柄について語る「暗殺チーム」など約75分を収録。

 さらに詳しくミュンヘン事件を知りたい方は、ミュンヘン警察署長の目を通して、事件を再現した「テロリスト・黒い九月 ミュンヘン」、実行犯らが当時の事件を語るアカデミー賞長編ドキュメンタリー受賞作「〔ブラック・セプテンバー〕ミュンヘン・テロ事件の真実」(8月18日リリース)の関連作をチェックしてみよう。

 163分の長丁場があっという間、というのは言い過ぎだが、「平和へのメッセージと、スパイ映画としての醍醐味を感じられる脚本に惹かれた」とエリック・バナがインタビューで語った通り、娯楽映画の神様=スピルバーグのエッセンスも凝縮されているので、骨太リアルな力作をじっくりと味わってほしい。

関連サイト:http://www.munich.jp/(公式サイト)

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ミュンヘン スペシャル・エディション
発売日 2006年8月18日
価格 4179円
発売元 角川エンタテインメント
販売元 角川エンタテインメント
スタッフ 監督・製作:スティーブン・スピルバーグ/脚本:トニー・クシュナー、エリック・ス/音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演 :エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、キアラン・ハインズ、マチュー・カソヴィッツ、ハンス・ジシュラー、ジェフリー・ラッシュ
上映時間 163分(本編)
製作年度 2005年
画面サイズ シネマスコープサイズ・スクイーズ
ディスク仕様 片面2層/2枚組
音声 (1)ドルビーデジタル/5.1chサラウンド/英語 (2)ドルビーデジタル/5.1chサラウンド/日本語
特典 スピルバーグ監督によるイントロダクション/暗殺チーム/撮影現場での体験/インターナショナル・キャスト/編集・音響・音楽/事件の回想/時代背景

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