ITmedia NEWS >

れこめんどDVD「ブラザーズ・グリム(HD DVD)」HD DVDレビュー(1/2 ページ)

» 2006年08月11日 16時15分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

「ブラザーズ・グリム(HD DVD)」

発売日:2006年7月28日
価格:5040円
発売元:ハピネット・ピクチャーズ/東芝エンタテインメント
上映時間:117分(本編)
製作年度:2005年
画面サイズ:ビスタサイズ・スクイーズ
音声(1):ドルビーデジタルプラス/5.1chサラウンド/英語
音声(2):ドルビーデジタルプラス/5.1chサラウンド/日本語
音声(3):ドルビーデジタルプラス/2.0chステレオ/コメンタリー

鬼才テリー・ギリアムとスタジオの攻防

 テリー・ギリアム監督といえば、まず挙げられるのが何と言っても「未来世紀ブラジル」だ。製作から20年以上経つのに、この映画がカルト映画として未だにその輝きを失わないのは、ユニバーサルの当時の社長、シド・シャインバーグと争ったファイナル・カット権を巡る攻防とは無縁でないだろう。そのことがモンティ・パイソン出身の作家テリー・ギリアムの名前を一躍有名にしたのだ。以降「バロン」では膨れ上がる製作費問題で再び注目を集め(興行的には惨敗)、「フィッシャー・キング」で評価を高め、「12モンキーズ」でようやく観客の支持を得ることができた。

 しかし、その後は「THE MAN WHO KILLED DON QUIXOTE」が製作途中で挫折。その顛末はメイキング映画「ロスト・イン・ラ・マンチャ」に詳しく描かれている。この「ブラザーズ・グリム」でも当初の製作スタジオMGMが途中で手を引き、後を継いだミラマックス代表、ワインスタインと衝突を繰り返し、ようやく完成に至った経緯がある。

 なぜそんなにテリー・ギリアムの周囲にばかりトラブルが続出するのかといえば、彼の徹底した完璧主義が大きな要因として考えられる。「12モンキーズ」でも画面に見えるかどうかのネズミの動きが気になって、撮影が長引いたエピソードが知られているくらいだ。

 しかし、そうしたこだわりは必ずしも無駄とは言い切れない。特にこの「ブラザーズ・グリム」ではそうした彼のこだわりは衣裳や小道具などのディテールに生かされ、映画にプラスに作用している。

 内容について言うと、この映画は童話で有名なグリム兄弟を主人公にしたファンタジーだが、実話に基づいている訳ではない。彼らの書いた物語をきっかけに、自由にイマジネーションを膨らませたファンタジー作品である。

液晶プロジェクターによるスクリーン再生とプラズマで視聴

 自分は本作を劇場で1回、北米版のDVDと国内版のDVDでも見ていたが、このHD DVDでは全く違った印象が生まれてきて、彼の映画の持つ力に驚かされた。視聴は液晶プロジェクターによるスクリーン再生(80インチ)とプラズマテレビ(42インチ)で行った。接続はいずれもHDMIにした。

 まずCH-1の「魔法の豆」では幼い時分のウィルとジェイコブの重要なエピソードが語られるのだが、貧乏な境遇を表すボロ屋の様子が通常のDVDとは段違い。地面に敷かれたマットのほころび具合や、壁の汚れ、着ている服の生地の様子まで手に取るように分かる。ここで病気の妹を救おうと家畜を売りに行ったジェイコブは、騙されて魔法の豆を買ってしまう。思わずウィルは怒り心頭になるのだが、貧乏の度合いがその気持ちも分からせてくれる。

 CH-2ではその後、成長した兄弟が登場し、物語は本題に入っていく。雨の中、馬を走らせる2人の背景に映る石橋や城壁からその時代感が伝わってくる。ウィルが少年に渡す手紙の質感までもが如実に出るのには恐れ入った。そのまま兄弟はその村に出没する水車小屋の魔女の退治に乗り出すのだが、2人が着ている金属片を付けた鎧の輝きもDVDでは安っぽく見えたのに、HD DVDでは充分な質感が感じられた。また魔女を退治した後に残る蛇も、DVDでは黒っぽい固まりに見えかねないのに、しっかり表現しているのはさすがである。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.