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「ヘルシオ」とスチームオーブンは何が違う?(1/2 ページ)

» 2006年08月11日 20時04分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 先日、シャープが新型「ヘルシオ」を発表した(→発表記事)。2004年、“水で焼く”というキャッチコピーでデビューしたヘルシオは、それまで業務用しか存在しなかった過熱水蒸気調理器を一般家庭に持ち込み、10万円台半ばという価格ながらヒット商品になった。そのブランドは健在で、大手量販店の調理家電売り場では、いまだに「指名買いはヘルシオが多い」と口を揃える。

photo 新型ヘルシオ

 しかしその後、競合他社が相次いでスチームオーブンを投入。最近では「脱油」「減塩」といった言葉が当たり前に聞かれる状況になった。最新機種では「過熱水蒸気」の最高温度がヘルシオを超える350度といった製品も登場し、豊富な機能を積極的にアピールしている。とくに、ナショナル「達人の合わせ技」、三菱電機の「炭がま焼き」、東芝「石釜オーブン」といった、過熱水蒸気と従来の熱風オーブンなどを組み合わせた調理方法を提案するものが多い。とりあえず「水で焼く」より美味しそうな感じだが、消費者としては違いが気になる。

 シャープによると、まず調理時の過熱水蒸気の「濃度」が違うという。第3世代ヘルシオでは新エンジンの搭載により、濃度が97%になったのに対し、他社製品の多くは30〜40%という。そしてヘルシオは、過熱水蒸気を食材に直接吹き付けて“焼く”。ヘルシオにも1000ワットのレンジ機能があり、また30リットル容量のAX1000では補助ヒーターを搭載しているが、調理の途中でレンジや熱風オーブンに切り替える機能はない。過熱水蒸気を使うオーブンがこれだけ増えても、最初から最後まで過熱水蒸気だけで調理する家庭用調理器具はヘルシオのみだ。

 理由は単純で、過熱水蒸気だけで調理する点において、大阪府立大学大学院と共同開発したシャープは関連特許を数多く持っているから。たしかに他社製品の多くは過熱水蒸気の吹き出し口が1つというケースが多く、どちらかといえば脱油・減塩といったヘルシー調理の手段として扱っている。“焼く”ときの主役はやはり熱風オーブンだ。

 では、脱油・減塩効果に差はあるのだろうか。各社とも評価方法がさまざまで単純な比較はできないが、1つ例を挙げるなら、前述の東芝“カロリエ”「ハイブリッド石釜」が塩鮭の塩分を21%落とす(発表会資料による)のに対し、ヘルシオ(AX-1000)では27.1%(同じく発表資料より)。ここは“減る塩”の面目躍如といったところか。

 逆に、ヘルシオに熱風オーブン機能をつけ、他社製品のように“合わせ技”を提供する可能性は少ない。それを行うと、シャープが提唱しているヘルシオ調理のメリットを一部スポイルする可能性があるからだ。たとえば、新型ヘルシオでは、過熱水蒸気で庫内を満たすことにより、酸素濃度0.5%という、ほとんど酸素のない状態での低酸素調理が可能。これにより、油脂の酸化を防ぐことができるうえ、オーブンを使わないことで野菜の細胞を壊さないといったメリットがある。

photo 油は酸化すると黄色く変色する。サンプルは左から「未過熱」「ヘルシオ調理」「熱風オーブン」

 シャープの調査によると、サラダ油を10分間、熱風オーブン(酸素濃度21%)で加熱したものと過熱水蒸気(酸素濃度0.5%)で同じ時間過熱したものを比較し、過酸化物価の値を調査したところ、ヘルシオの場合は油脂が酸化したもの(過酸化物価)が約9分の1に抑えられるという。過酸化物価は胸焼けの原因になったりするらしい。

 また、熱風オーブンを使わないため、熱に弱い野菜の細胞を守り食感を維持したり、食材に含まれる栄養素や抗酸化物質を守る効果が期待できる。実際、発表会場で試食したブロッコリーは、生のような色と形を維持しながら火はしっかり通っていて柔らかかった。健康指向の調理家電としては、ヘルシオにまだ一日の長があるといえるだろう。

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