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ソフトバンクBBに聞く、PLCの課題と展望(1/2 ページ)

» 2006年08月14日 10時14分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
photo ソフトバンクBBが実証実験に利用しているPLCモデム

 電力線に通電している電力周波数と異なる周波数帯の信号を重ね合わせることで、電力線をネットワークケーブルとして利用する技術が「PLC」(Power Line Communications:電力線搬送通信)だ。コンセントに差し込むだけでネットワークが利用可能になるという利便性もあり、実用化に向けた気運が高まっている。

 PLCの技術そのものは以前から存在しており、現在の電波法下でも10kHz〜450kHzの周波数帯を利用できるが、この周波数帯を利用する限りでは最大でも数Mbpsのスピードしか実現できず、普及しているブロードバンド環境を考えるとパフォーマンス不足の感が否めない。

 そこで、より高い周波数帯(2MHz〜30MHz)を利用することで、最大で200Mbps(理論値)もの高速なデータ転送が可能とする技術が開発され、北米地域ではすでに対応製品(Panasonic製のPLCアダプタ「BL-PA100A」)も販売されているが、日本ではいまだ製品化されていない。

 高速化を進めることで、ブロードバンド時代のネットワークインフラとしての存在感を高めたいPLCだが、いくつかの課題も存在する。その課題と展望について、ソフトバンクBBに尋ねた。

実用化への課題は漏洩するノイズ

 日本国内における実用化に際して、最も大きな課題はPLCが使用する周波数帯が短波帯と重なるために短波ラジオやアマチュア無線、電波天文観測などへ影響を及ぼしてしまうことだ。特に、既存の設備では機器やケーブルからの漏洩電界(ノイズ)が避けられず、周囲の機器へ大きな影響を与えてしまう。

 しかし、政府が7月26日に発表した「e-Japan 重点計画 2006」(PDFファイル)にもユビキタスネットワーク社会の実現に向けての具体的な施策としてPLCの活用が明記されており、PLCは推進されていく方向であることが分かる。

 そうなると課題は漏洩電界をいかに抑えるかになるが、東京電力やソフトバンクBBは総務省関東総合通信局の認可の元、7月から漏洩電界の抑制実験を行い、効果的な抑制方法を模索している。

 PLCには大きく分けて、最寄りの基地局から加入者宅まで(ラストワンマイル)に利用するケースと、加入者の宅内で利用するケースが考えられるが、同社では家庭内LANとして利用する形態を想定している。「ユビキタスネットワークの実現のため、PLCは有効な手段になりうる」(ネットワーク本部 IPモバイル技術部 システム検証グループ マネージャー 菅原裕樹氏)

 「1家に複数台のPCがあることも珍しくなくなったが、PLCは電源コードを差し込むだけでネットワークが利用できる。それに、ネット家電の場合はコンセントとネットワークケーブルをそれぞれ接続するより、PLCを利用して電源コード1本ですべてをまかなう方がより高い利便性を提供できる」(菅原氏)

 今回、ソフトバンクBBが実験で検証しようとしている目的は2つ。ひとつは家庭内LANのインフラとしてPLCが実用的なものであるかの検証、もうひとつは漏洩電界の抑制方法だ。

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