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撮ることを楽しめるデジ一眼――松下「DMC-L1」レビュー(1/3 ページ)

» 2006年09月04日 16時21分 公開
[永山昌克,ITmedia]

 デジタル一眼レフ機の今の売れ筋は、レンズキットで実売10万円以下の製品だ。オリンパス、キヤノン、ペンタックス、ニコンといった老舗カメラメーカーに加え、ソニーがこのジャンルに参入したことで競争はますます激化。ちらほらと噂が聞こえる秋の新製品の動向も含め、今もっとも熱い市場である。

 しかし、ソニーと同じく新参の松下電器産業はこの激戦区をあえて避け、独自の戦略を選んだ。7月に発売した同社初のデジタル一眼レフ機「LUMIX DMC-L1」はレンズキットのみの発売となり、実売価格は25万円前後と少々高め。エントリー層ではなく、写真や撮影にこだわる愛好家層をメインターゲットにしている。

photo 松下電器産業「LUMIX DMC-L1」に付属の標準ズーム「ライカD バリオ・エルマリート 14-50mm F2.8-3.5 ASPH.」を装着

アナログ感覚とデジタル技術の融合

 メーカーの人は「台数シェアを追うことはしない」と宣言しているが、DMC-L1は爆発的に売れるカメラとは思えない。価格面だけでなく、操作性に取っ付きにくい面があるからだ。例えば、絞りやシャッター速度をそれぞれ手動で調整するアナログ風の操作感は、オート主体で気楽に使いたい人にはわずらわしく感じるだろう。

 だが、好きな人にとっては、このアナログ操作こそがDMC-L1のいちばんの魅力だ。絞りとは絞り羽根を動かして光を遮る機構であり、シャッター速度とは光が当たる時間のこと。そんなカメラの基本中の基本を、レンズ鏡胴部にある絞りリングを回したり、シャッターボタンの回りにあるシャッター速度ダイヤルを動かすことで、実感としてイメージしながら操作できる。今どきの他のカメラ、つまりボタンまたはダイヤル+液晶表示の操作性ではこうはいかない。

 ノスタルジックな操作系を取り入れる一方で、ライブビューというデジタルならではの機能が同居している。このライブビューがまた、くせものである。ライブビューモードに切り替えた時や、シャッターボタンを押した瞬間には、内部のミラーがバタバタと動く。ちょっと挙動不審な動きであり、コンパクトデジカメのようなライブビューを期待した人には戸惑いが残るだろう。

 だが、一眼レフ機にはミラーがあり、撮像素子に光を当ててライブビューを実現するには、ミラーアップしなければならない。さらにAFセンサーを作動させるには、いったんミラーダウンする必要もある。といった構造を考慮すれば、この動きも仕方ないと納得できるし、タイムラグがあるとはいえ、弱点を補って余りあるメリットを感じるはずだ。

 こうした一筋縄では行かない操作そのものを味わうことが、DMC-L1を使う面白さである。私としては、スピードや効率が要求される仕事用に使うには多少勇気がいるが、休日に趣味として撮影を楽しむ用途にはぜひ使ってみたい。ほかにはない個性が際立っていて、惚れた人にはとことん愛着が持てるカメラ。アクが強く、使う人を選ぶカメラといってもいい。

photo フィルムカメラを使っていた昔は、こんな操作系だったなあと思い起こさせてくれる。懐かしくもあり、新鮮でもある
photo デジタルならではのライブビューに対応。デジタル一眼レフ機としてはオリンパス「E-330」に次ぐ2台目の試みであり、撮影領域が拡大する
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