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ハイビジョン作品を“買う”楽しみ麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2006年09月06日 11時00分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――今回のBD発表会でのプレゼンテーションで、メディアによる感動度の変遷をグラフにして視覚化していたのがとても印象的でした。

麻倉氏: BD-ROMの登場が、AVの歴史においていかにエポックメイキングな出来事かということを言葉で言っても、なかなか理解していただけないかと思い、パワーポイントで図をつくりました。初めは単にチャートだけだったのですが、これは、下からバーが登ってくるようにすると、理解も速いと思い、アニメーションにしました。

 DVDまではSD画質の世界で、ここではいくら頑張っても、質感を愛でるというところには到達しませんでした。情報としては伝わるのですが、景色の中でどういう空気が流れているか、温度感はどうか、それをふまえて主人公はどう思うか……、こういった“情緒の世界”をSDでは描き切れなかったのです。我々ユーザーは、そういった情緒の世界を想像するしかありませんでした。

 それがハイビジョンならそれに関する正確な表現・再現性ができるということを、私は累計600本以上のハイビジョンエアチェックと、毎日5〜6時間のハイビジョン視聴で体験しました。ハイビジョンには圧倒的な感動量があり、それは人を幸せにできるのです。

photo BD発表会での「メディアによる感動度の変遷グラフ」

麻倉氏: 今回作成したグラフでは、VHSの感動量を20%とすると、レーザーディスクは40%、DVDは60%、BDはなんと250%となっています。これは私が考える感動の量を素直に表現したのですが、偶然にもこのグラフは、そのメディアの情報量の差とリンクしていたのです。このことは後で別の人に指摘されて気づいたのですが、つまり情報量という数値の違いは、感動量の違いとリンクしているのですね。

――続いてののプレゼンテーションで、NHK BS hiで放映した「風と共に去りぬ」と「ザルツブルグ音楽祭・椿姫」を“感動のハイビジョン映像”の例証として挙げていましたが、その理由は?

麻倉氏: 私の今までのハイビジョンの感動は、すべて放送からきています。その中でも特に感動した2本を紹介し、ハイビジョン映像の素晴らしさとはいったいどういうことだろう? ということを確認できれば、次世代DVDの素晴らしさがおのずと理解できるのではと考えたのです。

 「風と共に去りぬ」が大好きな私は、レーザーディスクで3種類、DVDでも3種類コレクションがあるのですが、これまでの感動のポイントはマーガレット・ミッチェルの原作の世界をいかに表現しているかといったストーリテラー的な部分で、画質そのもので感動したというのはハイビジョンが初めてでした。特にNHKが放映したものは、ワーナーが門外不出のネガからスキャンし、完全なデジタル修復を施したもので、数世代ダビングしたフィルムでの劇場上映よりもはるかに高いクオリティを持っていました。オリジナルのフィルムの質感とはこうであったのかということを、ハイビジョンによって初めて知ったのです。これが本当に67年前に撮影された作品かと疑いたくなるぐらい、まるで昨日撮ってきたような新鮮さでした。あまりに出来がよいので、それがテアトル東京で劇場公開されました。すごい画質だという朝日新聞で評価されていましたね。

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