テレビを購入する際には、デザインも重要な要素であることは間違いないのだが、いざテレビのデザインを語れと言われると、なかなか困ってしまう。ただ、最も基本的な部分を挙げるとすれば、スピーカーの位置ということになるだろうか。PC用ディスプレイとは異なり、家庭用テレビの場合はほとんどの製品がスピーカーを内蔵している。
一般的にスピーカーの位置は、アンダーもしくはサイドとなる。両者の違いは、スピーカーの左右チャンネルの間隔による音響(主に音の広がり)はもちろん、見た目のデザインにも大きな差をもたらす。最近の製品を見渡すと、どうやらアンダーを採用するケースが多いようだが、本体横幅を最小限に抑えられるからであろうか。その分、一定の高さは追加されるが、いずれにせよスタンドを使用するため、さほど気にすることはないというわけだ。
ただ、それ以上に、アンダースピーカーを採用した製品のほうが、スピーカーの存在を感じにくく、見た目の重心も低いため、“落ち着いた印象に感じられる”ことも人気の要因ではなかろうか。それを顕著な形として発展させたのがEIZOの液晶テレビ「FORIS.TV」ともいえ、スピーカーとスタンド込みで、テレビのトータルデザインを提案した“SCシリーズ”を送り出している。
また、シャープの液晶テレビ「AQUOS」では、(主力製品に関しては)全モデルにおいてスピーカーの位置をアンダーとサイドから選べるよう、2タイプずつ用意している。たとえば、「LC-42GX1W」「LC-42GX2W」のように、アンダースピーカータイプであれば型番に「1」、サイドスピーカーであれば「2」がつく。売り上げランキングなどを見ても、やはり「1」のほうが人気が高く、(機種にもよるが)同一モデルの「2」の倍ほどの売り上げ比率になっているようだ。
さらに、いずれのスピーカー配置にせよ、存在を感じにくいレベルにとどまらず、“存在を消す”方向へと進みつつあるようだ。たとえば、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA X2500」では、ベゼルを取り囲むように透明のアクリルパーツを配し、映像の浮遊感を演出するフローティングデザインを採用した。一見すると、スピーカーレスかと思わせるデザインだ。さらに、サムスンの液晶テレビ「Bordeaux」シリーズでは、その名もずばり、“Hidden Speaker System”を採用。スピーカーユニットが本体内部へと隠されており、全体にシンプルなデザインを追求している。
大画面テレビにおいては、各社ともオプションの専用台を用意している。もちろん、専用台との組み合わせが必須というわけではないが、ユーザーが適当な台を使用した場合、耐加重が十分に確保できないケースもありうるため、こうした専用台やスタンドを提供しているのだろう。またテレビ本体だけでは、デザインで差別化といっても限界があり、専用台のデザインに工夫を凝らし、テレビと組み合わせた際の独自性を打ち出すことで、差別化を図りたいというメーカーも多いに違いない。
たとえば、松下電器産業の液晶/プラズマテレビ「VIERA」では、弧を描いて迫り上がっていく曲線を基調とした専用台をオプションで用意しており、本体と組み合わせることで、(これまた)「映像だけがあたかも浮いているようなフローティングスクリーンコンセプトを実現」できるという。
このように、さまざまな観点で各社の製品や取り組みを眺めていくと、(少なくともメーカーの考える)テレビのデザインにおける本質とは結局、“あまり存在を主張しないこと”なのだと捉えられる。ここで挙げた例ばかりでなく、東芝の液晶テレビ「REGZA」のカタログのように、映像に集中するため、あるいは、インテリアとの調和を実現すべく、存在感を抑えたことを謳っている製品は少なくない。
また、前述の「BRAVIA X2500」が提案しているように、カラーバリエーションというのも、単に本体へ個性を持たせるだけでなく、むしろ、部屋の基調色との統一を可能にすることで“埋もれさせる”意味合いのほうが大きいのかもしれない。
以下は余談になるかもしれないが、ほかに設置に関わる機能なども、広い意味ではデザインに関係する要素と捉えられる。たとえば、日本ビクターのプロジェクションテレビ「BIG SCREEN EXE」では、各モデルともセンターチャンネル入力端子を装備している点が特徴だ。サラウンド音響を前提としたホームシアター環境を構築したい場合、大型のプロジェクションテレビとの組み合わせでは、センタースピーカーの置き場所に苦労する可能性もある。内蔵スピーカーをセンターチャンネルに利用できれば、それを解消するとともに、部屋のトータルデザインも、よりシンプルに考えられるというわけだ。
プロジェクションテレビについては、購入者が「液晶か、プラズマか、それとも……」と悩むよりは、最初から購入対象として絞り込んでいるケースが多いと思われるため、この連載ではあまり触れなかった。しかし、50型超の製品を探している人にとっては、有力な選択肢となりつつあることは間違いない。
この「BIG SCREEN EXE」の最大のライバルは、ソニーの新型SXRDプロジェクションテレビ「BRAVIA A2500」となるだろう。両者を比較すると、HDMIが1080p対応で、しかも3基も装備した「BRAVIA A2500」を選ぶか、それとも、コストパフォーマンスがやや高く、さらにi.Linkも残している「BIG SCREEN EXE」かと悩む。しかし、ユーザーの設置環境によっては、センターチャンネル入力端子の有無が“重要なデザイン要素”となり、製品選択に重大な影響を与えるケースも、少なからずあるかもしれないのだ。
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