――「感度優先モード」と「シャッター速度&絞り優先モード」が非常にユニークです。これら新しい露出モードの狙いは?
畳家氏: そもそも露出とは「絞り」、「シャッター速度」、「感度」の3要因で決まりますが、フィルムの場合、このうち感度に関しては使用するフィルムによって固定され、撮影時にユーザーが自由に選択することはできません。
デジタルの時代になってからも、露出に対する考え方はフィルムの時代と同じでした。決められた感度に対して、絞りとシャッター速度のプログラムラインをどう設定するかという発想です。ただ、使用レンズよって異なる手ブレ限界になった場合には、感度を高めて補うという機能はすでにあります。デジタルになって生まれた「オート感度」という制御方法です。といっても、これは補うというレベルのものです。
つまり、これまでのデジタル一眼レフ機はすべて、感度を自在に操るという概念がありませんでした。我々としては、このまずは感度ありきという、フィルム時代から引きずっていた考え方を見直し、絞りやシャッター速度の変更と同じように、感度を調整できるモードを新搭載しました。これが「感度優先モード」と「シャッター速度&絞り優先モード」の発想です。
具体的には、「感度優先モード」ではグリップ部のダイヤル操作で1/3ステップ、または1/2ステップで感度を調整でき、それに応じて絞りとシャッター速度が決まります。一方「シャッター速度&絞り優先モード」では、シャッター速度と絞り優先をダイヤル操作で設定すると、最適な感度に自動的に設定されます。
――「感度優先モード」と「シャッター速度&絞り優先モード」はどんな使い方が考えられますか?
畳家氏: フィルムの時代には、使用するフィルムやプリントよって異なる粒状感の表現というものがありました。ところがデジタルの時代になってからは、「ノイズ」という言葉の持つ悪いイメージが強いためでしょうか、ノイズがあることは悪いこと、ノイズレスでのっぺりした絵がデジタルではきれいな絵ととらえる傾向が強いと感じます。
しかし、本当はそうではないと思います。フィルムの粒状感や粒子感と同じように、デジタルのノイズを作画の意図としてとらえることができるはずです。感度を上げることは単にゲインを高めることではなく、ざらつきを効果としてあえて生かし、表現として利用したいと考える人もいるでしょう。例えばそんな使い方が「感度優先モード」ならしやすいといえます。
「シャッター速度&絞り優先モード」については、シャッター速度による動感表現と、絞りによる被写界深度をユーザー自身がきっちりと決めて撮影できます。そんなことが必要なシーンはそれほど多くはないかもしれませんが、たまにはあるでしょう。カメラが判断する適正露出が自分の狙い通りであれば、すべてをマニュアルで設定するのではなく、感度をオート任せにできます。
どちらのモードも特に使い方を定めているわけではなく、逆にユーザーの方が自由に活用し、新しい作品や作風を生み出して欲しいと願っています。我々としては、今までできなかったことを新しいモードとして提供できたことが大きなポイントです。
――K10Dのキャッチコピーである「画質革命。」とは?
畳家氏: 「画質革命。」と大きくうたっていますが、これはノイズの表現も含めたトータルとしての意味です。デジタルカメラでは、様々な数字によって比較・評価されることがありますが、ノイズの数値だけをとらえた評価では悪くなることは覚悟しています。
万人受けしたい気持ちはありますが、様々な評価のすべての面で必ずしもナンバーワンになれないかもしれません。得たものがある反面、捨てたものもありますから。しかし、仕上がった写真としての表現力では必ず上だという自信があります。特にフィルムが好きというユーザーさんからの支持をいただければうれしいですね。
――購入検討中の読者にアピールして下さい。
畳家氏: カメラが好きで、撮影することが好きな方にとって、いちばん使いやすいカメラになったと思います。スペックや値段なども重要ですが、とにかく実際に手にしなければ伝わらないカメラの魅力があります。ぜひ触ってみて、評価し判断していただきたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR