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ホームシアター派のためのDLPの魅力DLPプロジェクターの賢い選び方(2/2 ページ)

» 2006年11月06日 23時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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長所を伸ばし、弱点を克服

 ご存知のようにDMD素子は、タイル状に並べた極小のミラーを電気信号で傾け、投射と非投射を高速に切り替えながら階調表現を行う。

photo DMD素子は、アリの足先よりも小さい超極小サイズのミラーをタイル状に並べている

 注目すべきは、ミラーを動かすというメカニカルな仕組みを従来よりもさらに微細化した上、ハイエンドのHD2シリーズの最終形で導入されていたDarkChip 3技術も導入している点。DarkChip 3は光の乱反射を減らし、コントラストを向上させる様々な技術の総称だが、それを最新の微細化技術と組み合わせて投入している。

 各プロジェクターベンダーのコントラスト向上技術とも併せ、従来のハイエンドプロジェクターと同等以上のコントラスト比を、フルHD DLPはもちろん、低価格の720p(あるいはワイドXGA)DLPにもたらしているのである。

 これにより、最高レベルのコントラスト比を維持したまま、720pパネル搭載機は数年前の1/4にまで低価格化され、夢と言われたフルHD DLPプロジェクターも、以前のHD2パネル搭載機と同等レベルの価格で入手できるようになった。コストと価格が、DLPに投げかけられた疑問の1つとするなら、この点は大幅に改善が進んだと評価できよう。

 加えてもう一つの弱点も、この世代で改善している。それは階調性だ。

 前述のようにDLPはミラーのオン/オフを高速に切り替え、時間積分で目に感じる光の強さを制御している。加えて色表現も時間積分で表現するため、DLPは階調が不足しがちと言われた。この階調を補うのが、DLP特有の誤差拡散処理だ。フレームごとにパターンを切り替えながら、誤差拡散処理で階調のつなぎを滑らかにする。

 最新世代のDLPでは、この処理を行うプロセッサの能力が大幅に向上。誤差拡散の精度が高まった上、パターンの切り替え速度も向上した。特に誤差拡散がノイズとして認識されやすい暗部階調の改善は目を見張るものがある。

 それは720pパネルにおいても、十分に認識できるものだ。低価格化しただけではなく、画質面でも従来のハイエンド製品並、あるいはそれ以上を実現できているのである。

 しかし、これで終わりではない。フルHD対応DMD素子ともなれば、さらに大きな進歩を感じることができるのだ。

誤差拡散によりノイズ感が一掃されたフルHD DLP

 従来からハイエンドDLPには、暗部階調を改善するために暗緑のカラーホイールパートを持たせ、誤差拡散ノイズを軽減する仕組みが導入されていた。輝度情報として強く感じる緑の暗部方向の階調を伸ばすことで、見た目のノイズ感を軽減する仕組みである。

photo フルHD DLPに使われている1080p対応DMDチップ

 上記のコントローラの処理能力向上による階調性改善は、ほぼ暗緑パートを用いる場合と同等(あるいは暗部以外ではそれ以上)の効果がある。そしてフルHD DLPには、暗緑パートと新しいコントローラによる誤差拡散処理の組み合わせにより、さらに高みへと到達しているのである。

 そしてもうひとつ、忘れてはならないのはフルHD化により、画面上での画素サイズが確実に小さくなっていることだ。710Pと1080pでは、1画素あたりの面積は約半分になり、それだけ視聴距離からは画素が見えにくくなる。

 つまり、誤差拡散処理が従来よりも視認しにくくなるのである。プロセッサの処理能力向上による階調性の向上、暗緑パートによるノイズ感の軽減、それに画素の縮小という3つが同時に実現したことで、DLPはかつての弱点をほぼ克服したと言ってもいい。

 原理上、RGB 3つのパネルを合成する方式よりも、高解像度のフルHDパネルを生かしやすいのが、単板DLPの長所でもある。高性能レンズとの組み合わせでは、これまでには見たことがないようなキレ味の鋭い映像を期待できる。

 各社から登場するフルHD DLPの映像に要注目である。


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