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“グッドデザイン”の基準(1/2 ページ)

» 2006年11月09日 13時54分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 最近、「デザイナーズ住宅」や「デザイン家電」など、カッコいいものが増えてきた。デザインに対する意識の高まりは大歓迎だが、よく見ると中身はさまざま。イメージ先行で実用性や機能性を犠牲にしていたり、割高な価格設定といった一面があるのも事実だ。消費者は、メーカーや商品を見定め、自分のライフスタイルに合ったものを選ばないと、結局は使い勝手の悪いモノに高いお金を出すことになりかねない。

 とはいえ、店頭で見つけた商品を見て、良し悪しを判断するのは難しい。そこで提案したいのが、50年の歴史を持つ「Gマーク」商品だ。身近過ぎてピンとこない人も多いだろうが、グッドデザイン賞には毎年3000近い応募があり、そのうちグッドデザイン賞を受賞できるのは3分の1程度である。

 グッドデザイン賞は、その選定において、人々を惹きつけるスタイルであることはもちろん、それが利用者にどう影響するか、あるいは製品が持つ社会的な意義にまで踏み込んで判断している点が特徴だ。大げさだと思う人は、2006年度グッドデザイン賞「ベスト15」の記事を読み返してみてほしい。選考理由が必ず「デザイン+α」の2本建てになっていることに気づくはずだ。“カッコイイ”だけでベスト15に残ることはできない。

photo 昨年のグッドデザイン大賞を受賞した「ナノパス33」(テルモ)

 逆に、形よりも「プラスα」のほうが評価ポイントになる製品も多い。たとえば昨年のグッドデザイン大賞を受賞した「ナノパス33」(テルモ)などは良い例だろう。外観は、どこから見てもタダの注射針。だが、開発の背景や効果を知れば、誰もが「良い製品だ」と思う。

 ナノパス33は、世界一細い(0.2ミリ)のインスリン用注射針だ。現在、糖尿病でインスリンの自己注射を行っている患者は、日本国内だけでも約60万人。中には子どもも多く含まれ、毎日、あるいは一日に何度も痛い思いをしてインスリン注射をうたなければならない。そして「インスリン注射を止めることはできなくても、その痛みを少しでも和らげることができれば」(テルモ)という思いから開発されたのが、従来よりも細く、体への負担が小さい「ナノバス33」だ。カッコイイ要素は少ないが、製品の持つ意味には多くの人が共感するだろう。

 また、2004年のグッドデザイン大賞を獲得した「ドレミノテレビ/にほんごであそぼ」は、NHK教育テレビが制作した子ども向けテレビ番組だ。モノとしてのカタチを持っていないが、歌のお姉さんにアーティストのUAさんを起用するなど「子どもにこそ本物を」という番組作りのコンセプトとクオリティが評価された。もともと「デザイン」の定義は幅が広いものだが、一般的に想像されるデザイン賞の範疇に収まらないようなものでも存在感をアピールできるところが、グッドデザイン賞の特徴であり、間口の広さだと思う。

photo グッドデザイン金賞を受賞したサムスンの「SC-X210L」。スポーツの時に帽子やヘルメットにワイヤードのサブCCDを付けると、プレーヤー目線の臨場感溢れる映像が撮影できるという優れもの。国内では、とかくハイビジョンカメラに注目が集まりがちだが、こうした提案型のアイデア商品もいい

 最近では、応募する側もさまざまな目的で応募するようになった。今年は、ロボットや海外勢の応募が目立ったそうだが、時勢を考えると理由は理解しやすい。それまでの“研究素材”から“製品”に変わりつつあるロボットは、今後、プロダクトとしての評価がより重要になる。海外勢は、日本の市場を意識したというより、“日本で評価を受けること”自体を重視しているようだ。実際、日本法人ではなく、本社から直接応募した製品が多く、また日本で販売する予定がないものが多く含まれている。

 製品のターゲットが、たとえば北米や日本以外のアジア圏であっても、物作りに定評のある日本で評価を受けることは意味があるのだろう。2006年のベスト15に残ったサムスンのビデオカメラ「SC-X210L」も日本では未発売だ。

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