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ソニー「BDZ-V9」、BD“プレーヤー”としての実力は?いよいよ発売(2/2 ページ)

» 2006年12月08日 22時28分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 ハイビジョンのI/P変換はきちんとした処理が行われており、映画放送は2-3パターンを検出し、きちんと逆変換を行ってくれる。ビデオ映像に対しては動き適応型の変換を行っているようで、解像度の低下、ディテールの喪失やコーミングを感じさせる場面はあまりない。

 詳細に見ていくと、動きの速い場面などで松下の「DMR-BW200」の方が情報量が多く見え、またマレにジャギーらしきものが見えた。絶対的なハイビジョンI/P変換の質は、松下の「美・画質エンジン」の方が上だ。

 しかし、V9はBW200に比べ、なぜか輝度のレンジが拡がり、肌の透明感もある。全体にソフトタッチで穏やかな雰囲気のBW200に対して、ワイドレンジで切れ味や抜けの良さを感じさせるのがV9。この印象はDVDソフトを再生したときにも感じる。HDMIからの映像出力ならば、理屈の上では両者に大きな差はないハズなのだが。

photo ROMメディアの再生時にはNR処理はバイパスされる。このためデジタル放送に合わせて強めにNRをかけておいても、市販パッケージの画質を損ねることがない。これは便利

 なお、V9は記録型ディスクやHDDに収められたコンテンツには、デフォルトでノイズリダクションフィルタが2種類かかる。とくにノイズや歪みの大きいデジタル放送の映像には効果的で、弊害はあまり感じられない。一方、このノイズリダクションは、市販パッケージコンテンツでは使えなくなっているため、ここでノイズリダクションをオンにしていても、高画質な市販ソフトの画質を落とすような弊害はない。このあたりの気遣いはさすがだ。

 市販のBDビデオ再生に関しても、絵にはやはり同様の傾向が見られた。ただし現在のところ、1080i収録の市販BDを所有していないため(発売は1タイトルだけされている)評価していない。しかし、結果は放送録画を再生した時と同じだろう。

 DVDをHDMI経由で1080pにアップコンバート出力した際の画質は、(最新のDVDプレーヤーと比較すると)さほど先鋭感を感じさせるものではないが、S/N感が良くディテールも深い。DVDプレーヤーとしても十分に評価できるレベルに達している。

 上記はすべてHDMI端子の映像に対する評価だ。ディスプレイがデジタルのため、アナログ映像出力に関しては参考程度に考えていただきたいが、変な強調感がなく、クリアで“もやもや”した印象がない優秀なものだった。

 前述した音の良さも考慮すれば、V9はBDを中心としたプレーヤーとしても評価できるレベルにあるといえる。ただし、そこはレコーダーであって、専用プレーヤーではない製品だ。いくつか細かなリクエストもある。

自信を持ってプレーヤーとしても使ってもらえる作りに

 筐体はしっかりとした作りで、「RD-A1」という例外中の例外を除けば、ここ数年でもっともシャシーにお金をかけたデジタルレコーダーではないだろうか。

 リモコンに関しても、さすがにBDZ-S77用リモコンの質感には劣るものの、ボタン配置や扱いやすさ、それに(録画タイトルの)トリックプレイや、フラッシュ再生機能(きちんと先行入力でスキップ可能)など、再生操作していて非常に楽だ。

photo BDビデオモードへと切り替わる際、HD-XA1ほどではないが、やや待たされる印象

 ただ、V9に関してはBDプレーヤー部とBDレコーダー部が混在した作りになっており、たとえば起動してから最初に市販BDソフトをかけるとき、モードを切り替えるための時間が数10秒かかってしまう。一度切り替わってしまえば、あとはディスクを入れ替えてもすぐにプレーヤーが起動するが、図らずも2つの製品を1つにしていることが見えてしまう。

 また、放送録画の再生では、実にキビキビとレスポンスよく動くV9だが、BDビデオ再生ではチャプタースキップに対するレスポンスが悪い。キーを押して一拍おいてから次のチャプターに移動する。メニュー内の動きなどは素早いため、パフォーマンス不足によるものではないとみられる。このあたりも、2つの異なる製品の組み合わせを感じさせる部分だ。

 このような細かな不満はあるが、プレーヤーとしての優秀性も考えれば、ソニーには是非とも“プレーヤーモード”を付け加えてほしい。レコーダーの場合、電源をオンにすると放送波が表示され、音声も出力される。ディスクを再生後もそうだ。さらに録画機としては使いやすく設計されているリモコンも、DVDやBDのメニュー1つ出す操作でさえ蓋付きのエリアに押し出されており、市販ソフトを中心に楽しみたいユーザーには使いづらい。

photo リモコン

 30万円という価格を考えれば、ここはプレーヤー用リモコンも添付していただいて、“プレーヤーモード”で起動させると、チューナー部などのノイズ源を起動させないまま、純粋にプレーヤーとして使えるようにできないものだろうか。

 市場サイズを考えてレコーダーに徹するのもいいが、せっかくここまでの画質と音質を引き出せているのだから、その部分はきちんと訴求すべきだろう。

2層非対応は残念だが……

 “V9にはもっと別の問題があるだろう”と言う人もいるだろう。もちろん、その通りで記録型BDの2層に書き込めないばかりか、読み出しすらできないというのは、厳しいようだが失態と表現すべきだろう。

 実際に製品を使ってみると、レコーダーとしてのキビキビとした操作レスポンスの良さ、自動チャプターやチャプター編集の使いやすさ、おまかせ録画の利便性など、良い面はたくさんある。マニアックな作り込みではないが、手軽に多機能を使いこなせるV9は、レコーダーとしても、きちんとした作り込みがされている。

photophoto 編集機能の動作はとてもレスポンスがいい。録画時の自動チャプターのほか、後処理でチャプターを等間隔に打て、その後の編集もわかりやすい

 これだけ使いやすければ、2層が必要な番組は複数枚に分割してダビングすれば良いとも思える。1層ディスクと2層ディスクの価格差が大きいため、2層ディスクを使いたくなる場面は限られている。このため、2層記録ができないことは“致命的”ではないと発表時から考えていた。

 だが、2層の読み出しが行えない点、これこそがV9最大の弱点である。2層のROMは読めており、反射率も大きくは違わないのだから対応できそうなものだが……。ドライブ開発を自社ではなく、他社(具体的にはパイオニア)に頼ったことで目論見が崩れたのだろうが、本機の不幸は自社ではコントロールできない原因で2層対応出来なかったところにある。

 この点は残念だが、映像と音のクオリティ、それに本体の品質感やレコーダー部の操作レスポンスなどを優先するならば、それでも魅力のある機種だ。何を重視するかによって、ライバルの松下製レコーダーと本機のどちらが良いのか。意見の分かれるところだ。

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