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「コピーワンス見直し論」に分け入るインテルの戦略小寺信良(3/3 ページ)

» 2006年12月25日 11時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 一方でインテルが提案する新しいCOGは、一般消費者の感覚に合わせて録画したコンテンツの段階では、まだコピーワンスのフラグを立ったままにする。つまり録画したコンテンツを「親」とみなすわけだ。親からコピーを作る場合は3回ぐらいOKというルールでやれば、そう不便ではない、ということである。

 この方式ならば、DVD、Blu-ray、HD DVDに対して保存、ほかのデバイスへの転送を行なっても、あと1回余裕がある。しかも録画したコンテンツは消えていない、という状況を作ることができる。

 この新しいCOG方式は、理論的には納得できる部分もあるが、現実には課題も多い。まずOne Generationの概念が現行のARIB運用規定と異なるので、この運用規定を改変しなければならない。もうひとつはハードウェア側の対応である。これまで録画コンテンツがCOGフラグを持つということは、運用規定にもなかった想定外の事態だ。それを既存のハードウェア上でどう実現できるのかは、まだ検証も行なわれていない。

 明るい材料があるとすれば、この方法は放送局側の負担が少ないという点だ。COGフラグを受ける側のデバイスで対応するので、想像する限りでは、放送局側の設備変更は必要ないように思える。ただ受信機器側の負担を減らすために、局側で出すフラグになんらかの細工を施す必要が出てくれば、EPNと同じかそれ以上の設備投資が必要になることは考えられる。

 いずれの方法を選択するにしても、結局求めていくのは、デジタル放送のコピー制限緩和である。放送という事業がここまで拡大したのは、録画という方法があったからだというテーブルには、どうにか全員着席して貰えるようになった。つまり視聴機会損失を補完するための手段として、タイムシフトが必要である、という考え方までは、どうにかコンセンサスを取り付けたのだ。

 今問題になっているのは、それから先のコピーである。ここを締め付けることによって、消費者がその代わりにDVDを買うかというと、そんなことにはならない。こういうマイナスのストレスは、購買欲というプラスの行動に転換しづらい。

 作品のファンは、放送を見て録画もしてDVDも焼いて、その上でセルDVDも買う。現代のコンテンツ消費とは、そのように変質しつつある。むしろいやというほどコンテンツ漬けにして、消費者側からアクティブにお金を払って貰うモデルのほうが、産業としては伸びる。この感覚を業界は早く身につけなければ、新しい放送コンテンツ事業の姿は見えてこない。


小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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