映像回路は、細かなガンマカーブをカスタムで作れる機能や、6軸のカラー補正機能、高域と低域、あるいは水平と垂直方向で個別にシャープネス設定を行える「アドバンストシャープネス」といった機能を搭載。肌色の色味を簡単に補正(緑方向あるいは赤方向)できる肌色調整も、エプソン機を知るものにはお馴染みの機能である。これらはすべてRGB各10ビット精度で演算が行われ、最終的にパネルドライバの中でガンマ補正(10ビット処理)が行われて出力される。アナログコンポジット入力のA/Dコンバータも、もちろん10ビット対応だ。
ただし、映像信号に対してI/P処理やスケーリング処理などを行うチップは別途搭載されておらず、プロジェクター用制御チップとして一般的なピクセルワークス製チップの回路を使用している。このあたりが、同じパネルを使用する他機種との大きな違いになっている。
なおスペック上のコントラスト比は1万2000:1だが、これはダイナミックモード時の値でオートアイリスの効果を含んだものだ。同一画面上での最大コントラストは、おおむね2000:1程度と思われる。
数値上はさほどインパクトはないと感じるかもしれないが、それでも従来機比では2倍+α程度のコントラスト。遮光がしっかりした部屋で見るのであれば、映画鑑賞には十分なコントラストがある。
なお、ナチュラル、シアター、シアターブラック1および2などでは、デフォルトでオートアイリスがオフの設定になっている。オンにした場合のアイリスの変化幅はモードによって異なるようで、シアターブラック時には1.5倍ないし2倍程度しか動かないようだ。このあたりは、モードによってアイリスの動的な動きによる弊害と明暗の動的な表現のバランスを変化させているためだろう。
本機の絵作り面での印象は、カラーモードごとに大きく異なる。また、以前のEMP-TWシリーズとも、各モードのターゲットとする絵が変化している。ここではシアター系の各モードについて、どのようなセッティングになっているのかをコメントしたい。
シアターモードは、以前の機種ではシネマフィルタオフで映画向けの画質設定を施したものといった位置付けだったが、本機ではシネマフィルタがオンになっている。その上でデフォルトではランプが高輝度になり、色も比較的乗せる方向でのチューニングがされているようだ。色温度は6500度とDVDやハイビジョン放送の標準値に設定されている。
このためランプモードを低輝度にしてファンノイズを抑えると、シアターブラック系のモードと似た画調となる。ただし、チューニングの度合いは異なるようで、若干こちらの方が明るくなる。その分、色純度ではシアターブラック1および2には及ばない。
シアターブラック1は、色純度を伸ばし色調を整えた上で、完全暗室を前提に低輝度モードでファンノイズを抑えている。メリハリの良さや白のピーク感、抑えめの色でモニタライクな印象。ただし色温度は高めで7500度としている。残銀処理を施して色を抑え、シャドウを強調しながらも白ピークをうまく使う近年のスタイリッシュな映画、あるいはハイビジョンテレビドラマ、音楽ライブ放送などに向いている印象だ。
一方、シアターブラック2は1に比べて色温度が低く(6000度)、色もグッと乗せて濃い口の絵になる。色温度が抑えられたことで白ピークは穏やかになり、ダイナミックな表現には向かないが、一般的なドラマ系の映画には良く合う。一般に“映画向き”とされるセッティングだが、ガンマカーブを曲げてフィルムっぽく見せることはしておらず、明暗のトーンは素直だ。
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