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ソニーのディスプレイ切り札「有機EL」――コントラスト比100万対1の秘密2007 International CES

» 2007年01月09日 12時38分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 米ラスベガスのInternational CES 2007で一般公開されたソニーの27インチのフルHD有機ELディスプレイ。同社は昨年、SEDと同方式のディスプレイ方式FEDの開発を外部ジョイントベンチャーに移管し、社内の開発リソースを有機ELに集中させることを発表した。この経営判断を行う要因となったのが、今回公開の有機ELディスプレイ技術である。

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 新公開された有機ELディスプレイが従来よりも優れているのは、コントラスト比が大幅に向上して色再現性も従来よりも改善したことで、表現できる映像の幅が大きく拡がった点にある。

 色再現域は、従来より協業を進めている出光興産との共同開発中の新溶剤を用いた有機発光素材を組み合わせて発色性を向上させているという。放送規格の色空間とのマッチングに関して、担当者は明言を避けたが、NTSC色空間は完全にカバーできているという。見たところ、特に高純度の赤や緑の発色に濁りが見られない。階調も素直で不自然さを感じる階調領域もなかった。

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 これに加え、コントラスト比を向上させたのが、有機EL専用に開発された薄膜トランジスタによる有機ELの駆動回路だという。従来は液晶ディスプレイ向けのTFTを流用していたが、これを新開発の有機材料向けに開発した専用のドライブ回路とし、パネル構造も見直したものにすることで、コントラスト比が向上した。コントラスト比向上に合わせ、RGB各10ビットのドライブとなっている。

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 数値では100万対1と表現されているコントラスト比は、確かに見た目にも他方式を圧倒する。明暗のレンジが広いことによるメリハリ感はもちろんだが、黒レベルが下がることによってシャドウへの落ち際の色相が安定し、映像が落ち着いている印象だ。新しい駆動回路の詳細に関しては、今月行われる学会で発表する。

 なお、輝度は200カンデラと公表されているが、寿命に関してはアナウンスされていない。寿命に関しては従来、数1000時間のオーダーだったが、この点に関して従来との大きな違いはないようだ。画質面や消費電力などの面では圧倒的に優れるだけに、今後は寿命を数万のオーダーにまで引き上げられるかどうかが注目点になってくるだろう。

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