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水でノロウイルスを撃退――三洋が検証結果を報告

» 2007年01月17日 18時34分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
photo 三洋電機の電解水技術応用製品

 三洋電機は1月17日、同社が加湿器や空気清浄機などに展開している電解水技術が、この冬猛威をふるっているノロウイルスの抑制に高い効果があるという検証結果を報告した。群馬県衛生環境研究所との共同研究によるもの。代理ウイルスとしてネコカリシウイルスを用いた実証データを公開した。

 ノロウイルスは、激しい嘔吐や下痢、腹痛を伴う胃腸炎症状を引き起こす原因ウイルスの1つ。冬に集団発生を引き起こすことで知られ、昨年12月にも猛威をふるった。現在は沈静化の方向にあるものの、4月頃までは散発的に集団感染の発生が見込まれる。

 群馬県衛生環境研究所の小澤邦久所長は、「ここ数年、ノロウイルスが何らかの理由で“極めて少量”でも感染するようになった」と指摘する。事実、2006年に報告された群馬県内の患者数は、過去10年間の統計と比べて2倍強。感染者の吐瀉物が乾燥して空気中に飛散したことで感染した事例も報告されているが、「空中を浮遊するノロウイルスによる感染リスクは意外に大きいと考えられる」(同氏)。

photophoto 群馬県衛生環境研究所の小澤邦久所長(左)。感染性胃腸炎の流行動向(右)。2006年末に急増していることがわかる

 三洋電機の電解水技術は、水道水に含まれる微量の塩素を利用する。水を電気分解して2種類の活性酸素(OHラジカルおよび電解次亜塩素酸)を生成。これがウイルスに接触すると、表面タンパクにあるスパイクを変性/分解し、人体細胞のレセプターに取り付く能力を失うという。これまでに報告された第三者機関による検証結果では、浮遊ウイルスは約99.5%、浮遊菌、浮遊カビ菌を99%以上除菌/低減したほか、杉花粉やダニといったアレルゲンも約99%抑制したという。

photo ウイルスが不活化(感染能力を失う)するメカニズム(推定)

 ただし、ノロウイルスの場合は生きた人間の腸内でしか増殖しないため、それ自体を検証することは難しい。そこで分類学上は同じカリシウイルスのネコカリシウイルスを代用ウイルスとして用い、電解水とウイルス浮遊液を混合して時間経過によるウイルス感染価(感染する能力のあるウイルス)の残存率を計測。「99%以上の抑制が確認できた」(群馬県衛生環境研究所の木村博一研究指導員)という。なお、検証に用いた電解水の濃度は2グラム/リットルで「製品に使われている方式と同程度の濃度と思っていい」(同氏)。

photophoto 群馬県衛生環境研究所の木村博一研究指導員(左)と検証結果

 また、今後は三洋電機が業務用機器に展開している「除菌エレメント」方式およびコンシューマー製品で使われている「除菌電解ミスト」についても、その有効性を検証していく。「これまでは単純な実験だが、今後は電化製品そのものがウイルスを不活化できるのかを検証していきたい」(木村氏)。三洋電機では、検証結果を随時報告する方針だ。

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