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CESで分かった2007年のデジタルトレンド麻倉怜士のデジタル閻魔帳(1/4 ページ)

» 2007年01月26日 15時35分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 今回で40回目を迎えた世界最大級の家電の祭典「International CES(Consumer Electronics Show)」が、今年も新年早々に開催され、さまざまな新製品/新技術/トレンドが紹介された(詳細は2007 International CES特集を参照)

 デジタルメディアのトレンドをいち早く、しかも分かりやすく紹介してくれる麻倉怜士氏の月イチ連載「デジタル閻魔帳」。米国での取材も精力的にこなす麻倉氏に、CES取材を通じて明らかになった“2007年のトレンド”を語ってもらった。

――今年のCESは参加企業数も2500社を上回るなど、昨年にも増して大盛況でした。ただ、シャープの世界最大108インチAQUOSや、LGのBD/HD DVDコンパチプレーヤーなどの“目玉”が少なかったという話も聞きます。

photo メイン会場の「LVCC」(Las Vegas Convention Center)をバックに

麻倉氏: 今年のInternational CESは目玉が少なかったという話も聞きますが、私の感想としては、これからのトレンドを探る上で、さまざまな収穫がありました。

 まず、International CESを主催するCEA(Consumer Electronic Association:全米家電協会)のCEO ゲイリー・シャピロ氏が開催にあたって、「コンバージェンスからニュー・コンバージェンスへ」とコメントしたのが非常に印象的でした。

 これまではハードウェア的な融合がコンバージェンスとして語られてきましたが、これからはコンテンツ/サービス/ハードウェアが融合した垂直的な統合を、ニュー・コンバージェンスと呼ぶということでした。

 当たり前のように聞こえてしまうかも知れませんが、今回のCESを丹念に見ていると「融合」が一方通行ではなく、多角的に進められていることが分かります。CBSのレズリー・ムーンバス氏(社長兼CEO)は、基調講演で使えるメディアはすべて使って情報を届けていく(関連記事)と述べていました。特に、自分たちの番組にタグ(インデックス)を書き込める機能を提供したり、アメリカでロケーション・フリー的なサービスを提供するスリング・メディアと提携するなど、その文脈でひじょうに先進的な動きを提案していました。地上波の三大ネットワークのひとつが、これほどインディ的な提案をしたのには驚きましたね。

 これなど典型ですが、すべてのコンテンツはすべての端末へ――そういったダイナミックな動きになってきたということが分かります。今回のCESでは、これまでは線だった融合への動きが平面となり、立体的な流れへと進化する様子がうかがえたのが非常に印象的でした。

――もう少し「ニュー・コンバージェンス」について、話を伺えますか。

麻倉氏: 私はニュー・コンバージェンスについて2つのことを考えました。ひとつは「コンテンツ・エブリウェア」――どこでもコンテンツを見られる環境を、コンテンツ/サービス/ハードウェアの融合で作り出すことです。

 もうひとつは、「マキシマム・コンテンツ・エクスペリエンス」。最大限に感動を引き出す体験とでもいいましょうか。HDコンテンツには、映画ならば監督の思い(ディレクターズ・インテンション)などさまざまなエモーションが含まれています。それを最大限に伝えることです。

 「コンテンツ・エブリウェア」を語る上でまず挙げなければいけないのが、MotorolaのSTBサービス「Follow me TV」でしょう。Motorolaといえば日本では携帯電話メーカーの印象が強いですが、CATV用STBの大手メーカーなのです。

 Follow me TVは大手、ケーブルテレビオペレーターのコムキャスト用のセットトップ・ボックスに搭載するもので、複数の部屋でセットトップ・ボックスに内蔵されHDDレコーダーの映像を見られるサービスです。リビングルームで見ていた番組の続きを、個室で見られるというものです。これは端末がサービスを持って、コンテンツ視聴環境を拡げる試みといえるでしょう。このようにVoDとホームネットワークを組み合わせる提案が各社で行われています。これまでは独立していたVoDとホームネットワークがシームレスに融合してきた。これはとても興味深いことですね。

photo ソニーの「BRAVIA Internet Video Link」。インターネットからのビデオコンテンツやニュースなどを対応するBRAVIAに表示できる

 アメリカの視聴者はCATVでほとんどの番組を見ています。そうすると、新しいメディア体験を広めようとしたら、CATV視聴者を動かす必要があります。その意味で、面白いのが、本家のロケーション・フリーが、STBに入る動きです。無線LANの範囲内なら、世界のどこにいても自宅のテレビと同じ番組が端末で見れるソニーのロケーション・フリーも、端末とサービス、コンテンツのを持つ例ですね。

 これまでロケーション・フリーを行うには、ベースステーション(送信部)をアダプターとしてSTBに接続しなければならなかったのですが、ソニーの新作戦はSTBそのものにベースステーションを内蔵してしまう、というものです。これにより、ロケーション・フリーが大ヒットする道が拓かれました、というより、ロケーション・フリー機能がデファクトなものとして、ケーブルSTBで活用される意義はとても大きいと言えます。

 TiVoの「TivoCast」も融合というキーワードで注目です。これはインターネット上のコンテンツをTiVoにダウンロードできるサービスですが、CATV/放送波のコンテンツも同列に扱い、HDDに納めてしまいます。CATV/放送波とインターネットの融合と言えるでしょう。

 コンテンツ・エブリウェアを実現可能とするサービス/ソフトウェアが登場すると、同時に端末も進化します。そこで鍵を握るのが有機ELです。

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