コラム
2007年02月05日 00時00分 更新

小寺信良:

ネットから長文が消えたいくつかの理由 (1/3)

パソコンやブログなどの普及で「文章を書く」ことの敷居が下がり、なおかつディスプレイやフォントの改良で読みやすさは向上した。しかし、ネットで長文を見かける割合は少ない。それはなぜだろうか。
小寺信良

 連載でお送りしている本コラムは、毎回文字数にして4000字から5000字程度である。ネットに掲載されている記事の中では比較的長文の部類に入ると思われるが、雑誌の感覚ならばだいたい2見開きぐらいの分量だろうか。本のレベルからすれば、この程度は全然長文とは言えないわけだが、感覚的にはずいぶん長く感じられる方も多いことだろう。

 わかってるなら短くしろよと思われるかもしれないが、それがなかなかできない。わかりやすくするためにはたとえ話も必要だし、少しはオモシロオカシイ事も書きたいし、そうこうしているうちにこの分量になっちゃうわけである。毎回毎回お付き合いいただいて、申し訳ない。

 さて、ネットの中の流れを見てみると、もはやコンテンツは文章だけではなく、絵や動画もかなり多くなってきた。WWWの可能性を語っていたその昔は、文字情報だけでなく図版や音楽、さらには動画もと言われて来たわけだが、ようやくそれが実現しつつある段階に到達したということだろう。

 そう、こんな話を持ち出すまでもなく、文字は最も早くデジタル化されたメディアであった。そしてネットのコミュニケーションも、まず文字による表現からスタートした。コンピュータグラフィックスの元祖は、アスキーアートともいえる。

 しかしビジネスの面で見てみると、電子書籍、あるいは電子出版は思いのほか立ち上がって来ていないというのが、正直な感想だ。現在ビジネスとして展開しているサービスは、もちろんペイしているから存続しているのだろうが、音楽や携帯ゲームのダウンロードビジネスよりも一般的かと問われれば、まだまだマイナーな存在であろう。同じネットサービスでも、直接データを販売する電子書籍より、紙の本を販売するAmazonのような形態が趨勢だったりする。

 もしかしたら文章という形態は、デジタル流通の中で次第に失われていく文化なのかもしれないと想像することがある。

なぜパソコンで長文が読みにくいのか

 パソコン画面の文章の読みにくさに関しては、以前から多くの指摘が存在した。フォントの美醜、コントラスト、CRTではリフレッシュレートなどだ。だがそれでも、読みやすさに関する革命は少しずつ起こっている。

 過去に筆者が感じたパラダイムシフトは、DVIの登場によるモニタ結線のデジタル化であった。それまでのアナログ結線のときは、液晶モニタであっても文字がにじんで、少し太って見えたものだった。今にして思えば天然アンチエイリアスと言えないこともない。だがDVI接続に変えたとたん、同じフォントでも文字が細くなって隙間が大きく空いたようになり、ずいぶん変わったと感じたものだ。

 Windows XPはクリアタイプフォントの採用で、小さな文字の視認性が向上した。さらにWindows Vistaで新搭載のメイリオフォントはふところや字間も広く、読みやすくなるという。

 だが、文字一つ一つが読みやすくなれば、文章が読みやすくなるのだろうか。もちろん美しい文字で表示されることは歓迎すべき傾向だが、日本語の文章としての読みやすさの本質は、それだけではないような気がする。

 筆者がパソコンで文章を読んでいて最も気になるのは、行間の空き具合である。今パソコンのモニタは解像度が上がり、さらには横に長くなっている。したがってそこに表示される文章も、何も手段を講じなければ限りなく横に長くなる。このとき行間が詰まっていれば、文章の改行を目で追っていく際に次の行を見失ってしまう。

 一方、このコラムの文章は、それほど読みづらくないはずである。これは編集者がCSSで行間指定を行っているからで、ITmediaでは135%に統一しているようである。135%とは、文字ひとつの高さを100%として、その35%分の高さを行間に追加していることになる。

 こういったことは餅は餅屋で、出版社としてDTPなどの経験があるから、最初から気にするわけである。だがブログやSNSなどではユーザーが行間の指定などを行うような機能はなく、そのシステム上でなるようにしかならない。

 なぜパソコンの文章表示では、わざわざ行間指定のようなことが必要になるのだろうか。最初から読みやすい配置にしとけよ、と誰しも思うわけだが、そこはそれ、コンピュータの出自がアルファベット圏であることが大きい。

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[小寺信良,ITmedia]

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