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れこめんどDVD:「ローズ・イン・タイドランド」DVDレビュー(1/2 ページ)

» 2007年02月09日 13時11分 公開
[皆川ちか,ITmedia]

 鬼才テリー・ギリアムが大作「ブラザーズ・グリム」の直後に撮り上げた本作は、さながらギリアム版「不思議の国のアリス」。

 いたいけな少女がテキサスの草原を駆け回る情景は、イノセンスかつ危うげな雰囲気がたっぷり。男性が観たら、自分の“そのケ”度合いが分かってしまうという……ある意味とても危険な映画です。

「ローズ・イン・タイドランド」

発売日:2007年1月26日
価格:3990円
発売元:東北新社
上映時間:117分(本編)
製作年度:2005年
画面サイズ:シネスコサイズ・スクイーズ
音声(1):ドルビーデジタル/5.1chサラウンド/英語

 栗色の髪が腰まで届くジェライザ=ローズは、キュートな10歳の女の子。学校には行っていない。元人気ロッカーで現在はジャンキーのパパと、チョコレート・バーが手放せないやはりジャンキーのママの世話をするのが、ローズの日常だ。友だちは、頭だけのバービー人形4体。

 ある晩、ママがオーバードーズを起こして死んでしまい、パニくったパパはローズを連れてかねてから憧れの地「ユトランド」へ出発する。しかし着いたのは、パパの故郷・テキサスだった。

 見渡す限り広がる金色の草原に、ぽつんと建つ古い一軒家。電気も水道も通っていなく、トイレすらも使えない廃屋同然の家だ。パパはクスリを一発キメて、さっそくトリップ。だけど、何日経ってもパパはなかなか目覚めない。

 ローズはお気に入りのバービー人形・ミスティークと共に、大草原を探索に出かける。そして出会う奇妙な人々。頭に稲妻模様の傷をつけた、てんかん持ちの青年・ディケンズ。その姉で、ハチに刺されて片目が白濁しているエキセントリックな中年美女・デル。どうやらパパのご近所さんだったらしいが……。

「不思議の国のアリス」から影響を受けた映画たち

 アメリカでカルト的な人気を持つ若手作家ミッチ・カリンの小説「タイドランド」を、「ブラザーズ・グリム」(05)で実に7年ぶりに監督復帰したテリー・ギリアムが映像化。超大作の編集の合間に2カ月足らずで撮り上げ、スペインのサン・セバスチャン映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した。

 邦題から連想されるように、元ネタは「不思議の国のアリス」。しゃべる白ウサギの後を追いかけて穴に落ちた少女アリスは、チェシャ猫や三月ウサギ、帽子屋、ハートの女王などが住む“不思議の国”を旅するという、あまりに有名な少女の冒険譚だ。

 少女時代のジェニファー・コネリーとデヴィッド・ボウイが共演してファミコンゲームにもなった「ラビリンス/魔王の迷宮」(86)、ダメ会社員が実は救世主だった「マトリックス」(99)、「アリス」にダークなオマージュを捧げた「ドニー・ダーコ」(01)、そして「千と千尋の神隠し」(01)など、アリスに影響を受けた映画は東西を問わず数多い。

 その中でも本作はかなりストレートな“アリス”系で、なにしろジェライザ=ローズが「不思議の国のアリス」の一節、ウサギの穴にアリスが落ちるくだりを朗読するところから、物語は始まる。

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