CH-5ではエイドリアンの兄、ポーリーとのバーでのやり取りが描かれる。トイレの鏡がほとんど原型を留めていないことに思わず目がいってしまう。この街では誰もがそうした貧乏な生活を送っている。ポーリーは「妹は30歳に近い。一生独身だ!干からびてババアになっちまう」と現在では脚本上でも考えづらいセリフを話し、ロッキーに付き合うようせっついている。バーのテレビではヘビー級チャンピオン、アポロの試合が近いことが報じられている。テレビは貧乏なのでもちろん白黒だ。
CH-6はロッキーが不良少女を悪い仲間から引き離し、家に連れ帰る場面だ。この少女は「ロッキー・ザ・ファイナル」でシングルマザーになって登場するので、新作を見る予定の人はしっかりチェックしておいてほしい(演じる俳優は別人)。「いい人と付き合うと、いい人間になる」というセリフがいい味を出している。
CH-7でストーリーはようやく動き出す。アポロの対戦相手がケガをして、チャンピオン側は急遽代役を探すことになったのだ。アポロのオフィスは思いのほか地味。とても贅を尽くしたチャンピオンの事務所とは思えないが、低予算のため止むを得なかったのだろう。ここでは高画質が仇になって、そうしたマイナス面も見えてしまうが、ストーリーに気持ちを集中して大目に見てやって欲しい。
CH-8〜9はそんなことに関わるとは全く予想していないロッキーが、エイドリアンをデートに誘い出し、閉店後のスケートリンクで2人が過ごす展開だ。氷のひんやりした感じが伝わってくる。
かすかに流れる音楽も使い方を限定しているのがよく分かる。無駄な音楽の使用は、ストーリーへの集中を削ぐばかりか、作品を昨今のMTVのようにしてしまう。残念なことに「ロッキー4」はそうした作品の典型のような音楽の使用になっていた。音楽の使用法について印象的なものは、この後、ロッキーがタイトルマッチを受けてからの場面でも見られる。
ビッグマッチに担ぎ出されたロッキーをトレーナーのミッキーが訪ねる場面。ジムではヤクザの手足になったことを理由に冷たくあしらってきたが、ミッキーはロッキーの力になりたいと申し出る。「何を今さら!」と怒り心頭のロッキーは感情を爆発させ、思っていたことを全てミッキーにぶちまけ、家から追い出す。だが、心根の優しいロッキーはミッキーを追い、仲直りする。
仲直りの場面ではセリフは一切なく、ロングショットでとらえた2人にビル・コンティのメロディが流れるという作りになっている。曲のメロディが全てを語る演出の素晴らしさを是非感じて欲しい。
以降はタイトルマッチに向けてロッキーがトレーニングを開始。絶対無理と分かっている試合に挑むロッキーは最終の15ラウンドまで立って、自分がクズではないことを証明しようとする。
すっかり有名になった精肉所でのトレーニングや、夜明けのフィラデルフィアの街並みでロードワークする場面など素晴らしい場面が続き、クライマックスの試合まで全く目が離せない。
画質全体の印象でいえば、最新作に見られるような高密度/高画質というわけではないが、DVDと比較すればその画質の向上には誰もがあ然とするだろう。Blu-ray Disc版を見た後では「DVDはここまで悪かったか?」と思わざるを得ないのである。
4月6日に発売されるアルティメット・エディションのDVDはハイビジョン・マスターが使用されているので、ある程度のクオリティアップは期待できるが、旧版のDVDはもはや視聴には耐えがたいものになってしまった。
今後、全シリーズのブルーレイでのリリースを期待したいのは自分だけではないだろう。Blu-ray Disc版で残念なのは特典映像が全く収録されていないこと。これはアルティメット・エディションに商品価値を持たせる為の戦略上、どうしようもなかったことなのかもしれないが、大容量を誇るBlu-ray Discを一般に認知させるためにも、早めに特典面での充実も考えてほしい。
しかし、往年の名作をこのクオリティで、ホームシアターで楽しめるようになったということは驚きを通り越して、ただ感動するばかりだ。DVDで刷り込まれた映画の印象を一変させるBlu-ray Discの高画質を是非、自身の目で確認してもらいたい。
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