RB-51のような高効率スピーカーを使用するメリットは、まず出力の小さなアンプでもキッチリ鳴ってくれること。金属製の振動板は、より少ない振幅で効率良く空気を揺らすため、アンプのボリュームを絞っても、情報の損失や歪みが少ない。今回はヤマハのプリメインアンプ「AX-497N」と組み合わせてみたが、ボリュームを3分の1以上回す必要は感じなかった。周囲が気になる集合住宅や夜中の音楽鑑賞にも適したスピーカーといえそうだ。
指向性は少し強め。今回は大きめのスピーカースタンドを2メートルほどの間隔で設置したが、しっかり定位させるには左右のスピーカーを少し内側に向けたほうが良い。これもホーン型の特性の1つであり、小型ながらもそれがよく分かるスピーカーだ。スイートスポットは狭めだが、そのぶんハマると気持ちいい。
さて、肝心の音はというと、小さな筐体から受けた印象は良い意味で裏切られた。クリプシュスピーカーは、基本的にはビビッドでストレート、パワフルなどと形容されるアメリカンサウンドで、RB-51も例外ではない。しかし、だからといってソースを選ぶことはない。たとえば「RHAPSODY IN BLUE」では多彩な楽器をしっかり描き分け、また、最近お気に入りのCeltic Woman 「ニュー・ジャーニー〜新しい旅立ち〜」(DVD)や、Ann Sally「Hallelujah」では、伸びやかな歌声にレンジの広さを感じさせた。
とくに印象的なのが管楽器――つまりラッパ系の音だ。ホーンスピーカーは、形状から想像できるように管楽器との相性が良いといわれるが、実際に聴いてみると、その意味がよく分かる。たとえばMatt Bianco 「Gran Via」のソロ部分など、トランペットやサックスの音はかなり生っぽく響く。これなら、クラシックやスローなジャズナンバーを“ねっとり”と聴きたいときにもしっかり応えてくれるだろう。
特徴のあるユニットを使用したスピーカーは、音にも得手不得手が現れがちだ。実はレビューの前にヤマハの視聴室で新しい「リファレンスシリーズ」の一気試聴をさせてもらったのだが、フロア型の「RF-82」などにはその傾向が見られた。つまり、管楽器の音に拍手したくなる一方で、たとえばピアノの音は響きにくく少し引っ込みじあんな印象。うまく使いこなすには相応の機材や知識が求められそうで、正直なところマニア向きっぽい敷居の高さを感じていた。
しかし、RB-51に関して同じ評価は当てはまらない。幅広いユーザー層にアプローチするためにしっかりとチューニングされ、全体にフラットな特性に近づいた印象だ。前述の「RHAPSODY IN BLUE」でわかるが、ピアノにも苦手意識は感じさせなかった。もちろん、サイズとのトレードオフになる低音の量感や迫力はフロア型に及ばないものの、低域も一定の場所ですっぱりと切られる印象ではない。それでいてホーンスピーカーの良いところは十分に味わえる。
実際のところ、実売5万円前後(2本セット)という価格でホーンサウンドを楽しめるスピーカーはほかに存在せず、ある意味「RB-51」は貴重だ。ピュアオーディオの入り口としても十分な実力は、サイズや価格に合わない贅沢な時間を提供してくれるだろう。
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