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ドルビーに聞くハイビジョンホームシアターの現状(前編)(1/2 ページ)

» 2007年06月13日 19時05分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 Blu-rayやHD DVDのハイビジョンパッケージソフトが徐々に増加し、そろそろ“次世代DVD”という呼び方が不自然に感じられる状況になった。“買い控え”の気配が続いていたプレーヤー/レコーダーやAVアンプにも新製品が登場し、AVシステム買い替えを狙っている人にとって、夏のボーナスシーズンは良いタイミングになるかもしれない。

 ただし、ハイビジョンパッケージソフトの再生を前提にすると、サラウンド環境もDVD時代とは変わる。オンキヨーやパイオニアが新サラウンドフォーマット対応デコーダーを搭載したAVアンプを相次いで発表するなど周辺環境は整いつつあるが、実際にはどのように変わるのか。ハイビジョンソフトが採用する新サラウンドフォーマットと再生機器の現状について、ドルビーラボラトリーズインターナショナルサービスインク日本支社の統括ディレクター、松浦亮氏に話を聞いた。

photo ドルビー日本支社の松浦統括ディレクター。リニューアルしたばかりの同社内試聴室で撮影

――まず、改めてBlu-rayやHD DVDに対するドルビーのアプローチを教えてください

 ドルビーでは、次世代DVDに対して3つの技術を提供しています。「Dolby Digital」「Dolby Digital Plus」、そして「Dolby TrueHD」です。われわれは、この3つをBlu-ray/HD DVDの両フォーマットに対する“オーディオツールボックス”と考えています。

 つまり、制作サイドに“工具箱”を手渡したようなもので、(ハイビジョンパッケージソフトの)商品企画に合ったものを選んで使ってもらう。もちろん、ハイクオリティなTrueHDを使ってほしいのは山々ですが、選ぶのはディスク制作者です。どのコーデックもクオリティには問題ありません。

――なぜ複数のコーデックが必要になるのでしょう

 カバレッジを広く取るためです。大容量が特徴の次世代DVDとはいえ、ハイビジョンデータを扱うわけですから、ことオーディオに関しては潤沢なエリアがあるわけではありません。

 たとえば、映画好きの人たちの中には“本編命”で、とにかくクオリティの高い映像を求める傾向があります。しかし、市場を支えているのはマニアだけではありません。一般の人たちの中には“特典映像”に大きなバリューを感じる人もいます。クオリティがハイビジョンソフトの生命線であることは間違いありませんが、一方で商品としてのバランスを取ることも大事でしょう。

photo 各サラウンドフォーマットのカバレッジ

 ディスクの容量は決まっていますから、音声も単純に(非圧縮の)リニアPCMを入れれば良いわけではありません。あるいは制作者の意図として、オーディオを抑えて画質を優先することがあるかもしれません。われわれが提供する3つの音声符号化技術は、それぞれ持ち分があります。そして制作者は、用途に応じてさまざまなオプション(選択肢)を採用できる。これが複数のコーデックを提供する理由です。

日本ではDolby Digitalの真価が知られていない

――それぞれのサラウンドフォーマットがカバーする領域を教えてください。また従来のDVDと比べ、どのように変わるのでしょう?

 Dolby Digitalは、Blu-ray、HD DVDの両フォーマットで必須のコーデックとなっています。DVDがベースになっているHD DVDでは、DVDと同じ5.1ch/448kbpsまで利用できます。一方のBlu-rayではDolby Digitalフォーマット上の上限となる5.1ch/640kbpsまで使えます。

 DVDでは、採用している記録フォーマット(MPEG-PS)の制約により最大ビットレートが制限されていたため、Dolby Digitalのフルスペックはサポートできていませんでした。海外ではD-VHSのパッケージソフト(Dシアター)で最大576Kbpsをサポートしていましたが、日本では体験するチャンスがほとんどありません。それがBlu-rayでは利用できるようになります。

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