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約2万カットの人生を持ち歩く――「Cyber-shot DSC-G1」の開発者に聞く永山昌克インタビュー連載(1/3 ページ)

» 2007年06月25日 09時00分 公開
[永山昌克,ITmedia]

 最近のコンパクトデジカメは、どの製品も似たり寄ったり……。そんな声をときどき耳にする。携帯性に優れた薄型軽量ボディに、高画素CCDと大画面液晶を搭載し、シャッターを押すだけでそこそこきれいな絵が撮れる。気軽にスナップ写真を撮るためのカメラとしては、確かにどれを選んでも実用性十分の性能がある。

 だからといってコンパクトデジカメが停滞しているとは思わない。新しい技術や機能を盛り込む余地はまだまだあり、これからますます進化を遂げるだろう。そう感じさせる新発想のコンパクトデジカメのひとつが、4月に発売されたソニー「Cyber-shot DSC-G1」だ。

photo ソニー「Cyber-shot DSC-G1」

 最大の特徴は、約2Gバイトのメモリを内蔵することで、VGAサイズの画像を最大約2万カット保存でき、3.5型約92.1万ピクセルの大画面モニターによって写真を美しく表示できること。「撮る」だけでなく「見る」ことにこだわったデジカメが最近増えているが、その最右翼の存在といっていい。

 DSC-G1にはどんな目論見があるのか、開発者にインタビューした。話を聞いたのは、商品企画を担当したソニー デジタルイメージング事業本部 パーソナルイメージング事業部 商品企画部 商品企画課 合田大輔氏と、設計のプロダクトマネージャーを担った同社 デジタルイメージング事業本部 パーソナルイメージング事業部 設計3部 1グループ グループマネジャー 判治享氏、本体のインダストリアルデザインを担当した同社 クリエイティブセンター コンスーマープロダクツデザイングループ PIデザインチーム シニアプロデューサー 石井大輔氏の3人だ。

photo 左から、商品企画の合田大輔氏、開発担当の判治享氏、デザイン担当の石井大輔氏

これまで眠っていた写真を持ち歩いて楽しむ

――Cyber-shotには、現在の主力といえる薄型スタイリッシュ路線のTシリーズのほか、WやH、N、Rなどコンセプトが異なる複数のシリーズがあります。新シリーズ第一弾となる「DSC-G1」の位置付けとターゲットを教えてください。

合田氏: 当社では1996年からデジカメを発売し、初期のころは新しいモノに飛びつくアーリーアダプタと呼ばれる人たちに特に好評を得ました。その後、購入層は徐々に変化し、今ではごく一般のユーザー、または銀塩時代からカメラに親しんでいた人たちに移行しています。もはやデジカメは成熟期に入り、コモディティ化が進んでいるといえます。新しい機軸で市場を開拓しなければ、この業界も厳しいのではないでしょうか。

 DSC-G1は、初期のデジカメユーザーのような、新しいモノ好きの人たちに、もう一度目を向けた製品です。画素数競争など、これまでは線のラインで見てきた競争領域に対してひとつ逸脱し、新たな市場を開拓するためにソニーとして提案できるものは何か。そんなテーマがあります。そのため、一般ユーザーにとっては少し難しく感じる機能があるかもしれませんが、それを面白がり、商品の魅力だと感じていただける人たちをターゲットにしています。

判治氏: 当社には、カメラの技術だけでなく、画像の検索や解析、液晶表示、音声や動画、ソフトウェア、ネットワーク関連など、社内のいろんな場所にいろんな技術があります。そうした様々な技術を出し合って集約させたのが、このDSC-G1です。開発スタッフは、これまでのデジカメのグループだけでなく、旧VAIOの開発メンバーを加えた構成でした。従来のほかのCyber-shotに比べて開発期間はやや長かったですが、3.5型パネルの搭載、ネットワーク接続、大容量メモリなど、当初からあったテーマはほぼすべて実現できました。

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