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パナソニック「TH-42PZ700」に見るプラズマの進化フルハイビジョン42V型(1/2 ページ)

» 2007年07月30日 18時37分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
photo 「TH-42PZ700」

 パナソニックの「TH-42PZ700」は、プラズマテレビとしては初の42V型フルハイビジョンモデルだ。50インチ以下ではフルハイビジョン化が難しいとされたプラズマ方式にあって、他社に先駆けてフルハイビジョンを実現している。今回は製品を実際に触らせてもらいつつ、プラズマパネルと画質に着目して話を聞いた。


 数年前まで、薄型テレビは「37型以上の大型がプラズマ、それ以下は液晶」といわれたものだが、液晶パネルの大型化・高精細化が急激に進み、プラズマの領域は浸食されてきた。そんな状況の中、リビングルーム需要の主戦場となった40型クラスに投入されたのが同機だ。「昨年、50V型にフルハイビジョンとハイビジョンの2製品をラインアップしていましたが、“圧倒的”に近いくらいフルハイビジョンのほうが売れました。ただ、サイズ的に“42V型がほしい”という要望も多かった」(同社コミュニケーショングループ広報チームの山口耕平氏)。

 では、なぜ今まで50V型未満のフルハイビジョンプラズマパネルが存在しなかったのか。プラズマテレビは、2枚のガラス板の間に高圧の希ガスを封入し、高電圧をかけて蛍光体を発光させる仕組み。パネルはRGBの蛍光体を閉じこめた微細な部屋(セル)を壁(リブ)が仕切る構造で、まるで横から見た大規模なマンションのようだ。そして、従来のハイビジョンパネルは約100万画素だが、フルハイビジョンになると約207万画素。同じ面積に倍以上の“部屋”を作らなければならない。

 「フルHDパネルは、XGAパネルに比べて2.6倍の密度。部屋を隔てる壁(リブ)の厚さが同じでは、輝度は半分になってしまいます」

photo 発表会で公開した42V型フルハイビジョンパネルの概要

 夜になってマンションの窓に明かりが灯った様子を想像してほしい。部屋が小さくなったとき、窓と窓の距離が同じままでは、1つの窓が随分と小さくなることが想像できるはずだ。窓の数が倍になっていても、全体としては暗く見えてしまう。テレビの場合、輝度が低下して暗い画面になると同時にコントラスト性能など画質に関わるさまざまな点で不利に働く。

 「昨年、50V型を開発したときは、それまでの技術を進歩させれば実現できることが見えていましたが、同時に42V型をフルハイビジョン化するには、それだけではできないということも見えていました。もう1つのブレークスルーが必要だったんです」

 技術的なポイントは、大きく分けて2つ。リブの狭幅化と、より微細になったセルを安定して駆動する技術だ。リブに関しては、材料を変えるとともに、従来の半分以下の面積に蛍光体をヌケなく塗布する技術を開発。さらに焼成プロセスも変更するなど「構造から刷新した」という。「開発は、最初から“高精細”で、そのほかの(画質の)要素は“従来の42V型(WXGA機)と同等”を目指していました」。

 もう1つの“セルの安定駆動”は、画質にも大きく影響する部分だ。すべての画素をヌケなく発光させることはもちろん、微細化によって不足する明るさを補うため材料から見直し、より高速にパネルを駆動させる方法を模索した。

 「プラズマテレビはサブフィールド駆動のため、表示時間によって輝度を稼ぐことができます。1つの画面を表示する60分の1秒の中で、光る時間を少し長くすればいい。ただ、そのためには処理速度を上げる必要があった」

 予備放電(種火)のレベルを上げれば話は早いが、それでは黒が浮いてしまう。このため60分の1秒の中でセルに与える電圧の推移を示す“波形”を変えているという。詳細を聞くことはできなかったが、「今までとは違う考え方が必要だった」という。結果として、従来の42V型と同等の輝度とコントラスト比(4000:1)を実現。最大16ビットの信号処理などと合わせ、色域についてはHDTV規格(ITU-R、BT709)を100%カバー、apdc方式の動画解像度は900本というスペックになった。

 「パネルの駆動技術については、“リアルブラック駆動方式”という名称が変わらないため、あまり新しくなった印象を受けないかもしれません。しかし、実は製品ごとに着実にアップデートを重ねています」

photophoto 背面端子。3つのHDMI端子のうち、1つを前面に設置している
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