ITmedia NEWS >

次世代DVDのレンタルは?LifeStyle Weekly Access Top10

» 2007年08月06日 19時06分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 先週の1位は月イチ連載「デジタル閻魔帳」。今回の取材は麻倉氏が平素、画質や音質のチェックをしている氏の自室で行ったのだが、ここには常に最新のAV機器やタイトルがそろっているので、ここへお邪魔するのはひそかな楽しみだったりもする。目下の悩みは、豊富になってきたBlu-ray Discの新作をチェックする時間がなかなかとれないことだとこぼしていたが。

 さて、Blu-ray DiscとHD DVDのいわゆる次世代DVDだが、映像や音声が素晴らしいと聞くと一度は体験したいと思うのが人の常。家庭用ゲーム機という安価な再生環境が提供されていることもあり、一度は試してみたいと思うひとも少なくないはずだが、実際のところ、プレイステーション3を持っている人にBlu-ray Discの作品を持っているか聞いてみても、あまり持っているという人に出会わない。

 小寺氏が以前、「次世代DVDが起爆しない5つの理由」というコラムの中で、レンタルの果たす役割に言及していたが、筆者も共感できる。DVDビデオというパッケージが登場し始めたころ、大手レンタルチェーンでは(店舗によっては再生機も)レンタルを積極的に行っていた。初めて見たDVDタイトルがレンタル店で借りてきたものだったという人も多いはず。

 ではなぜ、次世代DVDのレンタルが日本では開始されないのだろう。7月には大手チェーン店のTSUTAYAが九州にオープンする新店舗でBlu-ray Discのレンタルを開始するという報道があったが、これは同社が否定している。

 タイトルをリリースする映画会社からすれば、確かに販売(セル)のほうが利益が確保できるので望ましいようにも思えるが、大手チェーンなどがレンタルを開始すれば大量にレンタル用パッケージを購入してもらえるはずなので、「数量を出荷できる」という観点からすればセルでもレンタルでもさほどの差はないはずだ。権利処理についても、次世代DVDだからといってさほどの困難があるようには思えない。次世代といっても、DVDと同じくディスクメディアに納められた映像作品であり、事実、アメリカでは既にレンタルサービスは開始されている。

 「次世代」というプレミアムを保ちたい映画会社側の意向かとも思っていたが、とある筋から興味深い話を聞いた。「既にDVDだけで販売店の棚を奪い合う状況で、DVDに比べ再生環境の整っていない(見られる人の少ない)次世代DVDを置いておくスペースはない」というのだ。

 確かにそうかもしれない。大手量販店の映像ソフトコーナーに足を運んでも、DVDに比べ次世代DVDのコーナーはまだ小さい。これまではタイトル数に起因すると思っていたが、「売れない商品は棚に置かない」という販売店の大原則はレンタル店にも共通するはずで、見られる人が少ない商品はその露出も自然と少なくなってしまう。現状下で次世代DVDのレンタルを開始しても、「回転しないタイトルを並べたくない」という心理が店舗側に働くことは容易に想像できる。

 「棚」の問題を裏付けるかのように、オンラインのレンタルサービス「TSUTAYA DISCAS」や「DMM.com」ではHD DVDのレンタルが行われているが、タイトル数は非常に少なく、ラインアップも環境映像が中心。とても魅力的とは言い難い。これではユーザーを引きつけるのは難しいだろう。

 ただ、このままでは、ゲーム機などで再生環境を持ち、次世代DVDパッケージに興味があっても、数千円出してパッケージを買うほどではないというライトな層はいつまでも「次世代の体験」をすることなく、市場は活性化しない。まだDVDと次世代DVDがどのような住み分けを行っていくのかも不透明ではあるが、次世代DVDパッケージ定着のため、まずはレンタルを通じてでも、体験してもらうことが肝要だと思うのだが、どうだろうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.