前回までのあらすじ――盛夏を目前に控えたある日、丸の内の編集部に届いた荷物。MP3プレーヤーとヘッドフォンに見えたが、実は悪のロボット生命体「サウンドウェーブ」と「フレンジー」「ランブル」だった! 偶然ながら居合わせた新米編集部員Yの辿る数奇な運命とは……
銃のようなものをゆっくりとこちらへ向ける白いロボット。銃のように認識できると言うことは、何かがその先端から飛び出してくるのだろう。ぎくしゃくとしていた動きもいつしか滑らかになっており、その右手に持たれた銃の先端は、鋭利な刃物のようにこちらを静かに見据えている。
オフィスにいるはずなのに、あり得ない静寂があたりを包む。ただ、静かなはずなのに何かが直接頭へ飛び込んでくる。頭が割れそうだ。声を出して助けを求めようにも、まぶたひとつ動かせない。きっと周りからは静かに書類へ向かっているようにでも見えるだろう。自分1人だけが耳を持つ生き物のような奇妙な静寂の中、思わぬ方向からその静寂を破る何かが表れた。
「トラック?」
Yの視界に静かに滑り込んできたのは、白亜のコンボイトラックだった。確か隣席の先輩が昨日梱包を解いていたっけ、そんなことを自分の記憶ではないような違和感を覚えながら思い出していると、その白いトラックはサウンドウェーブと自分の間にはいるような位置で静かに停止した。
「君はデストロンの洗脳音波にさらされている。利用していると音楽を収集したくてたまらなくなるという、謎の白いプレーヤーと白いイヤフォンが流行しているというので調査していたのだが、どうやらそれは音楽の名を借りたデストロンの地球人洗脳計画だったようだ」
矢継ぎ早にトラックから声が響くと、トラックの荷台が展開した。どうやらスピーカーのようなものが積み込まれている。
「だが、これでもう大丈夫だ。このスピーカーには洗脳音波をから人々を解放する力がある。“私にいい考えがある!”と開発させたのだがね」
どこか自慢げな、しかし確固たる自信に裏づけされた揺るぎない精神力を感じさせる声が響く。
――トランスフォーム!――
白いトラックは一瞬のうちにロボットに変形する。
「私はサイバトロン総司令官、コンボイ。洗脳作戦もここまでだ!」
(C)1985 2007 TOMY
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