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フラッシュの小技脱フルオートの道 第10回

» 2007年09月12日 18時22分 公開
[小山安博,ITmedia]

 夜、夜景をバックに恋人を撮りたい。しかし、そのままシャッターボタンを押して撮影しただけでは恋人の顔が真っ暗になってしまう。そんな時にはフラッシュだが、やみくもに使えばいいと言うものではない。

フラッシュのメリットとデメリット

 前述のような暗い場所の撮影で一番やりがちなのが「フラッシュをたく」という方法だ。暗い=光が足りないのだから、強制的にフラッシュをたいて明るくすればいい、というのは道理だが、フラッシュにはメリットとデメリットがあるので、うまく使い分ける必要がある。

 ブツ撮りの回でも紹介したとおり、フラッシュはカメラのレンズ付近に取り付けられた発光部から一瞬光を発して被写体を明るくするための仕組みだ。被写体に向けたカメラからまっすぐ光が発生するので、暗い場所で人を撮るときには顔がきちんと明るく写って便利に使える。

photo フラッシュの光が強すぎた例。手前の人物が白飛びしている

 しかし、その光が強すぎることがある。ろうそくのような小さな暖かい色がフラッシュの光で打ち消されてしまい、実際はオレンジに染まった彼女のほおが白く写ってムードがなくなったり、顔の凹凸や背景に強い影が出てしまって立体感がない写真になったり、写真としてはあまり見栄えのしないものになってしまいがち。また、肌の色が白飛びしてしまい、まるで異常に顔が白くなるなんてこともある。

 さらにフラッシュは一瞬の発光なのであまり遠くまで光が届かない。一般的なコンパクトデジカメでは、フラッシュの届く距離はせいぜい数メートル。被写体がその範囲内にいればいいが、それより後ろにある背景は全く写らないで真っ暗、ということはよくある。せっかく恋人と美しい夜景を一緒に撮りたいのに、これではつまらない。

 そういうときに使えるのが、シャッタースピードを遅くすることによってフラッシュの光を前景/背景に行き渡らせる「スローシンクロ」だ。

 最近のコンパクトデジカメだったら「夜景&人物」とか「ナイトスナップ」などといった名称でスローシンクロを行うモードが用意されていることが多いので、それを選ぶと、フラッシュを発光させつつシャッタースピードが遅くなってくれる。ただ、フラッシュがたかれた後もシャッターが切れるまでは多少のタイムラグがあるので、その間に被写体が動かないように、さらに手ブレしないように注意しよう。

 富士フイルムが「FinePix」の一部製品で実装しているよう、シャッタースピードを遅くするかわりにISO感度を上げて取り込む光の量を増やし、背景も明るく写そうという手法もあり、自分のカメラの設定をチェックしておくといい。

 なお、散見されるフラッシュ利用時の失敗に「赤目」がある。人間の目は、暗所だと光を多く取り込むために瞳孔が開く。そこにフラッシュの強烈な光が入り込むと目の中の毛細血管が写ってしまい、瞳孔が赤く写る現象だ。カメラのフラッシュの設定には「赤目軽減」のような設定があるので、「よく赤目になる」という人だったらこれを使った方がいいかもしれない。

 フラッシュをたいたら立体感がなくなった、雰囲気が出なくなった、そもそもフラッシュを使えない場所だった、といった場合は、高感度撮影をするといい。感度を高めることで多少画質は低下するが、最近のデジカメは高感度時の画質もよくなってきているので、こちらを使うのも手だ。

 もちろん、フラッシュのメリットもある。

 暗い場所ではなく、逆に明るいところで使えるのもポイントだ。特に背景が明すぎてしまい、被写体の顔が暗く写ってしまう逆光時など、フラッシュをたくと背景の明るさを残して被写体を明るく写せる。これが「日中シンクロ」と呼ばれるテクニックだ。

 また、フラッシュの強い一瞬の光が、瞳の中に写り込む「アイキャッチ」も定番の手法。これを使うとイキイキとした表情を演出できる。そのほかにも、くもりの日や雨の日は色がくっきりと出ない、いわゆる「眠い」写真になりがちだが、それもフラッシュを使えば解消できる。

 このように、フラッシュは使い分けをしっかりすると重宝する機能だ。単純に暗いから使うのではなく、現在の状況に応じて使い分けるといい。

 ちなみに、よく野球などのスポーツで観客席から大量のフラッシュがたかれることがある。フラッシュの到達距離はせいぜい数メートルなので、数十メートルも離れた選手にはまったく届かず、あまり意味はない。それどころか競技者にとってはまぶしいだけので注意しよう。

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