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もはや人ごとではない――MIAUに込めた想い小寺信良(2/3 ページ)

» 2007年10月22日 10時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 ただ現実のMIAUは生まれたばかりで、メンバーはまだ11人しかいない。生まれたての子猫と同じで、強くぶん殴られたら死んでしまう。

 なぜこんな脆弱な体制で始めなければならなかったかと言えば、30条改正とダウンロード違法化に対するパブリックコメント募集が、すでに10月16日からスタートしたからだ(「文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理」に関する意見募集の実施について)。みんな、このことはちゃんと知っていただろうか。

 政治の世界ではいつの間にか、「Webに載せた」だけで、広く周知は行なったという風潮になってきている。見つけてくるのはおまいらが勝手にやれ、というわけである。だからその周知を代行する組織もまた、必要だ。本当ならエラい人を沢山集めて組閣して、最初から体制を整えた上での船出が望ましかった。だが時間的余裕はあまりない。パブコメの締め切りまで、もう1カ月を切っているのだ。だから脆弱ながら即、発足することにした。

photo 10月18日に行われたMIAU設立会見より。左から筆者、法政大学の白田秀彰准教授、IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏

MIAUのミッション

 設立してしばらくの間、MIAUはボランティアとして頑張る。まずはその期間に、我々の活動がどれぐらい消費者に支持されるのかを計らなければならない。おおむね支持されるようであれば、それ以降法人化するのかどうなのか、考える必要があるだろう。

 ボランティアベースならば人件費はかからないが、現実にはサーバ代もかかっているし、ミーティングすれば場所代もかかる。物理的活動には、だいたいお金が必要なのだ。そういうものは、メンバーの持ち出しでやっている。

そして当面のミッションは、以下の3つである。

1.違法サイトからのコンテンツダウンロード違法化への反対

2.コピーワンス及びダビング10技術の採用に対する反対

3.著作権の保護期間延長に対する反対

 もっとも差し迫った問題は、1である。この問題については、津田氏がITmediaのインタビューに答えている(「ダウンロード違法化」のなぜ ユーザーへの影響は)ので、その記事が参考になるだろう。

 そして忘れてはならないのが、この問題の先には、補償金の是非を含めた議論がある。今回の法改正案が進行するような事態になれば、当然補償金もそれに対してくっついていく。現状維持どころか、適用範囲を拡張する下地になるだろう。

 補償金問題、特に「私的録音録画小委員会」が発表した中間整理に関しては、10月18日にJEITAが声明を発表し、反対の意向を示している。JEITA側でもパブリックコメントを集めて提出する意向のようなので、結果的には我々と同じ方向性で共闘する格好になるかもしれない。

 これまで消費者は補償金問題に関して、メーカーと権利者の綱引きをただ傍観するしかできなかった。結果、メーカーは負けたのである。だからパブコメというステージではこの綱引きに参入し、メーカー、権利者、消費者の三方綱引きに持ち込まなければならない。

 2に関しては、その問題点を以前コラムにまとめたことがある(「1世代コピー9th」では誰も幸せになれない)。これをベースに、論理武装していくことになるだろう。またこの話をどこへ持っていけば効くのか、それも探っていくことになる。

 3に関しては、すでに「著作権保護期間延長問題を考えるフォーラム(Think C)」にて、経済学的にも法的にも論理武装は完了しつつある。MIAUとしては、発起人メンバーのうちオジサン3人組がThink Cの発起人でもあるため、これと考えを異にすることはないだろう。むしろThink Cのそうそうたる発起人メンバーに、我々のほうが協力を仰ぐことも有り得るかもしれない。

 またこれ以外にも、今後我々が扱うべき問題が出てくるだろう。それらはネットの意見を探りながら、また協力者の意見を汲みながら、方向性を打ち出していくことになる。

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