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れこめんどDVD:「スパイダーマン トリロジーBOX(Blu-ray Disc)」DVDレビュー(2/2 ページ)

» 2007年10月26日 09時15分 公開
[飯塚克味,ITmedia]
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「スパイダーマン3」を細かくチェック

 CH-1では、まずコロムビア映画の象徴である女神の姿に驚かされる。これまでにもDVDで何度となく細部の表現が増した姿は見てきたが、これほどしっかりとディテールが見えた記憶はBlu-ray Discがこれだけ出ている現在でも記憶にない。メインタイトルは旧作の映像をテンポよく見せていく作りだが、映像がちょっと色褪せている感じがなかなかいい味を出している。テロップの消え方に一部サンドマンを思わせる砂をイメージした部分があるのだが、粒子感がこれから見る本編のクオリティを予感させるものになっている点も心憎い演出だ。

 CH-2ではニューヨークの街並みを自在に飛び回るスパイダーマンの様子から始まる。街並みの映像はハイビジョンならではの高画質。大画面で見れば見るほど立体感が増してくる。CH-3はピーターの恋人MJの舞台の様子が描かれる。背景の星空が魅力的。黄色や白、青、赤など様々な色の星が判別できるはず。また輝きも増減があり、舞台装置の見事さに感心した。

 CH-5ではピーターとMJが夜の公園でデートする場面。木の上に糸を張ってそこに横になっているのだが、アップシーンになると糸の方にどうしても目が行ってしまう。とてもピーターの腕から飛び出したような細いものではないからだ。これは高画質ならではの弊害だ。

 CH-6は悪役マルコの登場シーン。刑務所を脱獄し、家族のいるアパートにやってくるのだが、ドアの傷んだ様子や、壁紙の粗悪な質感が暮らしぶりを伺わせる。色褪せた冷蔵庫のドアも悲哀感充分。個性派の映画監督ケン・ラッセルの夫人、テレサ・ラッセルの疲れきった雰囲気もBlu-ray Discならより味わえる。

 CH-7で、ピーターはメイ伯母さんを訪ねる。前作で住宅ローンを払えず、本作ではアパートに移っているがマルコの家族よりはまともな生活を送っているのが分かり、ちょっとホッとした。ここでメイ伯母さんはピーターにMJのための指輪をあげるのだが、新品ではない独特の感じも認識できた。

縦横無尽に駆け巡る音、そしてサンドマンの質感もBlu-ray Discならでは

 CH-8は帰宅途中のピーターを復讐心に燃えるハリーが襲撃する場面だが、サラウンドが大活躍!ハリーが乗っているボードのエンジン音が迫力いっぱい。縦横無尽な方向感も凄い。またナイトシーンにも関わらず、薄っすら浮かぶ雲や、街の様子が明確で、実にメリハリのある映像になっている点も素晴らしい。

 CH-9でマルコは逃走中に物理実験場へ紛れ込み、砂状の怪物サンドマンに変貌してしまうのだが、実験の機械の重低音がド迫力。前作でドックオックが核実験をした場面を彷彿とさせる。

 CH-11でサンドマンになったマルコが登場するが、この映像の素晴らしさはDVDでは絶対味わえないレベルになっている。VFXスタッフが入念に作り上げた砂の一粒一粒の質感は是非Blu-ray Discの高画質で見るべきものとなっている。

 CH-12では舞台の批評に落ち込むMJとピーターのすれ違いが描かれるが、部屋にいつの間にか侵入していたヴェノムの“ダルマさんが転んだ”状態が笑える。もちろん芝居を撮影している時は存在しなかったものだが、実に自然に映像に溶け込んでいる。

 CH-14は前半の見どころのひとつ、グウェンが大ピンチに陥る場面だ。建設中のクレーンが操作不能になり、たまたま近くの建物で撮影されていたグウェンのフロアが破壊され、落下しそうになってしまう。当然スパイダーマンが救出に来るのだが、合成だらけのこのシーンにそうした雰囲気が微塵も感じられないのが驚異的だ。余談だが、第1作ではスパイダーマンが実物からCGに切り替わる瞬間がBlu-ray Discだと結構分かってしまうのだが、この第3作ではそうしたことがまずない。

 CH-20ではそんな活躍を続けるスパイダーマンが名誉市民として表彰される。エキストラを大勢使ったモブシーンだが、群集はもとより、背景の木々の葉っぱまでしっかり見えてしまう。情報量の圧倒的な分量に潰されてしまいそうな気すら起きてくる。

 CH-21からはサンドマンとスパイダーマンの第1ラウンド。現金輸送車を巡る戦いだが、見れば見るほどサンドマンのディテール表現にあ然とさせられる。スタッフは粒子単位でサンドマンを創造していったそうだが、その成果を存分に感じられた。VFX映像は数年経って見返すと残念に感じることもあるものだが、この映画に限ってはそれは当てはまらないかもしれない。

 映画はこの後、ヴェノムに乗り移られたピーターが別人化したり、一度は記憶喪失に陥ったハリーが再びピーターを殺そうと画策したりと目まぐるしい展開を見せ、あっという間にエンディングを迎える。クライマックスの超人大決戦では街中を舞台に、これほどの映像が作れるのか?と思わずにはいられないはずだ。

特典もHD収録

 特典は本編ディスクに2つの音声解説とNGシーン集、ミュージック・ビデオなどを収録。特典ディスクには11種類のメイキング・ドキュメンタリーを収めている。「まずは砂の動きの研究から始めた」とスタッフが語る「砂の粒:サンドマンの誕生」や、スタジオにどのようなセットを組むか苦心した様子が汲み取れる「ぶら下がる!グウェン・ステージと崩壊するフロア」などどれも楽しめるものばかり。

 特筆したいのが、これらのメイキングがすべてHD画質で収録されたことだ。Blu-ray Discで本編を見た後だと、SD画質の特典はどうしても見劣りしてしまい、出来不出来に関わらず、見る気が失せてしまうことも少なくはない。2枚組でのリリースはメーカーにとっても大変なことだろうが、今後もできる限り実現してもらいたい。

劇場での感動をBlu-ray Discに凝縮!

 先に述べたように映画としては100%完全ではない本作だが、それでも今年最も見るべき映画の1本である事実は誰もが認めるところだろう。劇場での感動をそのまま所有できるBlu-ray Discのようなメディアがこのように本腰を入れた形でリリースされたことは、正に映画ファンにとってたまらない出来事だ。つくづくこの時代に生まれて幸運だったと感じた。

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