もちろん、精度が高いだけでなく、調整の自由度もアナログ並に高いことが要求された。
セーヌ2には全部で5つものCPUが内蔵されている。1個はシステム全体を管理するプロセッサで、2個はオーディオ処理用、MPEGデコーダに1個、デコーダのタスク管理などを行うコントローラが1個だ。
このうちデコーダ部に統合されているCPUが、各種ヒストグラムなど、映像の特徴を検出するために必要と思われるあらゆる情報を抽出している。当時から4年間はソフトウェアの更新だけで進化できるよう、また考えられる限りすべての切り口で特徴を抽出できるように工夫されていたのだ。
たとえばセーヌ2は、輝度ヒストグラムだけでなく、特定の色相範囲にある画素のみのヒストグラムを取ることができる。これは後にZ2000において、肌色がどの輝度レンジに分布しているかを検出するために使われたが、映像の特徴抽出評価を行う上で有効と思われる情報をあらかじめ洗い出し、そのすべてを実装すべくLSIを設計しているところに“東芝だけ”の強みがある。
セーヌ2には、ほかにも画像内の空間周波数(画像の細かさ、先鋭度)を検出する機能を持っており、これがノイズ感を増加させず、ディテールのみを適切に拡張する処理へとつながっている。
東芝はLSIに使われているトランジスタ数を公開していないが、セーヌからセーヌ2への進化でトランジスタ数は2.5倍もの規模になった。呆れるほど大規模なチップの開発に、当時は家電向けとしては使われていなかった最新の90ナノメートル製造プロセスまで投入し、巨大なLSIの実用化を行ったほどだ。なにかとコストが優先される家電業界では珍しいLSIである。
こうしたLSIが生まれた背景にあるのは、高画質なテレビを作るための哲学を持った事業部の開発チームと、LSI開発を担当した東芝セミコンダクターが一体となって、次世代LSIを開発したからだ。良い絵作りに必要な機能を理解し、将来の発展性までを見据えた上で開発しなければ、ここまで高価な画像処理エンジンは出来ない。
Z1000以来、Z2000、H3000、Z3500と、常に進化してきた背景には、開発当初から将来の可能性を見据えていたからだ。だからこそ、数年にわたる機能アップ、画質アップに耐えることができているわけだ。しかも、その進化はまだ止まる様子がない。まだまだ、「メタブレイン」最大の特徴である“映像を分析しながら自動的にパネルに適した画質へと自動調整する”要素を追加するための特徴抽出データは残っている。
使いこなしの度合いが進むほど、「メタブレイン」の画質はさらに、またこれでもかと柔軟に進歩していくのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:株式会社東芝
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2007年12月18日