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「電子辞書」――3+1の進化の方向性デジモノ家電を読み解くキーワード

» 2007年11月29日 11時26分 公開
[海上忍,ITmedia]

 英単語を調べたいとき、漢字の読みを確認したいとき、故事成語の意味を知りたいとき……手元にあると便利なデバイスが「電子辞書」。進化を続けるそのデバイスの今をチェックしてみよう。

3つのカテゴリーで進化する電子辞書

 外国語の学習用に、旅行時の翻訳ツールに便利な「電子辞書」。いうまでもなく語句検索がメインの機能だが、今年発売された機種から判断すると、テレビの視聴など充実したマルチメディア機能を持つ「豪華型」、小型化とボディ剛性の向上により機動性を高めた「堅牢型」、ある用途に特化した「専門型」の3つのカテゴリーに分かれて進化しているようだ。

 11月に販売開始されたばかりのシャープ「PW-TC930」を見てみよう。液晶はカラーで4.3型、それもAQUOSシリーズにも採用されている高コントラスト/高速応答のASV型。電子辞書としての機能はいうに及ばず、内蔵したワンセグチューナーでワンセグ放送を視聴できる。手書きパッドの文字入力機能をいかした、書き取りテストなどのアプリケーションも備える。この機種は、豪華型に分類される。

photo ワンセグチューナーを搭載、音声図鑑まで収録しているシャープ「PW-TC930」

 9月発売のカシオ計算機「XD-P730A」はコンパクト型に分類できる。サイドビームとアルミ合金パネルによりボディの剛性を高めるなど、堅牢性を追求した「TAFCOT」と呼ばれる強化設計により、多少手荒に扱っても破損する心配がない。紙の辞書と同じ感覚で持ち運べるようになることも、電子辞書が進化する方向の1つだろう。

 同じく9月発売のセイコーインスツル「SR-G8000」は、エンジニアという特定職種をターゲットにした専門型だ。その分野で利用頻度の高い語句を多く収録し、日本語のキーワードで英語の例文を探す「例文検索」など、実用性が重視されている。カシオ計算機が2月に発売したXD-GW/SWシリーズも、医療関係者向けの専門型だ。

今後の鍵は通信機能かも?

 ワンセグ搭載など多機能化は出尽くした感もある電子辞書だが、まだ手つかずの機能が1つある。インターネットにも接続できる無線通信機能だ。メーカーにとっては、オプションのコンテンツカードが売れなくなるかもしれないという懸念はあるものの、通信機能の搭載は電子辞書の使い方を変える可能性がある。

 実際、先日発表された米Amazonの「Kindle」は、電子辞書ではないものの、EV-DOベースの無線通信機能により、外出先からオンライン百科事典「Wikipedia」を閲覧できることが注目されている(→電子書籍端末「Kindle」――黒船化する?しない?)。ワンセグ対応も悪くはないが、「知の充実」こそ電子辞書本来の存在価値のはず。日本の電子辞書も、通信機能の搭載は避けて通れないと考えるが……。

執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)

ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。


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