コラム
2007年12月03日 10時00分 更新

小寺信良:

目指すのは「そこそこの世界」か (1/3)

「ダビング10」が導入されれば、コピーワンスの不便さは解消されるのか。導入後に表れるのは革新的な変化がないままの「そこそこ」の世界ではあるまいか。

 今年7月に総務省情報通信委員会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」(以下 デジコン委員会)で、デジタル放送の著作権管理について、COG(Copy One Generation)の延長のままで9回ダビング+1回ムーブという方針が示された。いわゆるこれが、「ダビング10」である。

 このネーミングはJEITAが後日名付けたものだが、この10月のJEITAの発表には驚いた。JEITAはこれまで1年以上頑ななまでにEPN方式で押してきたわけだが、総務省情報通信委員会での方針が決まったとたん、わずか1カ月ちょっとでEPN方式を放棄し、COG延長路線であるダビング10に乗り換えて推進するというのである。

 以前掲載された椎名和夫氏との対談でも確認できるように、ダビング10という方針は、あくまでも暫定合意でしかない(→対談:小寺信良×椎名和夫(2)「四方一両損」を目指した議論は何故、ねじれたのか)。特に権利者団体側は、補償金とセットでなければ無効と考えている。

 おそらく補償金の話は、今後さらにこじれていくだろう。なぜならばJEITAが10月に、DRMで制限されているコンテンツは補償の対象にならないという意見を表明しており、そしてそれに切り返す形で権利者団体は、補償が得られない限りコピーワンスの緩和はないとしているからだ。

 その補償金の行方だが、肝心の文化審議会著作権分科会「私的録音録画小委員会」の中間整理では、補償金システムそのもののあり方には触れず、いきなり著作権法30条を改正して私的複製の範囲をいじる話になっている。あと2回の会合で、補償金の範囲や存続の有無を含めたあり方について、なんらかの合意が見られる可能性はほとんどない。

誰に決定権があるのか

 ダビング10というルールは、あくまでも権利上の合意点に過ぎず、補償金の話次第では白紙になる可能性が高い。さらにこのルールに対する社会的な影響というのは、これから考えていかなければならないわけである。しかし家電業界は、既にダビング10の仕様を決定し、レコーダーなどはすでに潜在的なダビング10対応のものが発売され始めている。

 もうひとつ驚いたのが、ダビング10の運用ルールである。同10月のJEITA発表によれば、従来コピー不可であったアナログ接続経由のコピーは、回数制限なしで可能になると言う。またi.LINKなどを使ったデジタル接続経由のダビングも、回数制限はあるものの、ムーブではなく複製可能となっている(JEIA、総務省情報通信審議会で提案された録画の新ルールについて:リンク先PDF)

 もちろん消費者にとって制限緩和は歓迎すべきことだ。しかしこの運用ルールは、権利者側にコンセンサスを取っての話なのだろうか。少なくともデジコン委員会では、機器からの出力に関して、このような具体的な話までは出ていなかったはずである。むしろJEITAがこうやって自分たちだけで規制緩和の方向で運用ルールが決められるのであれば、最初からそうすれば良かっただけの話ではないのか。

 コピーワンス導入のときも、消費者や権利者の代表不在のままで導入された。そしてその緩和も同じく、結局は決定の場に消費者も権利者も不在のままで行なわれようとしている。メーカー主導でどんどん決めていい話なら、総務省の情報通信委員会などいらないのではないか。いやそもそもコピーワンスなんて決めなければよかったのだ。

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[小寺信良,ITmedia]

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