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グレアとアンチグレア本田雅一のTV Style

» 2007年12月07日 19時53分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 空き時間ができると、年末商戦で熱気を帯びた家電量販店のテレビ売り場に足を運ぶ。普段は、静かで落ち着いた照明の中――つまり理想的な環境でテレビを試聴・評価しているわけだが、それだけでは見えてこない視点を、販売店やボーナスを投じて新しいテレビを購入する顧客たちは持っているからだ。

 その中で興味深かったのが、液晶テレビの表面処理に対する評価。購入にきたお客さんの話を聞いていると、映像処理や絵作り、パネル自体の性能といった側面をみて話しているようで、実際には表面処理の違いによる差を「きれい」の判断基準として、かなり多く取り入れているように思う。

 グレアとアンチグレアに関しては、以前に設置環境のことについて話したときにも簡単に触れているが(→関連記事)、今回は画面の表面処理についてさらに掘り下げていくことにしよう。

アンチグレア、グレアの違いとは?

 グレアとは“光沢”のこと。つまりアンチグレアは“つや消し”ということになる。パソコンの世界でも、グレアが良いかノングレアが良いかで意見が分かれた時期があったが、コンシューマー向けノートPCに関して言えば、ほとんどがグレアを採用している。映像や写真を見る際には、グレア処理の方がきれいに見えることが多いためだ。

photo 三菱電機の“REAL”「LCD-H52MZW75」。光沢コート(グレアパネル)を採用した

 しかし、昨年までの液晶テレビはというと、ほとんどの製品がアンチグレア処理を施したパネルを使用していた。今年も“大半は”アンチグレア処理を施しているが、三菱電機がグレアパネルを採用した(→関連記事)。また、よく見ると他社製品でも一部は光沢度を変更し、よりグレアに近い見え味になっている。

 アンチグレアは、微細なシリカ粉末を均一に画面へ接着したコーティング処理のこと。こうすることで、外光が画面に入り込んでも、そのまま反射をせず拡散する。反射する光が減るわけではないが、照明の写り込みなど主に点光源が画面内に入る場合などは、見やすさが増す。

 ただし、外からの光を乱反射するだけでなく、内側からの光(つまり液晶パネル自身の放つ映像)までも乱してしまうため、色の純度が下がり、明瞭度、解像感もやや落ちてしまう。また光の当たる角度と視聴位置の関係が悪いと、画面全体が白っぽく、薄くヴェールをかけたような映像になってしまう場合もある。

photo 「DIAMOND Panel」に用いられている表面処理の説明

 これに対してグレア処理の表面は、その名の通り光沢感があり滑らかだ。光を乱反射しないため、パネル本来の実力通りに純度の高い色を出すことができる。特に赤、青、緑といった原色系の発色は鮮烈で、それら原色が頻出するような映像、例えばビーチリゾートの映像などを見ると、鮮やかでヌケの良い透明感溢れる発色を味わえる。フラットな彩色のアニメなども見栄えがよく、SFモノではコントラストが立って立体感が増してくる。その分、ややしっとり感は後退するが、これは映像調整でコントラスト、ブライトネスを合わせ込んで雰囲気を出すこともできる。

 この書き方からも分かるかもしれないが、私個人としてはグレア処理を気に入っているが、デメリットも存在する。そのままではツルツルの表面フィルムへの映り込みが気になるため、グレアの場合は表面に何層かの低反射コートが施される。とはいえ、電源の入っていないテレビの前に座ると、自分の姿がはっきりと見える。これがイヤ(といっても、平面ブラウン管やプラズマテレビでも同じなのだが)だという意見も多いという。

 また、店頭では広い店内に多くの照明が取り付けられているため、光源が多数、画面の中に映り込んでしまう。その様子を見ると、どうしても購入の現場で敬遠されてしまうからグレアは採用しづらいというメーカーの意見もよく耳にした。

 それでもグレアの方が画質はいい。独自色を出すべきだ。そう考えてグレアにしたのが三菱電機だが、実際に消費者や販売店にグレアの良さが伝わるには、もう少し時間がかかる。そこで一部のメーカーは、“ハーフグレア”と称される、グレアとアンチグレアの中間(すなわち光の拡散を、ある程度抑制したアンチグレア)を使っている。

 店頭での顧客と店員のやりとりを聞いていると、このハーフグレアが意外に好評なのだと気付いた。風合いは従来のアンチグレアに近いが、よりクリアで鮮鋭感のある絵が出てくる。それでいて、自分の姿が分かるほど明瞭な映り込みもないからだ。

 次回はハーフグレアについてと、各製品を見るポイントについて話を進めることにしたい。

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