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デジタル分野総ナメ――「2007年デジタルトップ10」麻倉怜士のデジタル閻魔帳(1/5 ページ)

» 2007年12月12日 08時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 気が付くと12月となり、今年も残りわずか。今年最後の「デジタル閻魔帳」は、昨年と同じく麻倉怜士氏が2007年を振り返って特に印象に残ったモノを、ハード・ソフト問わずにランキング形式で紹介してもらう「麻倉怜士のデジタルトップ10」。麻倉氏の挙げる、今年最も印象に深かったデジタルトピックスは以下の通りだ。

〜2007年「麻倉怜士のデジタルトップ10」〜
1位 人類が初めて手にした映像――「ソニー XEL-1」
レビュー前編レビュー後編
2位 薄型テレビの最高峰――「パイオニア KURO」
麻倉怜士のデジタル閻魔帳:「KURO」が示すディスプレイのトレンド
3位 今冬BDレコーダーの本命――「パナソニック DMR-BW900」
レビュー前編レビュー後編
4位 映像の意図をキセノンランプで受け止める――「ソニー VPL-VW200」
ソニー、120Hz駆動SXRDを搭載したプロジェクター最上位モデル
5位 情念すらも伝える映像――アンジェラ・アキ「武道館に桜が咲いた日」「MY KEYS 2006 in 武道館」
6位 コンテンツを触る操作感が秀逸――「アップル iPod touch」
レビュー前編レビュー後編
7位 AV機器にも影響を与えたパワフルコンテンツ――「パイレーツ・オブ・カリビアン」
DVDレビュー:「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」(Blu-ray Disc)
8位 生活革命を起こすお掃除ロボット――「ルンバ 570」
さらに“スマート”になったお掃除ロボ「ルンバ500シリーズ」日本上陸
9位 アンプのデジタル化への回答――「NuForce IA-7E」
麻倉怜士のデジタル閻魔帳:オーディオの楽しみを再び
10位 大画面の原体験を呼び覚ます――松田聖子「Seiko Matsuda Concert Tour 2007 Baby’s breath」

――まずはこの1年をふり返って頂けますか。

麻倉氏: 大きなトピックとしてBlu-ray Discのブレイクを取りあげない訳にはいかないでしょう。DVDもブレイクするまでにデビューから4年ほどの時間がかかりましたが、それに比べてもBDの伸びるペースは早いですね。各社が魅力ある製品を投入し始めたというのもありますし、テレビでCMを見る機会も増えてきました。ハイビジョン時代を迎えてDVDへの録画は意味を失いつつあり、録画するならBDへという流れが来ています。

 テレビもその変化を実感できた1年ですね。パイオニアのKUROは壮絶なまでの黒色の沈み感で表現領域を拡大してくれましたし、有機ELテレビはこれまでに見たことがない驚異的な画質で見るものを圧倒しました。プロジェクターもフルHDが当たり前となり、格段に性能が向上しています。

 それに、HDオーディオ対応のAVアンプも充実してきました。考えてみるとコンテンツが先行してしまっためにアンプの「HDオーディオ待ち」という状況が続いていた訳ですが、今年の年末は非常に充実しています。ハイビジョンワールドが充実し、音を含めた臨場感もより豊かにという方向が明確になってきたのが今年1年の傾向と言えます。

――それではベスト10をお願いします。まずは松田聖子のライブBDソフト「Seiko Matsuda Concert Tour 2007 Baby’s breath」ですね。

麻倉氏: 公言している(笑)のですが、実は私は松田聖子さんが大好きで、ライブのLaserDisc版はすべて持っています。可愛らしいルックスと素晴らしい音声、テレビで見るのとは次元の違う感動があることをLD版は教えてくれました。

photo 「Seiko Matsuda Concert Tour 2007 Baby’s breath」を手にする麻倉氏

 私は1983年ごろには評論活動を行っていましたが、そのころはビデオ評論家的な活動が多かったのです。とあるイベントでパイオニアの試作リアプロを見たときに映っていたのが松田聖子さんのライブ映像で、その瞬間に稲妻のような感動、本人がそこにいるかような没入感、異世界に招かれたような感動を得たのです。曲は「白いパラソル」でした。それが初めての大画面体験であり、私の原体験ともいえるものです。

 2005年のNHK「音楽・夢くらぶ」で放送されたデビュー25周年のスタジオライブは映像・音質ともに良かったですね。これを波形モニターで見ると、白が110%ぐらいと白を伸ばして調整するという極めてNHK的なセッティングでファンタジックな世界が作られており、コンテンツにあわせた絵作りをしていることが分かりました。

 一方、BSフジで放送された今井美樹さんのライブは逆に白が40%程度に抑えられており、アーティストの雰囲気を上手に伝えています。どちらもディレクターズ・インテンション(監督の意志)が上手に表現されており、映像の勉強をさせてもらいました。

 さてこのBDソフトですが画質も音質も良好で――音声が2chなのは残念ですが――、自室の150インチスクリーンにプロジェクター「QUALIA 004」で投影すると一番最初に受けた「大画面の衝撃」を再認識できました。まさにマイフェイバリットと呼べる1枚です。

――9位はNuForce(ニューフォース)のアンプ(「IA-7E」「P-8」「Reference9 V2」)です。

麻倉氏: これはデジタルアンプなのです。でも、非常に音がよいのです。先端技術がここまで音へプラスの存在となり得ることを示したひとつの例と言えます。デジタルでも音的にエクスキューズのないデジタルアンプを作り出そうと考えると、質量のある電源を用意する必要があるなど、非常に大がかりになってしまいます。

photo NuForceのプリメインアンプ「IA-7E」

 では何故デジタル化するか? その問いに答えるべく、これまでにない音質や操作性が求められてきたのですが、この製品はその常識を変えてしまったのです。

 ラックにピッタリ収納できる従来のサイズ(43センチ)ではなく、コンパクトで非常に軽量なのですが、JBL Everest K2のような大型スピーカーすらも朗々と鳴らしてくれます。その音によどみはなく、レンジも広いのです。なぜこんな軽いアンプから、重量級の音が出るのでしょうか!?

 ニューフォースという会社は軍事産業からスピンアウトしたという由来もあり技術的な詳細は明らかにされていませんが、新しい技術が新しい音を作り出し、オーディオを活性化させることを示してくれました。

 大型スピーカーを鳴らしても良いのですが、コンパクトなスピーカーにこそ、スタイリングがマッチしますね。B&Wの「805S」、KRIPTONの“ミュージックモニター”「KX-3」やLINNの「MAJIK 140」などがお勧めですね。

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