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れこめんどDVD:「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」(Blu-ray Disc)DVDレビュー(2/3 ページ)

» 2007年12月14日 08時44分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

特典もハイビジョン収録

 Blu-ray Discの仕様は片面2層の50Gバイト。映像の圧縮方式はMPEG-4/AVCとなっている。画面サイズは2.40:1のシネスコサイズ。映像は暗い場面が多く、全体の7割は占めるであろうナイトシーンは使用する機材の精度によって見え方は相当異なるはずだ。

 音声は英語をリニアPCMとドルビーデジタルで、日本語吹替版をDTSとドルビーデジタルで収録している。戦闘シーンの迫力は言うに及ばず、何気ない船内の会話シーンでも船のきしみや波の様子が伝わってきて、サラウンド感は十二分に楽しめる。

 映像特典は前2作同様、別ディスクに収録。こちらもハイビジョン収録となっている。最近は他社作品もそうだが、映像特典がHDクオリティで見られるようになり、本当にいい時代になったと思う。HDカメラで撮影したものを、特典だからとSD画質にダウンコンバートされ、おまけ扱いされたのでは特典の製作者たちもやる気を失っていくだろう。本編と同等のクオリティになることで、メイキングを作る側にもやる気を起こさせるはずだ。

 ディスクの視聴は、プレイステーション3からヤマハのAVアンプ「DSP-AX4600」をHDMIで経由し、映像は42インチのプラズマと液晶プロジェクターによる80インチのスクリーン再生で行った。

映像自体は暗いが、実はそれが狙い

 最近すっかりおなじみとなった花火が打ち上げられるディズニーのロゴから本編がスタート。ここだけでもハイビジョンのクオリティの高さが実感でき、高画質を望むAVファンにはたまらないだろう。

 CH-1は東インド会社によって反乱分子が次々と処刑される展開。デイシーンだが、映像のトーンは暗い。処刑される人々の服装は言いようがないほど汚しが付けられているのだが、海賊の召集の歌を歌い始める少年の歯までしっかり汚されていたのは感心した。見せかけの美しさは排除し、極力事実に近づけようとしているスタッフたちの仕事ぶりがしっかりチェックできた。

 CH-2ではシンガポールのサオ・フェンの隠れ家が舞台になる。ジャック・スパロウを探し出すため、“ワールド・エンド”の地図を持っているサオ・フェンにバルボッサとエリザベスが交渉に向かう場面だ。ナイトシーンでかなり暗いのだが、カメラワークやシルエットの濃淡によって、映像に立体感がもたらされ、スクリーンで再生する分には何の不満もない。

 ただ、調整の行き届いていないモニターで見れば、かなり辛い映像になることは間違いない。サオ・フェンが登場するのは蒸気が湧き上がる建物の奥の部屋。むせ返るような雰囲気が画面の暗さと相まって実によく伝わってくる。

 CH-3ではついに姿を現したサオ・フェンとバルボッサたちが交渉しているところに東インド会社の連中が乗り込んで、激闘が繰り広げられる。先ほどから書いているように映像自体は暗いのだが、発砲する瞬間や、爆発の場面で明るくなるとディテールが際立ち、この暗さがしっかりした狙いであることが分かる。

リニアPCM音声で砲撃の迫力を堪能

 CH-4はデイヴィ・ジョーンズのフライング・ダッチマン号と東インド会社の海戦から始まる。砲撃の迫力が凄く、リニアPCMの効果が実感できる。その後はワールド・エンドに旅立ったバルボッサとエリザベスたちの姿が描かれる。バルボッサたちは雪の降る極地を移動しているのか、雪に見舞われている。雪の質感は寒さが伝わってくるほどで、冬に見るにはかなりリアルなものになっている。海賊の1人が足の親指をポキッと折ってしまうのはなかなかの衝撃映像だ。

 CH-5では心臓を奪われ、敗北したデイヴィ・ジョーンズがパイプオルガンを弾いている。涙を一滴流すのだが、それを髭の触手でぬぐう際、きちんとフォーカスを送られていることに気が付くだろうか。本作ではデイヴィ・ジョーンズの悲しい過去も明かされるのだが、それを予感させる見事なショットである。

 一方、エリザベスたちの船はTVスポットでもよく流れたナイアガラの滝のような海の終わりに直面。巨大な船がまっ逆さまに落ちていくVFXの迫力は画面が大きいほど圧倒されるはず。その後、画面は暗転し、生き残った人々の声が各チャンネルで鳴り響く。あざとい演出と感じる人もいるかもしれないが、自分としてはこうした手法は大変楽しめた。

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