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「今日の液晶、将来の有機EL」――松下、キヤノン、日立が提携

» 2007年12月25日 20時10分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 日立製作所、キヤノン、松下電器産業の3社は12月25日、液晶ディスプレイ事業と技術のさらなる強化を目的に包括的な提携を行うことで合意した。記者会見の席上、日立の古川一夫社長は、今回の合意を「高度な技術とグローバルな商品力を持つ企業の協業。最強のシナジーを生み出す連合だ」と評した。

photo 左からキヤノンの内田恒二社長、日立の古川一夫社長、松下の大坪文雄社長

 既報の通り、今回の合意により、中小型液晶パネル事業を行っている日立ディスプレイズ(日立の100%子会社)について、日立からの株式譲渡によりキヤノンと松下がそれぞれ株式の24.9%を2008年3月末までに取得する。また“次の段階”として、日立ディスプレイズについてキヤノンが過半数の株式を、IPSアルファは松下が過半数の株式をそれぞれ取得する資本構成の変更を計画している。先日発表されたシャープと東芝の業務提携(→関連記事)では東芝がIPSアルファに対する出資分を売却する方向で検討を進めるとしていたが、松下が東芝の出資分をすべて引き受けることで合意済みであることも明らかにされた。

photo 日立製作所の古川社長

 日立製作所の古川社長は、提携の目的について「日立はIPS技術をはじめ、高度な液晶関連技術を保有している。3社の連携により、先端的な技術開発を加速するとともに、IPSパネルを安定的に供給できる」と説明する。

 一方の松下は、垂直統合型の事業モデルを推進するため、IPSパネルの安定調達を図るのが目的だ。同社は37V型を境にPDPと液晶をすみ分けており、「大画面はPDPという路線に変更はない」(同社の大坪文雄社長)。しかし、2015年には年間2億台(松下予測)という規模に拡大する薄型テレビ市場において、多様化するユーザーニーズや地域性に合わせるため、液晶テレビの開発・製造基盤を強化する必要があるという。

 今後は松下が中心になってIPSアルファの次期工場建設を進める。工場の稼働時期など詳細は未定ながら、「G7〜G8(マザーガラス)をターゲットとして、37型を中心に製造するだろう」(大坪氏)。また将来的には同工場で有機ELディスプレイを生産することも視野に入れている。「今日の液晶、将来の有機EL事業について合意できた」(大坪氏)。

 なお、有機ELの開発状況について質問を受けた日立の古川社長は、「中央研究所などグループが持つ複数の研究所で、低分子型/高分子型を含めさまざまな研究開発を進めている」と説明した。ただし、「有機ELの課題は量産性、コスト、大型化の3つ。30〜40インチといった大画面化にはまだ課題がある」として、具体的な製品化のスケジュールは明らかにしていない。

SEDもあきらめてはいない

 キヤノンは、民生分野・事務機分野でキーコンポーネントの内製化を進めており、今回の合意もデジタル一眼レフカメラやプリンターなどに使用する液晶パネルの安定的調達が目的。またデジカメ用途を中心に中・小型の有機ELディスプレイについても日立ディスプレイと共同開発を進める方針だ。「自発光の有機ELは屋外でも視認性が高いため、カメラに搭載することを目的に開発を進めている。テレビ事業に参入することは考えていない」(キヤノンの内田恒二社長)。

 なお、係争中のSEDについては「現在は控訴審に入っているので、“技術開発に邁進している”とだけ述べる。しかし、われわれは決してあきらめたわけではない」(内田社長)とした。

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