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れこめんどDVD:「ニュー・シネマ・パラダイス」(Blu-ray Disc)DVDレビュー(1/3 ページ)

» 2008年01月25日 09時22分 公開
[飯塚克味,ITmedia]

世代を超えて愛される名編

「ニュー・シネマ・パラダイス(Blu-ray Disc)」

発売日:2008年1月25日
価格:4980円
発売元:アスミック/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
上映時間:123分(本編)
製作年度:1989年
画面サイズ:ビスタサイズ
音声(1):リニアPCM/モノラル/イタリア語
音声(2):ドルビーデジタル/モノラル/イタリア語

 すべての映画ファンが愛してやまない名作「ニュー・シネマ・パラダイス」。戦後間もないシチリアを舞台に、映画を愛する少年トトと映写技師アルフレードの友情を叙情的に描き、公開から20年近く経つというのに生涯のベスト1に挙げる人も少なくない。公開時にはヴィム・ベンダース監督の「ベルリン・天使の詩」が打ち立てた単館上映の興行記録をあっさり塗り替えたこの名作がついにBlu-ray Discで発売された。本作のクオリティはいかなるものだったのか? 早速チェックしてみた。

 「ニュー・シネマ・パラダイス」が初公開されたのは1989年の12月。単館系のお正月映画の目玉として大ヒットを記録し、長期に渡って公開された。当時、無名のジュゼッペ・トルナトーレ監督は一躍、時の人に。

 本作がヒットしたのはこの監督が映画の持つ“力”を完璧といってもいいほど引き出し、どんな世代でも感動できる名編に仕上げたからである。主人公サルヴァトーレ(トト)の映画に満ちた人生を描きながら、戦後の悲惨な時代を乗り越える人々に大きな勇気を与えた映画とその社会背景を見事にスクリーンに焼き付けている。最近では「ALWAYS/三丁目の夕日」など過去を懐かしむ作品が増加傾向にあるが、それらが束になってもかなわない魅力がこの「ニュー・シネマ・パラダイス」には詰まっているのだ。

 舞台となるのは戦後間もないシチリア。主人公トトは母親と妹の三人暮らし。父親は出兵したきり、戻ってきていない。トトは父が戦死したものと思っているが、母親はいつか帰ってくると固く信じている。そんなトトだが、彼が夢中になっているのは、同世代の友達との遊びではなく、島民みんなの娯楽である“映画”だ。知り合いの映写技師アルフレードのいる映写室に忍び込んでは、切れ端のフィルムを拾い集めたりしている。

 映画はそんなトトとアルフレードの友情を描きながら、様々な事象を画面に映し出していく。暗闇の中、トトが大画面に映し出される映画に目をきらめかせている姿には、映画ファンなら誰しも自分を投影してしまうに違いない。明かりを通してフィルムを見つめ、その映画の場面を回想する姿も、身に覚えがある人が多いのではないだろうか?

 若い映画ファンには申し訳ないが、今でこそDVDなどで映画を“所有する”ことは簡単になったが、かつては、映画は映画館でしか見ることができないものだった。現在40代になった筆者のような世代以上の映画ファンは劇場で入手したパンフレットやポスターを見つつ、サントラ盤を聞くなどして映画の記憶が脳裏から抜けないよう必至に努力をしていたのである。この映画はまさにそうしたツボを見事に突いており、何度見てもつい夢中になってしまう。

 今回のBlu-ray Disc版リリースで初めて本作に触れる人も多いだろうが、映画館という空間で本作に出会えなかったことは実に不幸というべきだろう。強烈な映画愛に満ちた本作は、映画館で見てこそ、その威力を発揮する。いかなる高価な設備を備えたホームシアターでも、映画館のあの空気感は持ち得ないのだ。もし映画館で見ていない方で本作の熱烈なファンがいたら申し訳ないとは思うが、やはり一度は映画館で見るべき作品なのである。

15周年メモリアル・コレクションのマスターを使用

 Blu-ray Disc版に使われたマスターは、2003年に「15周年メモリアル・コレクション」としてDVDが限定発売された時に作成されたマスターと同一と思われる。最初にリリースされたDVDはまだテレシネ技術もいまひとつで発色が悪く、大画面再生には耐えられるようなものではなかったが、この時リリースされたスーパー・ハイビット版のDVDは現在の視点で見ても最高品質のものである。マスターテープの製作にはソニーPCLが深く関わったと聞いているので、Blu-ray Discのリリースとなったのも合点がいく。

 ちなみに本作は05年にDLP上映でリバイバルされたが、マスコミ向けの試写はソニーPCLでHD上映されている。筆者もそこで見たのだが、初公開時とは比較にならない表現力に圧倒された記憶がある。

 映像の圧縮方式はMPEG-4/AVC。画面サイズは1.66のヨーロピアン・ビスタサイズ。音声はオリジナル音声をモノラルのまま、リニアPCMとドルビーデジタルで収録している。Blu-ray Disc版の発売に先駆けて、(恐らく)同様のマスターを使用してBS朝日でハイビジョン放送も行われたが、字幕サイズもテレビ放送だけに大きいものとなっていて、CMも入るなど映画に集中することが大いに妨げられ、ファンとしては残念に思っていただけに、放送を凌ぐ高画質・高音質に感謝したい。

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