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今度は医療制度をメッタ斬り――「シッコ」新作DVD情報

» 2008年03月17日 08時50分 公開
[本山由樹子,ITmedia]

シッコ

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(C) 2007 Dog Eat Dog Films, Inc.Artwork (C) 2007 The Weinstein Company. All rights

 アメリカの医療制度をターゲットにした、マイケル・ムーア監督の突撃シリーズ第3弾「シッコ」が4月4日に特典ディスク付きの2枚組でDVDリリースされる。特典ディスクには約60分のメイキング映像、オリジナル予告編、劇場特報、劇場予告、TVスポットを収録。

 アメリカは先進国で唯一、国が運営する国民 健康保険が存在しない。国民は民間の保険会社に加入するしかなく、6人に1人が無保険で、毎年1万8000人が治療を受けられずに死んでいくという。

 だが、本作は保険に加入している人のお話。アメリカの医療保険の大半はHMO(健康維持機構)という、民間の保険会社が医師に給料を支払って管理するシステムをとっている。「治療は不必要」との診断を多くすればするほど医者は“(無駄な保険料の)支出を減らした”という意味不明な奨励金を与えられ、政界は保険会社から多額の献金をもらい、この制度を変えようとはしない。大病を患った保険の加入者は、なんだかんだと難癖をつけられ治療費がもらえず、高額な治療費が払えずに、破産か、命を落とすという悲劇に見舞われているというのだ。

 アメリカの保険充実度は世界37位で、なんと先進国中最下位。こんな医療制度はおかしい、と立ち上がったのがマイケル・ムーア。アメリカの銃社会を切ったオスカー受賞作「ボウリング・フォー・コロンバイン」、ブッシュ大統領に焦点を当てた「華氏911」。毎回着実に話題をさらうドキュメンタリーのヒットメーカーである。本作は惜しくも受賞は逃したものの、アカデミー長編ドキュメンタリー賞にノミネートされている。

 重病なのにバカ高い医療費で破産し、マイホームも手放さなければならなくなった夫婦など、ひどい目にあった人々を紹介し、金もうけしか頭にない民間保険会社のあくどい手口を暴露していく。

 ほかの先進国と比べてアメリカの医療制度がいかに劣っているかを証明するため、ムーアはフランス、イギリス、カナダへも取材を敢行。うらやましいことにそれらの国では、医療費はほぼゼロで、イギリスでは貧しい患者には病院までの交通費を払っていると紹介される。

 その後も9.11テロでボランティアにあたり気管支炎の後遺症に苦しみながらも医療制度から見放された人々を、キューバのグアンタナモ基地に連れて行く。ここは医療費がかからない場所で、テロの首謀者たちが収監されているところだ。

 医療費が安い・タダの国は税金が高いなどという説明は一切ないから、内容をそのままうのみにするのはまずいし、エンターテイナー・ムーアの挑発的な取材パフォーマンスにも好き嫌いが分かれそうだが、彼の行動力には毎度のことながら頭がさがる。何もしないでいるよりは、行動することで突破口が開けるかもしれない。病院をたらい回しにされて死者を出している日本人にとっても他人事ではない問題作。

関連サイト:http://sicko.gyao.jp/(公式サイト)

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シッコ
発売日 2008年4月4日
価格 3990円
発売元 ギャガ・コミュニケーションズ
販売元 ギャガ・コミュニケーションズ
スタッフ 監督・脚本・製作:マイケル・ムーア
出演 マイケル・ムーア
上映時間 123分(本編)
製作年度 2007年
画面サイズ ビスタサイズ・スクイーズ
ディスク仕様 片面2層/2枚組
音声 (1)ドルビーデジタル/5.1chサラウンド/英語 (2)ドルビーデジタル/2.0chステレオ/日本語
特典 メイキング映像/オリジナル予告篇/劇場特報/劇場予告/TVスポット

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