コンパクトデジカメとデジタル一眼レフカメラ、一番違うのは「撮像素子の大きさ」とそれにともなう数々の写りの違いだが、一番違いが分かりやすいのは「ピントの合う範囲」だ。
最初に取り上げるのは「撮影最短距離の違い」だ。コンパクトデジカメで気軽にマクロ撮影をしてた人はここに注目である。
大事なのは
の3点。
まずは2つめ。デジタル一眼レフの世界では(というか、もともとカメラの世界では)、被写体との距離は「撮像素子面」から測るのだ。
どのカメラもよく見ると円を棒が貫いてる「土星」みたいなマークがついてるが、ここが「撮像素子面」。カタログにある撮影最短距離はここからの距離なのである。
撮影最短距離が30センチの場合、レンズが15センチで撮像素子面からボディのレンズマウント面までが4.5センチだとすると、レンズ前10センチちょっとということだ。
このレンズ面から被写体までの距離は「ワーキングディスタンス」という。コンパクトデジカメではこのワーキングディスタンスが一番短いところを撮影最短距離としているわけだ。
続いて1つめと3つめ。一眼レフ用ズームレンズの場合、広角側でも望遠側でも撮影最短距離は同じであり、マクロモードというものはない。まあ一部のマクロレンズでフォーカス域を設定できるレンズもあるが、それは特殊な例だ。
さらに普及価格帯のズームレンズでは望遠側にするとレンズが伸びるので、望遠側の方が「ワーキングディスタンス」は短くなる。もちろん望遠側の方が「大きく撮れる」。
例えば上のシーンで撮った写真を2枚どうぞ。1枚目は広角側、2枚目は望遠側である。
逆にコンパクトデジカメはたいてい広角側が一番近寄ることができ、大きく撮れるので、この違いは結構大きい。広角側でぐいっと寄るならコンパクトデジカメは便利だが、逆に望遠側で大きく撮るなら一眼レフ用のマクロレンズの方がいい。
で、さらに
のも大事。
コンパクトデジカメだと「レンズ前5センチ」なんて当たり前なんだけど、一眼レフ用のレンズでそれが可能なのは、レンズ名にわざわざ「マクロ」って書いてある一部のレンズだけだ。
上のカメラについているレンズはシグマの「17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO/HSM」という名前のレンズ。レンズ名にマクロと入っているだけあって、最短撮影距離はズーム全域で20センチ。望遠側だと、ワーキングディスタンスが最短3センチという手軽にマクロ撮影を行うには非常に便利なレンズで重宝している。
でも、これは珍しい例。
一般にこのくらいのズーム域だと撮影最短距離は30〜40センチでそんなには近寄れない。コンパクトデジカメのつもりでぐぐっと近寄って撮ろうとしてピントが合わない、って経験をした人もいるだろう。
さらに18〜200ミリといった1本で広角から望遠まで撮れる便利なレンズの場合、撮影最短距離は45〜50センチ程度である。ただし、望遠側の200ミリ(35ミリ換算で300ミリ相当)で50センチまで近寄れたらかなりでかく撮れる。
望遠で50センチまで寄れればこんなにアップでもOK。そういう意味では、大事なのは「撮影最短距離」じゃなくて、どのくらい大きく撮れるかだ。
ちなみにエントリー向けデジタル一眼レフのレンズキットに使われる18〜55ミリクラスのレンズだと、ニコンやキヤノンの場合で撮影最短距離は28センチ。コンパクトデジカメからのステップアップユーザーを意識してそれなりに寄れる作りになっているが、コンパクトデジカメのマクロモードのように、いきなり「3センチ」とか「5センチ」って寄れるわけじゃない。
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