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パイオニア「KRP-600M」でBD「パフューム ある人殺しの物語」の官能を読み解く山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.16(1/2 ページ)

» 2008年06月11日 15時42分 公開
[山本浩司,ITmedia]
photo パイオニアの60V型プラズマモニター「KRP-600M」

 昨日、パイオニアから9世代めとなる自社製プラズマ・パネルを採用した60V型モニター「KRP-600M」が発表された。今月下旬の発売予定で、50V型の「KRP-500M」も年内の発売がアナウンスされている。

 1997年に世界初の50V型プラズマテレビを発売して以来、ずっと自社内でプラズマ・パネルの開発・製造を続けてきたパイオニアだが、この第9世代モデルを最後にパネル製造から撤退。次世代機からは外部調達(松下電器産業)したパネルでプラズマテレビを仕上げることになる。

 そんなわけで、同社製パネルの集大成モデルともいうべきこの第9世代機。当然、気合の入った仕上がりが期待されるわけだが、早速KRP-600Mをじっくり視聴する機会があったので、今回の連載ではいち早くその内容の詳細と視聴インプレッションをお伝えしたいと思う。

 なによりもまず驚かされたのは、より一層のハイコントラスト化ときめ細かな階調表現が実現された、そのモニター機らしい画質の素晴らしさであった。

 パイオニアはプラズマテレビ発売10周年となる昨年、ペットネームを従来の「PureVision」から「KURO」に改めたフルHD機「PDP-6010HD/5010HD」を発売した。

 黒輝度を0.02カンデラ以下まで落とし、暗所コントラスト比2万:1を実現したこの第8世代モデル。墨痕(ぼっこん)鮮やかな、とでもいうべきつややかな黒をベースに他社の薄型テレビを圧倒する高画質を実現。画質にこだわりを持つユーザーに大きな衝撃を与えたのは記憶に新しい。

 しかし今回の600Mは、黒輝度をPDP-6010HDに比べてさらに約5分の1に落したというのだから凄い。今回パイオニアは、コントラスト・スペックを公表していないが、白のピーク輝度がPDP-6010HDと同じだとすれば、暗所コントラストはなんと10万:1という値になる。

 パイオニアは、2005年に発売した第6世代機の「PDP-506HD」で「高純度クリスタル層」を採用して発光効率を上げ、ハイコントラスト・ディスプレイのトップに躍り出たわけだが、昨年の第8世代機PDP-6010/5010HDでは、セル背面にも高純度クリスタル層を配置してさらに発光効率を上げ、予備放電をぐんと抑えることで、2万:1の暗所コントラスト比を実現していた。

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 今回の発表にあたって同社技術陣から話を聞いたが、KRP-600Mの発光効率自体は、6010HDよりも“多少良い”程度。それよりも予備放電のリセットのやり方、駆動方法を変えたことが、未曽有のハイコントラスト映像の実現に大きく寄与したという。話から類推すると、絵がらに合わせて予備放電を時系列的に分散させて種火の総量を抑えるという新しい手法が採られたようである。

 実際に、本機の両隣に第7世代機の「PDP-5000EX」と第8世代機のPDP-6010HDを置いて画質を見比べてみたが、KRP-600Mのコントラストのよさ、黒の質感向上は明らか。自室で愛用している5000EXの黒表現が、KRP-600Mと比べると大きく緑がかって見えることが分かり、ぼくはがっくりと肩を落したのだった。

 またPDP-6010HDでは黒の引き込みが若干早く、暗部階調の描写に不満をおぼえる場面があったが、KRP-600Mは漆黒と黒に近いグレーを安定したホワイトバランスで描きながら、暗部の情報をじつに粘り強く描き出す。ハイビジョン収録された見慣れた音楽ライブ作品で、これまでぼんやりとしか見えなかったステージ後方の暗い場所にいる撮影カメラマンの姿がKRP-600Mでははっきり認識でき、ちょっとした衝撃を受けた。コントラストの向上とともに、階調数を絵がらに合わせて制御する同社独自のフレックスクリア駆動法がさらに進化し、階調表現力が大きくアップしたことは間違いない。

 本機KRP-600Mでは、PDP-6010/5010HDで初採用された「リビングモード」画質もよりいっそう練り上げられている。リビングモードとは、照度環境と映し出されるコンテンツの性格に合わせて、自動的に同社技術陣が考える最適画質に合わせ込む映像モード。ソース・カテゴリーを従来の5から11に細分化し、よりコンテンツの内容に合った画質が提供できるようになったというし、カテゴリーを判別するときも、従来のように画面全体ではなく、エリアを9分割して判別精度を向上させているという。

photo KRP-600Mの背面端子レイアウト。HDMI入力は2系統

 本機はチューナーレス、スピーカーレスのモニター機として発売されるが、2系統あるHDMI入力端子にデジタルチューナー内蔵のBDレコーダーをつなぎ、本機のスピーカー出力端子を活用すれば、すぐに「普通の超高性能薄型テレビ」として使うことができるわけで、東芝が「おまかせドンピシャ画質」で追随した“誰もがいつでもどこでもどんな番組でも高画質で楽しめる”このオートマチック高画質モードの進化は、たいへん大きな意義を持っていると思う。

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