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ちょっと気になるネットの話題「ねとらぼ」
連載2008年08月08日 08時30分 更新
麻倉怜士のデジタル閻魔帳:ステレオの復活、HDオーディオの充実 (3/3)――ここまではステレオに関するお話を伺ってきましたが、最近ではHDMI 1.3に準拠したアンプも普及し、HDオーディオを楽しめる環境も整いつつありますね。 麻倉氏: 個人的にはステレオと並んで追求したいのが、HDオーディオです。Blu-ray Discはハリウッドが開発に影響を与えたこともあって、映画が多くリリースされていますが、最近ではよい音楽モノも登場してます。これはうれしいですね。 映像がSDからHDになれば、音声もSDからHDになるのは自然な流れです。DVDでも音楽映像というジャンルのソフトはありましたが、2chだけはCDレベルであるものの、サラウンドはロッシーになってしまっていました。容量の大きなBDならば、サラウンドもロスレスもしくは非圧縮で収録できます。それを利用して、DVDとは一線を画する出来栄えのソフトがリリースされています。 輸入盤ではありますが、「魔笛」「真夏の夜の夢」「こうもり」「イル・トロヴァトーレ」などのイギリスのオパスアルテのBD-ROM作品がクリエイティブ・コア経由で入手でき、いずれも一級品です。英BBC制作の作品が多いのですが、大画面でオペラを作品としてどのように見せるかを心得ている撮影とディレクションです。 こうした作品はこれまでも多く放送されていますし、DVDも多く発売されます。ですが、これまでのものは私は「ドキュメント」の類だと思っています。画質、音質が低いからです。ところがBD作品を見ると、確かにドキュメントではありますが、パッケージ自体が作品の粋まで昇華されており、見ている人をその場へ没入させるほどの実体感にあふれているのです。 映像はもちろんですが、音声も含めたクオリティの高さがそれを担保しているのであって、いくら映像が素晴らしくても音声が2chのみのステレオやロッシーなサラウンドでは、その魅力は半減してしまいます。オペラ作品では、遂に大手のユニバーサルがBD進出したことが大きな話題ですね。グラモフォンとデッカレーベルから名作が多数リリースされる予定です。第一弾はアンナ・ネトレプコのマスネー「マノン」です。視聴板は8月の中旬ですので、大いに期待しています。 NHK制作のBD作品に、小澤征爾氏がベルリンフィルを指揮する「NHKクラシカル 小澤征爾 ベルリン・フィル 「悲愴」 2008年ベルリン公演」があります。このディスクには、カラヤン生誕100年を記念して行われた公演の後半「悲愴」が収録されているのですが、画期的なのはBDしかリリースされていないことです。映像はそれこそ圧倒的な素晴らしさで眼前に表れます。 演奏はNHK BS-hiでも放送されていますが、その際のコーデックとビットレートはMPEG-2/24Mbpsでした。一方、このBD版はMPEG-4 AVC/30Mbpsと極めて高いレートで収録されています。コーデックが異なるので単純な比較はできませんが、BD版の画質の良さは筆舌しがたいものです。先日もSIDというディスプレイの学会で、このディスクとエアチェック版を比較する機会がありましたが、NHK技研などの映像の専門家が、腰を抜かすほどの違いがありました。 冒頭では、コントラファゴットの木目と金属がライトの光で燃えるように輝き、バイオリンの微妙な色合いや奏者の表情も、実にクリアに描写されます。まさに眼前で見るような感動を与えてくれます。またカメラワークの素晴らしさも注目です。人間の眼の画角に収まるような正面カメラからの静的な映像が多く、それも静かで穏やかな臨場感につながっています。自分が没入していけるような映像となっており、「映像の対話」ともいえる関係が成り立っています。スイッチングがない訳ではありませんが、それも音楽に寄り添ってスムーズです。こうした音楽作品では、見る人の気持ちに添った構図やカメラワークは重要だと感じさせます。 音の素晴らしさも最高級です。大げさではなく、人類が得た最高のマルチチャネルサウンドを体験させてくれますす。96kHz/24bitのリニアPCM収録なのですが、これがどのような意味を持つかは、DVD-Audioですら96kHz/24bitではロスレスであることを考えれば分かるでしょう。ひずみが極端に少なく、しなやかで、暖かく、しかも音が精細で芯があり、ソノリティは会場の空気感までも伝えるようです。 マルチチャンネル環境を整えて聞くと、まるで会場で聞いてるような時間感覚・空気感覚が伝わってきます。手前にバイオリン、奥に金管楽器が配置されているのですが、金管楽器から音がでるシーンでは、画面の奥から視聴位置の後方へきれいに音が移動していきます。ここまでダイナミックかつ、エモーショナルな1枚は史上初でしょう。作り手のこだわりが結実した結果、素晴らしい作品ができあがったのです。すでに発売されていますが、セールスも好調とのことです。 シンプルでストイックな音の復活、絵と音が同時に存在することで得られる感動と臨場感。その2つがこれからのオーディオ界を引っ張っていくと思います。 麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。 著作
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