ITmedia NEWS >

「BDへのシフトを促進する存在に」――ヴィジョネア「DVDMAGIC」インタビュー

» 2008年08月11日 10時00分 公開
[ITmedia]
photo PPV-DVD版「しにがみのバラッド。」

 ヴィジョネアの「ペイパービューDVD」(PPV-DVD)は、携帯サイトないしPCサイトでパスワードを購入すると続きが視聴可能になるDVD。既に「24−TWENTY FOUR−」「名探偵コナン MAGIC FILE」などの作品がコンビニエンスストアで販売されており、最近ではアマゾンにコーナーも設けられた

 最大の特徴は、DVDのディスクを手元におきつつ、続きが気になればその分だけ追加でPPV購入すればよいという、セルとレンタルの“いいとこ取り”だ。各パッケージの販売価格は低価格となっており、「24−TWENTY FOUR−」ならば、24話入ったパッケージの価格は1490円。1〜6話までは開封するだけ視聴できるが、7話から最終話の24話までは2話あたり380円のPPV視聴料が必要(2週間見放題)。全24話を視聴するには、1490円(1〜6話)+380円×9の4910円が必要となる。課金についてはPC向けのWebサイトのほか、携帯電話の課金システムを利用することもできる。

 こうしたフレシキブルな運用を可能にしたのが、同社の特許技術「DVDMAGIC」だ。ペイパービューDVDを実現する基幹技術であるが、正確には「DVDとインターネットを連動させる技術の総称」(同社 代表取締役社長 内古閑宏氏)と呼ぶ方が的確で、同技術を導入したDVDはあくまでもDVD-Video規格のディスクでありながら、サーバへアクセスするプログラムをアドオンすることで、コンテンツの再生制御や期間制御、課金方法などをきめ細やかに設定することが可能となっている。

 「メディア側にはコンテンツをロックする機能しか備えておらず、コントロールはサーバ側で行います。そのため、5話買うと1話サービスや割引クーポンをネットで配布するといったかなり細かなコントロールやサービス提供も可能になっています」(同社取締役CTO 大野浩二氏)

photo ヴィジョネア 代表取締役社長 内古閑宏氏(左)、取締役 CTO 大野浩二氏(右)

 同技術を導入したペイパービューDVDは2004年にテスト販売され、すでに4年近い利用実績を持つ。ただ、“セルとレンタルのいいとこ取り”という類を見ない特徴を持ちながら出だしは好調とはいかなかった。

 「正直、スタート直後の反応は良好なものではありませんでした。タイトルラインアップの影響だったかもしれませんが、携帯電話決済に対応し切れていなかったなど、当社側にも改善の余地はありましたから。ですが、クレジットしか決済手段がない、利用者にとってはあまり便利ではない段階でも、続き物についてはPPVで購入してくれる利用者が多くいました」(内古閑氏)

 ペイパービューDVDでリリースされているタイトルで代表的な続き物タイトルといえば、前述の「24」だが、購入者の約半数はPPV購入となる7話以降も見てくれたという。「ペイパービューDVD版 24のリリースは2006年11月ですが、3年以上経過した現在でも有料視聴されています。それに、24で有料視聴してくれた利用者の多くは他のタイトルも見てくれているようです。“一度体験してもらえれば定着する”と実感できた出来事ですね」(同氏)

 8月8日にオープンしたアマゾンのコーナーにならぶペイパービューDVDは、これまでに販売されたものではなく、コーナーオープンにあわせて新たにリリースされたものだ。約40タイトルがリリースタイトルとして用意されており、24のように1〜2話が無料で続きは有料、あるいは収録されたタイトルから1本は1週間無料、その他の作品は有料というアラカルト形式の2通りがある。タイトルは年内をめどに約300まで拡大される予定。ペイパービューDVDの販売ルートもアマゾンだけにとどまらず、家電量販店やTSUTAYAのようなAVショップも視野に入れられている。

 タイトルと販路の充実、この2つはペイパービューDVDの普及に欠かせないが、実は肝心なものが欠けていることは内古閑氏も認識している。

 「ペイパービューDVDの課金手続きや仕組みそのものに対して、認知度が浅いことは承知しています。携帯電話を利用して決済すれば、その操作は着うたを購入することとほぼ変わりないので、もっとペイパービューDVDそのものになじんでもらえばと思っています。ペイパービューDVDにはセルDVDより安く、手軽に購入できて、コンテンツが収録されたDVDが手元にあるので、いつでもパスワードを購入すれば、すぐに作品を視聴できるというメリットがあります。このメリットを、普段DVDを買わないライトなユーザー層に訴求できればと考えています」(内古閑氏)

 その起爆剤となりそうなのが、年内をめどに開発が進められているBlu-ray Disc版のPPVシステムだ。DVDMAGICは名前にこそ「DVD」の文字を含んでいるが、技術としてはDVDという規格やメディアに依存するものではなく、Blu-ray Discへの転用も行える。既にタイトルに関しても「コンテンツメーカーなどの話し合いを開始している」(内古閑氏)段階だという。

 BD版ペイパービューDVDは、BD-Liveが利用可能なプレーヤーならば利用可能なかたちとして提供され、1つのコンテンツについて、1回だけ視聴するレンタル形式と買い切りとするセル形式のいずれかを選択できる機能も持つ。セル形式はこれまでのDVD版には導入されていなかった特徴で、「レンタルで見て、気に入ったら購入」というニーズへ、1枚のディスクで応えることが可能だ。また、具体的な方法は未定だが、プレーヤーだけでも課金・決済が完了する仕組みも導入される見込みとなっている。

 BDはDVDより販売価格が高く設定されることが多く、TSUTAYAが全店で開始したとはいえ、レンタルを行う店舗もまだDVDに比べて少ない。そのため、“とりあえず、BDを一度見てみたい”というカジュアル層のニーズをキャッチできる可能性は高い。「DVDからBDへの移行を促進する存在になれれば」(内古閑氏)――“日本発世界初”を掲げる同社の技術がBD促進の追い風となりそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.