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今年の秋は薄型テレビが熱い?本田雅一のTV Style

» 2008年08月25日 19時02分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 今月、すなわち8月が明けると家電業界は慌ただしさを増してくる。夏休み中に滞っていた仕事が急に進み始めるというのが1つの理由。もう1つはご存じの通り、9月に入ると少しずつ、各社の新製品が登場し始めるからである。

 未発表の製品の機能について、ここで触れるわけにはいかないが、各社からの発表を前に大まかな傾向について話しておくことにしたい。

 まず、今年春の東芝“REGZA”シリーズに搭載された「おまかせドンピシャ高画質」。環境に合わせて自動的に画質が変動する機能についてだ。この種の自動画質調整機能は、昨年パイオニアがリリースした“KURO”シリーズの「リビングモード」が最初である。

photophoto 東芝“REGZA”では、環境に合わせて自動的に画質が調整される一方、ヒストグラム表示などを含めた詳細な設定も可能だ(左)。6月にパイオニアが発表したKUROモニター「KRP-600M」では「リビングモード」も進化。画面分割センシングによる判別精度の向上が図られた(右)

 リビングモードは映像解析により、どんなシーンなのかを判別して映像調整を行うことを主眼にしている。もちろん、明るさセンサーの値も参考にはしているが、映像の種類ごとに変化させる色再現の違いの方が、より目立つといった方がいいだろう。

 対する東芝のおまかせドンピシャ高画質は、周囲の明るさや色温度など、テレビが置かれている照明環境と映像のマッチングを取ることに主眼が置かれており、明るさセンサーの値をより積極的に使う。色再現域に関してはあまり変化させない。

 どちらも十分に納得できる機能であり、この連載では自動調整機能はこれからのテレビには必須であると訴えていきたいが、上記2社以外への広がりは今のところ限定的のようで、倍速表示や24P対応などのように、一気に各社製品へと広がっていくということはないようだ。

 それというのも、この機能を使いこなすには映像処理LSIに必要な機能(自動的に映像のタイプを判別・評価するために統計情報を取る機能など)がそろっていることや、ある程度以上のノウハウが必要になる上、自動調整によって本来持っている画質的な魅力を崩してしまう恐れもあるからだ。

 加えて、こうした自動画質調整機能を初級者向けの機能ととらえ、画質の違いにこだわるユーザー層があまり注目していないという、店頭での状況があった。簡単にいえば、自動画質調整機能を苦労して実装しても、スグには店頭での売りにつながらないと判断したのだろう。

 とはいえ、実際に体験してみると、これほどすばらしい機能はない、というのが自動画質調整である。ユーザーにも少しずつではあるが、その良さが浸透しつつあり、将来的にはどのメーカーも採用する意向を見せている。ただ、自動画質調整機能を幅広いメーカーから選べるようになるには、来年を待つ必要があるだろう。

 では、今年の大まかなトレンドは何だろうか?

 大きくテレビ業界全体を俯瞰(ふかん)してみると、今年は過去最大のラインアップがひしめき、ユーザーは予算とニーズ次第で“選び放題”になるだろう。ご存じのように薄型テレビの単価は全体的に下方向へとスライドしており、従来なら上位機種の扱いを受けていた機種も、エントリークラスにほんの少し予算を追加するだけで買えてしまう。

 そんな状況の中、ラインアップ全体の価格帯は下方向にスライドさせた上で、その上に新技術を投入した高級モデルを用意するメーカーが出始める。また、中級機も付加価値を付ける方向に変化を与え、設置性やデザインの方向、画質や機能の方向など、同じ価格帯でも、より個性を持った製品が増えてくる。

 薄型テレビの本格普及は、まだまだこれからという時期、製品の低価格化とともに品質まで下がっていくことも懸念されるが、過去最高の出荷数へ向けてきちんと高品位な製品がほしいという消費者にも選択肢を残そうとしている。

 昨年の「CEATEC JAPAN 2007」で話題になったLEDバックライトや、LEDを活用したバックライトのエリア制御によるコントラスト拡大技術、それに超薄型化への挑戦など。今年、テレビの買い替えを狙っている消費者には、幅広い選択肢が待っているはずだ。

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