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上下の黒帯はもういらない!?――デル初の24型16:9液晶ディスプレイ「S2409W」に迫るPCにもフルHDパネルを(1/2 ページ)

» 2008年08月29日 11時00分 公開
[林利明(リアクション),ITmedia]

1920×1080ドットの16:9パネルがPCディスプレイへ

デルの新しい24型ワイド液晶ディスプレイ「S2409W」は、アスペクト比16:9/1920×1080ドット表示の液晶パネルを採用する

 PC用のワイド液晶ディスプレイに使われる液晶パネルは、一般的にアスペクト比が16:10になっている。1280×800ドット(WXGA)、1440×900ドット(WXGA+)、1680×1050ドット(WSXGA+)、1920×1200ドット(WUXGA)といった現在主流のPC向け液晶パネルは、どれも16:10仕様だ。

 その一方で、テレビなどの家電分野においては前々から、液晶/プラズマパネルのアスペクト比を16:9に統一してきた。ハイビジョン放送のアスペクト比が1280×720ドット(720p)や1920×1080ドット(1080i)なので、テレビもそれに合わせて1280×720ドット、1366×768ドット、1920×1080ドットといった16:9パネルを採用しているわけだ。

 こうした状況の中でデルが7月に発売した「S2409W」は、PC用ディスプレイとしては珍しく、アスペクト比が16:9で画面解像度が1920×1080ドットの24型ワイド液晶パネルを採用している。1920×1200ドットのWUXGAモデルと異なり、画面の上下に黒帯を表示することなく、1920×1080ドットのフルHDをドットバイドットで映し出せるのが特徴だ。デルのPC用ディスプレイでアスペクト比が16:9の液晶パネルを使った製品はこれが初めてとなる。

 これまでも同様の液晶ディスプレイはいくつか存在したが、市場にはあまり出回ることがなかった。昨今はノートPCや液晶一体型PCを中心に、16:9パネルを搭載して映像コンテンツとの親和性に配慮したPCも増えつつあるが、単体販売のPC用ワイド液晶ディスプレイでは16:9パネルの採用が始まったばかりだ。液晶ディスプレイ市場で高いシェアを誇るデルがS2409Wに16:9パネルを採用したことで、今後はこのような製品が増えると予想される。

 もっとも、珍しいとはいえ、S2409Wは一般的な液晶ディスプレイと画面解像度とアスペクト比が少し異なるだけで、機能や性能が大きく違うわけではない。今回のレビューでは、画面解像度やアスペクト比の違いがもたらす使用感を中心にお伝えしていこう。

入力はD-Sub/DVI-D/HDMIの3系統

 S2409Wの基本スペックは、最大輝度が300カンデラ/平方メートル、コントラスト比が1000:1、応答速度が中間調で5ms(黒白間は非公開)、視野角は垂直160度/水平170度だ。液晶パネルはTN系で、画面は外光の反射を抑えるノングレア処理、色域はsRGB程度でいわゆる広色域パネルではない。

インタフェースはすべて液晶パネル部の背面に下向きで並ぶ

 映像入力は、アナログのD-Sub、デジタルのDVI-DおよびHDMIの3系統で、DVI-DとHDMIはHDCPに対応している。D端子やコンポーネントビデオ、S-Video/コンポジットビデオといったアナログビデオ入力端子は持たない。製品にはD-SubケーブルとDVI-Dケーブルが付属する。

 スピーカーは内蔵していないが、音声の入出力は備えており、ステレオミニのライン入力が1系統、同じくステレオミニのライン出力が1系統ある。ライン出力される音声は、ライン入力したPC音声か、HDMIで入力した音声かをOSDメニューで選べるが、基本的には表示する入力系統を切り替えると、音声出力も自動的に切り替えてくれるので面倒はない。PC入力を表示したときはPC音声出力、HDMI入力を表示したときはHDMI音声出力となる。

 ボディデザインからはスマートで柔らかな印象を受ける。ツヤあり黒のフレームは好き嫌いが分かれそうだが、フレームの幅が上下左右とも実測で約21ミリと細く、フレーム四隅の角を丸めているのはよい雰囲気だ。黒を基調としたシンプルなデザインは、「Studio」シリーズのデスクトップPCと合わせることも考慮されているという。

 本体サイズは576.96(幅)×222.6(奥行き)×416.19(高さ)ミリ、重量は約8.1キロだ。スクエア型やアスペクト比16:10の液晶ディスプレイと比べると、S2409Wは横長のボディなので、慣れるまで多少の違和感を覚えるかもしれない。スタンドは上21度/下5度のチルトのみ可能で、スイベルや高さの調整機構はないが、スタンドを取り外してVESA規格準拠のアーム(100ミリ)を装着することは可能だ。上位機種とは異なり、USBハブやメモリカードスロット、Webカメラなどの付加機能は搭載していない。

ボディのカラーはブラックで統一されている(写真=左)。スタンドの調整機構はチルトのみに対応する(写真=右)

OSDメニューはシンプルな構成、スケーリング機能は非搭載

操作ボタンは液晶フレーム右側面に縦位置で搭載される

 本体のボタン類は、向かって右側面の下側にある。電源ボタンは正面から押すが、そのほかのボタンは側面から押す。操作ボタンの内容は上から、メニュー、上、下、決定の4つだ。OSDメニューが非表示の状態だと、上、下、決定のボタンは各種ショートカットになる。上ボタンは輝度とコントラストを変更するメニュー表示、下ボタンはアナログ接続時の自動画面調整、決定ボタンは入力系統の切り替え(トグル式)だ。

 OSDのメインメニューはメニューボタンで呼び出す。各種設定はメニュー内の数値や選択肢を上下のボタンで選び、決定ボタンを押してから、メニューボタンで元の階層に戻るという操作を繰り返すことで行なう。

 画質に関する調整項目は、輝度、コントラスト、シャープネス、色設定と、比較的シンプルな構成だ。色設定にはさらに3つの項目があり、入力カラー形式(RGB/YPbPr)、モード選択(グラフィックス/ビデオ)、プリセットモードが用意されている。プリセットモードとは、いわゆる用途別の画質モードのことだ。

 プリセットモードの種類は、モード選択によって変わる。モード選択がグラフィックスの場合、標準/マルチメディア/ゲーム/暖色/寒色/カスタム(RGB個別調整)の6種類だ。モード選択がビデオの場合は、ムービー/ゲーム/スポーツ/自然色が選択可能で、さらに色相と彩度を調整できる。輝度とコントラスト、色設定は、ユーザーが設定した内容を入力系統ごとに記憶してくれる。なお、色温度をケルビン値で指定することはできず、sRGB表示モードもないので色再現性を重視するユーザー向きではない。

OSDメニューは操作ボタンの位置に近い画面右下に表示される(写真=左)。プリセットモードはカスタムを含む6種類から選択でき、この中に暖色や寒色といった色温度の設定も含まれる(写真=右)

1024×768ドットなどの低解像度をそのまま表示すると、縦横比を無視したフルスクリーン拡大表示になる

 ちなみに1920×1080ドット未満の解像度を入力したときは、常にフルスクリーン拡大表示となる。ドットバイドット表示やアスペクト比を固定した拡大表示といった、スケーリング機能は装備していないので注意が必要だ。

 とはいえ、対策がないわけではない。ゲーム映像などを1920×1080ドット未満の低解像度で表示するときは、DVI-Dでデジタル接続したPCを使い、グラフィックスドライバのスケーリング機能を利用するとよいだろう。

 AMD(ATI) Radeonシリーズのドライバ「Catalyst」、NVIDIA GeForceシリーズのドライバ「ForceWare」には、ドットバイドット表示やアスペクト比を固定したまま拡大表示を行うスケーリングオプションが用意されている。

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