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秋の新製品、その注目点(パナソニック編)本田雅一のTV Style

» 2008年08月29日 16時44分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 前回、予告したように(まだ9月には入っていないが)、年末に向けた各社の“仕込み”が明らかになってきた。今週はパナソニック、ソニーと大手が続けざまに新製品を発表している。これらの製品について、詳しいスペックは本誌掲載の記事(下記)やメーカーのWebサイトを見ていただく方が素早く知ることができると思う。

 しかし、それらの情報からは見えない部分を、少しだけ補足的にコメントすることにしよう。

 まずパナソニックだが、同社のプラズマテレビは今年春の「PZ800シリーズ」で、画質面の長足の進歩を遂げていた。通常、春のモデルはマイナーチェンジにとどまることが多いのだが、スポンサーをしていた北京オリンピック向けに、惜しみなく新技術を投入した結果だ。年末向けの新製品は、その流れに沿って高画質をキープしつつ、機能面でテレビとしての完成度を高めている。

 ちなみにHDDの内蔵とともに「PZR900シリーズ」の目玉機能になっているYouTube対応だが、北米版の「PZ850シリーズ」で遊んでみる限り、そのできはなかなかのものだ。フロントエンドのツールを持っているため、ブラウザで操作するときのようなまどろっこしさがなく、リモコンでの操作もやりやすい。

photo PZR900のYouTube視聴機能

 夜遅く自宅に帰り、時間もないので、ちょこっとYouTubeの映像を楽しんで寝てしまう。なんて場合にもいいが、おもしろい映像を見つけたとき、家族にそれをいいふらしたい、見せた時にどんな反応をするだろうか? と、自分以外の人たちの反応も楽しいなんて人には、まさにピッタリの機能だと思う(ただし、まどろっこしいログインパスワードの入力だけは、どうにかしてほしいものだが)。

 と、やや横道にそれたが、これらの新機能にもまして注目しているのが、色再現に対する松下の“マジメ”な取り組みである。PZ800のカラーリマスターに関しては、以前このコラムで詳しく紹介した。映画フィルムの色を、絵作りというある種のテクニックで見せるのではなく、フィルム本来の色を“逆変換”して再現しようというのは、実に松下らしい愚直なまでにマジメなアプローチといえる。

 Webサイトやカタログを見ていると、いろいろなキャッチコピーや技術の名前が出てきて混乱するが、彼らのやりたいことは1つ。従来は放送フォーマットの枠にとらわれ、再現しきれなかったフィルムの色彩を家庭に持ち込むことだ。

 昨年のビエラはHDTV規格に合わせた色再現域を実現するため、ITU-R BT-709に合う蛍光体を使っていたが、今年春モデルのPZ800以降はDCI(Digital Cinema Initiative)規格に沿った色再現性を持つ蛍光体に変更した。その理由も、フィルムが持つ豊かな色を表現するためである。映画がDCIで作られているのであれば、家庭で映画を楽しむ際にも、それを忠実に再現したいという発想だ。

 むろん、放送波もBDタイトルも、BT-709準拠で製作されているのだが、それを可能な限り本来の色に戻す(色再現域を圧縮して収録されているので、それを元に戻す)ことで、映画本来の色を取り戻す。しかも、テレビカメラで撮影された映像に関しても、やはり同様の処理が行われるために色の豊かさが復元される。

 言うのは簡単だが、こうした処理は業務用機器の開発やハリウッドでの経験などがなければ、実はなかなかうまくいかない。

 店頭ではなかなか評価できないポイントだが、今年のビエラを評価するポイントは、マジメな、映画を愛するがために本物を追い求めるきまじめさ。ぜひ、お気に入りの映画ディスクをかばんに忍ばせて、なるべく暗い場所に展示されたビエラで、その色の良さを確認してほしい。

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