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秋の新製品、その注目点(ソニー編)本田雅一のTV Style

» 2008年09月07日 21時12分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 先週のパナソニックに続き、今週はソニーの新製品について話をしたい。

 今年のソニー「BRAVIA」は、ラインアップの幅を広げることで、ニーズごとに適した製品を提供しようという意図が見える。単に価格と機能・品位だけで上下に広がった製品ラインを作るのではなく、顧客が望む要素ごとに最適化した製品を提供しようというわけだ。その結果として、コストの違いから価格差はあるものの、新たに追加した4シリーズに関しては上下関係というよりも横に広がる関係にある。

 例えばインテリア性重視、インストール後のスマートなたたずまいなら「ZX1シリーズ」だろうし、機能とスペック重視・でも値段はそこそこというなら「W1シリーズ」。画質重視なら文句なしに「XR1シリーズ」だが、そこまでの予算がないならXR1と同じ思想で画質を追い込んだ「X1シリーズ」がある。

 消費者としては、1円でも安い製品が欲しい。そのためにネットの情報を駆使してでも、というのが本音だろう。しかしネット販売の世界は想像以上に、仁義なき戦いが繰り広げられる場だ。激しい価格競争は商品開発投資に影響を与え、次の商品、さらにその次の商品と、徐々に品質・品位の高さを奪っていく。

 と、話がそれたが、そうした昨今の状況をかんがみて、モデルごとに得意技を持たせることにより、同一価格帯で他製品に対するアドバンテージを持ち、指名買いを少しでも増やしていきたいと考えているのだろう。だから、どのモデルも向いている方向は違うが、いずれも本気度の高い製品に仕上がっている。

 中でも発売時期が1カ月早いXR1シリーズ、X1シリーズは、製品レベルに近いところまで仕上がってきているようだ。XR1シリーズの最新バージョンを先日見たが、従来の液晶テレビとは異なる次元にまで画質が向上している。

photo “ブラビア史上最高画質”をうたうXR1シリーズの55V型「KDL-55XR1」

 もとより一般的なテレビ番組、ビデオ映像は液晶が得意とするところだが、XR1のそれは頭1つ抜けている。LEDバックライトによる鮮やかな色はもちろんだが、ここでは「DRC-MF V3」の効きがとてもいい。

 デジタル放送で気になるMPEGノイズは、すでにノイズを緩和する機能が各社の製品に入っているが、DRC-MF V3はズームイン/アウト時や映像パンの時に、細かいテクスチャ部に発生するジラジラした見づらいノイズを大きく緩和してくれる。従来のDRC-MF V2.xのようにエッジを強調しすぎる傾向もなく、デジタル放送のいやらしい部分を“見やすく”してくれるのである。

 この効き具合が実に程よく、低ノイズで見通しの良い映像を実現しつつ、奥行き感や立体感を損なわない絶妙の仕上がりだ。筆者はこれまでDRC-MFに対してあまりポジティブな印象を持っていなかったが、今回のバージョンはその効果、効き具合ともに従来版とは全く異なったもので、かなり良い印象を持った。

 一方、映画視聴ではプラズマに及ばない印象が強い液晶だが、XR1のシネマモードはそうした概念を一変させる可能性がある。LEDバックライトを領域ごと、最適な明るさに調整するエリア制御を用いることで、黒浮きを一掃したためだ。

photo バックライトのエリア制御デモンストレーション。右のようなクラゲの映像を表示しているとき、バックライトがどのような動作をしているのか示したのが左側の画面

 XR1には、ほぼ真っ暗な環境下で映画を見ることを想定した「シネマ1」と、やや明るめの環境でも見やすい「シネマ2」の2モードが装備されているが、両者に共通するのは映像素材の雰囲気を壊さないように練り込まれた“再現性の高さ”だ。パイオニアの60インチモニター「KRP-600M」が装備するディレクターモードに匹敵する、硬派の絵作りはマニアを唸らせるに違いない。

 バックライトのエリア制御は、制御のやり方が不適切だと、不自然に映像が安定しないものだ。とくに点光源が真っ暗な中でうごめく映像では、エリア制御の限界が見えやすい。ところがXR1のエリア制御は、少なくともシネマモードで評価している限り、不自然さを感じさせることなく、こちらもやはり“程よい”チューニングが施されている。

 現在、最終の画質追い込みが行われているXR1シリーズ。果たして、他の上位機種よりも一段高い価格帯で、どこまで評価されるのか。BRAVIAとなってから、やや一般受けする方向へと針が振れすぎていた感のあるソニー製テレビが、久々に“コダワリ派”に向けて本気印で挑んだXR1に注目したい。

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